2,球技大会という名の闘い
「はい、これ……龍也の為に頑張って作ったんだからねっ」
え?何この状況……これ夢だよな?絶対に夢だよな?そもそも俺喋れてないし。
しかも手渡された弁当が異様に重たいというね。
「は、早く開けてみなさいよ!」
まあいいか。どれどれ出来栄えは……っと。
ん?粘土?……いや、これは――!
「昨日作ってみたんだけど……どうかな?」
弁当箱一面のC-4……だと?
そしてその手に握られているのは、起爆装置……か?
もしかしてそれを一晩で作ったのか?
「えいっ」
次の瞬間、俺の視界はオレンジ色に染まり――
「うわあああ!!」
「森崎ー!授業中に喧しいぞ!」
3年になってから1ヶ月が過ぎ、五月晴れが心地よい季節になった。
毎朝の荷物持ちは相変わらず健在だが、前よりかは幾分結衣の性格が良くなった気がする。
……あくまで気がする、だが。
そしてGWを目前にした所で、担任の宣言により優雅な連休生活の予定が砕け散ることに。
「連休明けはお待ちかねの球技大会がある!
今年はドッジボール、フットサル、バドミントン、テニスの4つの中から一つ選ぶこと!
3年生なら全種目で優勝目指して来い!いや、必ず優勝しろ!
あと、テニス選択者は明日からの休み中に河原へ集合すること!以上!!」
西浦は去年と同じく優勝命令を出したんだが、何やら今年は最後に恐ろしいことを言ってたな…。
テニスは避けるべきか。
そんな事があり、いつもの4人で昼食を食べていた時には先程の話題が出てきた。
そういやこいつらは何に出るんだろうな。
「龍也は何に出るのー?」
「そうだな……テニス以外――で、お前と違うやつで悠人と同じやつ」
「は、はぁ?何で私と出るのが嫌なのよ!?」
「……誰が好んでお前の盾になるか」
そう。過去2大会の俺の仕事は結衣の盾。
ドッジでは球が当たると痛いからと俺の後ろへ行き、フットサルでも泥が付くからと俺を盾にしやがった。
嫌なのに何故、わざわざその種目にしたのかが未だに謎だ。
「あんたがそう言うなら私は悠人君と同じやつにするもーん」
「おまっ、それは卑怯だぞ!」
「じゃあ私とチーム組みなさいよ」
いやいや……それ何て言う恐喝?最早拒否権すら無いじゃんか。
悠人が取られた以上、此方に残っている切り札は
「なら、俺は美穂と組むからな」
「えっ!?わ、私は別に構わないけど……私なんかでいいの?」
「勿論!今までの俺の苦労を結衣に味合わせてやれるいい機会だしな」
美穂には申し訳ないが……偶には俺が悪役になってもいいだろう。
この時の結衣は苦虫を噛み潰したような顔をしたが、虫だけに無視だ。
さて。このチームになった以上、出場可能な種目は必然的にバドミントンになるわけだが……生憎俺はやったことが無い。
誰か部活に入っている人は――あ。
「そういえば葵ちゃんってバド部だよな?」
「……葵?あんたまだ懲りずに」
えぇ……まだあの時の事引き摺ってんすか。前回にしろ今回にしろ下心は全く無いんだがな。
つか、お前を“義姉さん”なんて呼びたくない。
「い、いや、ラケットと羽を貸して貰って皆で練習でもしようかなー、と。せっかくの連休だしさ。」
「そう……だったら明日の朝、私の家の前に集合ね!」