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そう、それは突然の親父からの告白。

内容はあまりにも残酷で、まだ十歳にも満たない少女が天涯孤独の身になるかもしれないということを意味していた。

そういえば俺の母さんと咲希の母親は実の姉妹であるから、今も無理をして仕事をしているかもしれない。『母は強し』とはよく聞くけど、さすがに少し心配だな。



「あー、一つ訂正をしよう。正確には“乗る予定の”だな……だが、ご両親共に連絡が取れない状態になっている」


「何だよそれ、結局――」



続きを言おうとしたが俺は敢えて止めた。父さんに対して八つ当たりみたいなのを言った所で何も変わりはしない。

今は連絡が取れなくて行方不明でも、どこかで生きていてくれればそれだけでも咲希の救いになるだろう。



「そんな顔しなくても大丈夫だ。俺も母さんも必ず生きていると信じているよ」


「でもどうすんだよ、咲希は一人に」


「そこで、だ。お前と奈々美が住んでいる家……まあ我が家になるが。そこで預かって――失敬、言い方を直そう。一緒に住め」



はい?今この人は何と申したか?一緒に住め?誰と誰が?

まあ考えるまでもなく必然的に俺が咲希と、ということになるが……あまりにも唐突過ぎないか?



「勤務先の家でも良かったが、何せ父さんも母さんも仕事が忙しくて帰宅時間が遅いからなかなか相手になってあげれなくなる。お前達姉弟ならあの娘と仲が良かったし、な?」


「な?って……けど、実は俺もそう思っていたところだよ」



確かに学校から帰っても「おかえりなさい」と出迎えてくれる人などいなく、夕飯も一人寂しく食べ……これはさすがに可哀想ではないか。


そんなことになるなら大抵は家にいる姉ちゃん、帰宅部ですぐ家に帰れる俺と居た方が咲希にとっては良いかもしれない。

更に家が近い結衣と葵ちゃん、偶に遊びに来る悠人と美穂とも仲良くなれば賑やかな毎日になるに違いない。



「よし、そう言うだろうと思ってあの娘の荷物はトランクに用意してある。ついでに転校届けも提出済みだ」


「いやあの、こういうのも何なんだけど……というか仮にも咲希の保護者として考えてほしいんだけどさ。時と場合を選べよ」


「すまんな」


「ちょい待て、会話になってないから。今俺達は学校の旅行でここに来て――そこは分かるよな?」


「事前に奈々美から聞いている」



ああ、それを知った上でこの無責任なおっさんは物申しているのか。

つまり俺がこの地(京都)に来ることを姉ちゃんから聞き、いつからか跡を付けて偶然を装って出会い、一緒に咲希を連れて行けと……そう言いたいんだろうな。


それよりも二人の転勤先が京都の近くだったのが気になるが……これは奇跡だな。



「って、完璧なストーカーじゃねえか!」


「じゃあお前はあの幼気な少女に重い荷物を持たせ、更には何回も電車を乗り継がせつつ何時間も掛けてお前たちの下へ向かわせろと言うのか!」


「くっ……!わ、分かったよ、責任持って連れて行くよ!」



こうして旅行中は咲希と行動をし、そのまま一緒に家に帰ることになった。

待たせている悠人と美穂への説明は何とかなりそうだが、問題は担任の西浦だな。

皆には悪いが、もし咲希との同行が認められなかったら迷わず家に帰るとしよう。


そもそも俺はただ結衣に誤解を解いてもらおうとしただけなのに……本当どうしてこうなった。

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