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「あ、あのさ」
「分かってる、このことはお前には話しておかないとな」
さすが父親と言ったところか……皆まで言わなくても俺の言いたいことを察知している。
でもこう、何だろうな。妙な胸騒ぎというか嫌な気しかしないのだが。
「ちょいと結衣ちゃん。せっかく二人きりだった所悪いけどうちの息子を借りていくよ」
「えっ!?あっ、は、はい!と、というか邪魔なんでどうぞ!」
「おいこら、奢って貰っておいて邪魔て」
ついさっきまで他人の振りをして黙々とパフェを食べていた結衣だったが、父さんの目は誤魔化せなかったようだ。
結構な金額を払ってさえも邪魔扱いされるとはどうも腑に落ちないが、結衣には俺達が話をしている間に咲希の相手をしてもらわないといけない。
――そんな感じの意思表示を込めたアイコンタクトを送ると、任せろと言わんばかりに大きく頷いた。
「咲希ちゃん、だったよね?お姉ちゃんとこのパフェ食べる?」
「うんっ!」
やはり実際に妹を持つだけあってか、年下の子に対する接し方がしっかりしているな……これなら安心して咲希を預けられるだろう。
とりあえず何処まで行くのかは知らないが、俺は父さんの後を付いて店を出た。
「……はあ」
「ど、どうだ、新しい車の居心地は」
「いや、レンタカーを自分の所有物みたいに紹介されても困る」
「し、仕方ないだろう?家の車は母さんが仕事先に乗って行ってしまったんだ」
俺は少なくとも近くにある他の店に行くのかと思っていたが、まさか近くの駐車場に停めてあった車に行くことになるとは……。
しかも森崎家ヒエラルキーの頂点に君臨する母さんに車を奪われるとは、我が父ながら何と情けないことか。
しかしまあ、ここなら他人からの視線とか話を聞かれるということはないから良しとしよう。
「もう奈々美から聞いたと思うが」
「はい?何で始めに姉ちゃんの名前が出てくるわけさ」
そう、何故このタイミング、この状況下で姉ちゃんの名前が出てくるのかが俺には分からない。
最近何か重大発表があったわけでもなく、京都へ行くと言った時にも「適当にお土産よろしく」としか言われて無い。
もしかして何か隠されたメッセージが……まあ、あるわけないよな。
「お、お前奈々美から何も聞いてないのか?」
「だから何をだよ」
「またあいつは……ちゃんと龍也に話しておくようにと伝えたんだがな」
父さんは姉ちゃんの性格に気付いたのか、暫く考え込んだ後に表情が真剣になり、これから話すことは他言無用だと念を押される。
「――先日起きた航空事故のニュース見たか?」
「あー、そのせいで北海道行けなくなったんだが」
「実はな。その飛行機には
咲希ちゃんのご両親が乗っていたそうだ」