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これは一体どういうことだろうか。結衣も俺に何か話があるということになるが……。
いや、そんな憶測は後にしてともかく今は謝らなければ。
「えっと、まあなんだ。その――」
「「ごめんっ!」」
「……ん?」
「……あれ?」
何故か被った謝罪の言葉。そしてお互いに唖然としながらその言葉の真意を探る。
当然俺にはちゃんとした謝る理由があり、それ故に何で結衣が謝っているのか心当たりが全く無かった。
「な、何で龍也が謝るわけ?」
「いやいや、結衣こそどうしてまた」
「私はその……さ、さっき助けて貰ったのにお礼の言葉をまだ言ってなかったじゃない?」
あ、言われてみれば確かにそうだったような。
でもあの時は恥ずかしさと申し訳なさで一杯一杯だったし……それに謝る必要なんて全く無いと思うんだが。
俺が怪我をしていたら話は別になるが、見ての通り体に異常は無く健康である。
「いいって、そんなもん気にするなよ。というか普通、そこは感謝の」
「だっ、だからこれは言い遅れたお詫びとして……あ、あと、ありがと」
「お、おう……どうも」
くっ……い、今のもじもじしながら上目遣いによる不意打ちはいかんだろ。
それに何か可愛――あーあー、そろそろ俺のターンにしないとこれで話が終わりそうだな。
ついでに結衣が怒ってないということも分かったし、無視していた理由でも聞いてみるか。
「それで、俺は故意じゃないとしてもお前にあんな姿をさせちまったからちゃんと謝りたかったんだよ。本当にごめんな」
「なっ、ば、馬鹿っ!……す、凄く恥ずかしかったんだから思い出させないでよ……それにもう気にしてないし、ね?」
「じゃあ何で俺を無視してたんだよ」
「うぅ……だ、だって、あのすぐ後にまともな会話なんて出来るわけ無いじゃない……」
こう言っては大変失礼だろうけど――普段の姿を知っているからこそ今の結衣が物凄く不気味である。
というかさっきから表情がコロコロ変わっているから、見ているこっちが非常に楽しい。