〃
「おおきに~。またおいないしてや~」
「さて、次の目的地は――」
俺は結衣へ謝ると決意はしたものの、店を出てからは会話をすることさえ出来ないでいた。
別に悠人と美穂が居るからとかそういうのではなく、ただ単に俺の決心が揺らいでいるからである。
そもそも話のネタが無いのにどうやって話しかければいいのやら……ええいっ、当たって砕けろだ!
「お、おいないって何ぞや?」
「…………」
「え、えっとね、また来てくださいとかそういう意味じゃないかな?」
「ほう……な、成る程な」
――お分かりであろうか?見ての通り俺と結衣の間には終始無言が続き、代わりに美穂が話し相手に。
別に結衣からは嫌悪感というか忌み嫌われているような雰囲気は感じられないが、なんかこう話しかけ辛いような空気になってしまっている。
まあ、予想はしていたさ。こうなるだろうなーとか覚悟はしていたけど、無視されることがここまで精神的ダメージの威力が強大だとは……。
「……はぁ」
原因が分からないまま結衣の機嫌を直すことがこれ程無理難題であるということは、もしかして俺は幼馴染失格では?
だ、だったら結衣にとって一番の親友である美穂に聞いた方が……!
「ゆ、悠くん!あっちにお土産屋さんがあるから見に行こうよっ」
「は?――あー、はいはい。行きますよっと」
「え、ちょ」
「じゃ、じゃあまた後でね!龍也君、結衣ちゃんっ」
俺が助けを求める直前、まさかの寺岡ブラザーズが離脱。そして二人きりという状況に。
去り際に美穂が「ファイト!」と囁いてきたが、もしかして現状の原因が分かっているからこそ、わざとこういう風にしたのではないだろうか。
――ならばその期待に応えるとしよう。