3,旅行という名の再会
「――という夢を見てだな」
「ははっ!弁当だけに味わったってか?」
「ん…………でさ」
「あ、お、俺は昨日こんな夢見たぞ――――」
「あれ、どうしたの?朝から騒いで」
「あー、ほら。もし俺と美穂が結婚したら、悠人は俺のことを“お義兄さん”って呼ばなきゃいけないじゃんか」
「ちょ、た、龍也君!?」
「それを昨日夢で見たんで龍也に話したわけだが……それにしてもやけにリアルだったな。だが、お前だけには一生涯“義弟君”なんて呼ばれたくねえよ」
「俺だって御免だ、義弟君よ」
「うわっ、やめろ義兄さん!気持ち悪い!」
「「うわああっ!!」」
「じゃ、じゃあさ!もし龍也君と葵ちゃんが結婚したら、龍也君は結衣ちゃんのことを“お義姉さん”って……」
「美~穂~?言っていい冗談と悪い冗談があるんだけど、覚悟はよろしくて?」
「ひっ!ゆ、結衣ちゃん、顔が怖いよ……?」
「どれどれ……お義姉さーん――ダメだな。既に姉ちゃんが居るからか何かしっくりこない」
「えと、結衣義姉さん……あ、そういや俺にも姉が居たな」
「私妹に憧れてたんだよね~……結衣お義姉ちゃん~!」
「え、ええいっ!皆挙って私のこと義姉さん呼ぶなあっ!」
雨が降り続き湿気が気になる今日この頃。
俺達は今年一番のビッグイベントと言っても過言ではない――そう。球技大会に次ぐ学校行事である旅行の話で盛り上がっていた。
……というのも、去年は沖縄への修学旅行だったが、まるで嘲笑うかのように生憎連日の雨。海では遊べず、野外研修も潰れた俺達にはやることなど無かった。
だから今年は沖縄時の鬱憤を晴らすべく、存分に楽しんでやる!と意気込んでいたりする。
ちなみに行く場所については
「北海道はでっかいどー!ついでに席に着けー!」
何でも行く場所はあみだくじで決めたとか……それよりも担任が一番はしゃいでどうするよ。
そんなわけで俺達4人は闇夜に輝く時計塔を想像しつつ、現地の見回る場所について話していたのだが……いつものあれだ。
疫病神の如く担任が不幸を運んできやがった。
「さて、お前達には残念なお知らせがある。
今度の旅行の事だが――――先日の航空事故の関係で中止になった!」
「「はぁ!?」」
西浦の口から“中止”と聞いた瞬間、クラス全員が総立ちになり驚きの声を上げた。
勿論俺も例外なく席を立ち、隣の結衣と顔を合わせながら落胆の表情を見せる。
「だが喜べ!今年は何と――――1泊2日の京都旅行になったぞ!!」
「「ふざけんなぁ!!」」
喜ぶも何も行動日程は減らされた挙げ句、場所もそう遠くない京都だ。当然のように部屋中に不満の声が飛び交う。
そんな状況下で、冷静ながらも納得のいかなかった俺達は中止の詳しい理由を聞いてみた。
担任曰く、事故を起こした会社と俺達が乗る予定だった会社が同じだから、生徒の安全を優先した――だそうだ。
そう何度も事故は起こるわけじゃないから俺は別に気にしないが……まさか変更先が京都になるとはな。