〃
――試合も大詰め、29-28で迎えた最終ゲーム。
どんな噂が広まったのかは知らないが体育館には溢れんばかりの観客が集まり、1球毎に歓声が響き渡る。
そんな中あと1点で俺達の勝ちなのに、不覚にも俺は結衣の方向へチャンスボールを与えてしまう。
そう、まさにスマッシュを打つのに格好の打球を。
「しまっ……」
俺の声を聞いて確信した結衣は、待ってましたと言わんばかりにジャンピングスマッシュを放つ。
最後の力を振り絞る勢いで、何故か「落ちろ」ではなく「当たれっ!」という掛け声と共に俺の居る方向へ――。
美穂は既に動ける状態ではなく、例の作戦は使えない。
ここは最後らしく自分の力を信じるしかないか。
「――うらっ!」
シャトルが空を切るように上へと飛ぶ。
これで俺の自由が決まるのか……いや、もし相手が打ち返してきたら俺達は負けるだろう。
何しろシャトルを追いかけることはおろか、最早立っているだけで精一杯だからだ。
果たして打球の行方は――そう思った瞬間、会場中に大歓声が沸き起こる。
「ゲームセット!30-28で龍美チームの勝ち!!」
「はぁ……はぁ……え、最後のあれ……入ったのか」
俺が返したシャトルはネットの上部に当たり、そのまま相手コートにゆっくりと落下。
後ろに下がっていた二人は体力的に追い付けるはずも無く、そのままゲームセット。
最後の最後で運任せになるとは……どうやら今年の運は今ので使い果たしてしまったかもな。
「うぅ……龍也に負けたぁ……」
「それにしても最後のは卑怯だろ……」
「や、やったね龍也くん!私達優勝だよ!!」
「ああ……俄には信じ難いが」
スコアボードを確認したが俺達の勝ち、つまり俺達が優勝したということは間違いない。
さて、教室へ帰ってゆっくり休憩でもしたい所だが……疲れ過ぎて立つことが出来ないので、誰か助けてください。