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第4章:縁談と鉄拳ですわ〜

ガーランド領――かつてフェニックスの不毛の土地と恐れられ、どの国も領有を避けた荒れ地は、今や大陸中に名を馳せる楽園となっていた。火の精霊フェニックスとの契約から半年、アリス=ガーランド――有栖川蘭子のリーダーシップと慈愛の炎の力で、村は目覚ましい繁栄を遂げていた。


畑は豊作、市場は遠方の商人で賑わい、石造りの家々が木造の小屋に取って代わる。慈愛の炎の恩恵で、村人たちは不老の若々しさを取り戻し、子供たちの笑い声が響く。アリス自身も、20歳の頃の黒髪ロングの美貌で、炎をまとった白いドレスはまるで高貴な女王の輝き。「無双の麗人」の異名は、魔物の群れを一掃した英雄譚と共に、大陸の貴族や冒険者の間で語り草となっていた。


領主館――市場の成功で改築され、簡素ながらも優雅な装飾が施された建物――で、アリスは書類に目を通していた。新しい交易路の計画、領地の防衛強化、子供たちのための学舎設立。領主としての仕事は山積みだが、彼女の目はキラキラと輝いている。


「ふふ、ガーランド領はマダムの力で、社交界にも負けない楽園になりますわ! いつかこの領地で舞踏会を開催し、貴族たちを驚かせてやります! おーっほっほ!」


心の中で、フェニックスがすれた口調でぼやく。


「やれやれ、アリス、舞踏会だの社交界だの、相変わらず夢見てんな。魔物をぶっ飛ばした方がお前らしいぜ」


「ふふ、フェニックス、貴方はわたくしの高貴な志を理解していないだけですわ! 拳も気品も、両方備えたマダムこそ最強ですのよ! ごめんあそばせ!」


そんな穏やかな午後、突然、馬蹄の音が領主館に響いた。窓から広場を見下ろすと、ゴツい鎧をまとった男が率いる一団が現れた。隣のバルドール領からの使者だ。旗には、獅子の紋章が誇らしげに描かれている。村人たちがざわつき、子供たちが母親の後ろに隠れる。アリスは眉をひそめ、ドレスを整えた。


「ふむ、なんですの、この騒ぎ? マダムとして、丁重にお出迎えしなければ!」


フェニックスが心の中で笑う。


「アリス、こいつら、ただの使者じゃねえぞ。なんか嫌な予感がするな」


「ふふ、フェニックス、貴方は心配性ですわ。どんな相手も、マダムの社交術で華麗に解決します! おーっほっほ!」


---


広場に降り立ったアリスは、慈愛の炎をほのかにまとって村人たちの前に立つ。ドレスが風になびき、黒髪が陽光に輝く。村人たちが「アリス様、かっこいい!」と囁き合う中、使者のリーダー――禿げ上がった頭に鋭い目つきの壮年男、ガルド・ヴァンスが馬から降りた。バルドール領の騎士団長だ。背後には、剣と盾を携えた兵士たちが威圧的に並ぶ。


ガルドはアリスを見るなり、鼻で笑った。


「ほう、これが噂の『無双の麗人』、アリス=ガーランドか。こんな田舎領の女領主ごときが、我が主バルドール卿と縁談を望むとは、笑いものだな!」


アリスは一瞬、目をぱちくりさせた。縁談? そんな話、初耳だ。だが、すぐに優雅に微笑み、胸を張った。


「ごきげんよう、ガルド殿。わたくし、アリス=ガーランド、ガーランド領の領主ですわ。縁談だなんて、どなたの勘違いかしら? ごめんあそばせ! おーっほっほ!」


村人たちが「さすがアリス様、気品がすごい!」とどよめく中、ガルドは不機嫌に顔を歪めた。


「しらばっくれるな! 貴様がフェニックスと契約し、ガーランド領を繁栄させた噂はバルドール領にも届いている。バルドール卿は、貴様のような女を妻に迎え、フェニックスの力を我が領に取り込むつもりだ! さっさと降伏し、縁談を受け入れろ!」


その言葉に、広場が凍りついた。リナ、若い母親が震える声で叫んだ。


「アリス様を連れていくなんて、許せない! ガーランド領は私たちの誇りです!」


猟師のトムも拳を握り、怒りをにじませる。


「バルドール領は大国エデン王国の同盟国だ。こんな脅し、卑怯だぞ!」


村人たちの怒りと不安が渦巻く中、アリスは静かに一歩踏み出した。慈愛の炎がドレスを包み、まるで神聖な女王のような威厳が漂う。彼女はガルドを真っ直ぐ見据え、静かに言った。


「ガルド殿、わたくしは高貴なマダムとして、社交界の花を目指す者。縁談だなんて、丁重にお断りしますわ。それに、ガーランド領はどの国にも属さぬ独立の地。この領地を脅す貴方の無礼、許せませんの!」


ガルドは顔を真っ赤にし、剣を抜いた。


「生意気な女め! ならば力ずくで連れていく! 兵士たち、かかれ!」


兵士たちが一斉に剣を構え、村人たちが悲鳴を上げる。だが、アリスは動じない。慈愛の炎のおかげで、彼女は不死身だ。ゆっくりと歩み寄り、優雅に微笑んだ。


「ふふ、マダムを怒らせたのが間違いですわ。ごめんあそばせ!」


次の瞬間、アリスは疾風のように動いた。有栖川流合気道の投げ技で、ガルドを地面に叩きつける。バキッ! 骨が折れる音が響き、ガルドが「グハッ!」と悲鳴を上げる。慈愛の炎の効果で死なないが、痛みはガッツリ。ガルドは真っ青になり、這うように後ずさった。


「ひ、ひい! 何だ、この力!? 怪物か!?」


兵士たちも突進してきたが、アリスはまるで舞うようにかわし、一人ひとりを投げ飛ばす。ボキボキと骨が折れる音が広場に響き、兵士たちは「痛ええ!」と叫びながら地面を転がる。村人たちが呆然と見守る中、アリスはドレスの裾を整え、高笑いした。


「おーっほっほ! これがガーランド領の領主、アリス=ガーランドの力ですわ! 次はお行儀よくしなさい!」


ガルドは恐怖で震え、ついに膝をついた。


「も、申し訳ありません、アリス様! 縁談の話は取り消します! どうか、許してください!」


アリスは優雅に髪をかき上げ、微笑んだ。


「ふふ、よろしくてよ。マダムとして、寛大な心で許しますわ。ただし、二度とガーランド領にちょっかいを出さないこと! ごめんあそばせ!」


村人たちが歓声を上げ、子供たちが駆け寄ってきた。年かさの男の子が目を輝かせて叫ぶ。


「アリス様、めっちゃ強い! まるで物語の英雄だ!」


小さな女の子がドレスの裾をつかみ、はにかみながら言う。


「アリス様、カッコいいよ! 大好き!」


別の少年が拳を振り上げ、興奮気味に。


「アリス様、最高の領主だ! ずっと守ってね!」


アリスは子供たちの純粋な称賛に胸を熱くし、優雅に微笑んだ。


「ふふ、皆様、ありがとうですわ! マダムとして、この領地をずっと守りますわ! おーっほっほ!」


ガルドと兵士たちは這う這うの体で逃げ出し、馬に乗ってバルドール領へと帰っていった。フェニックスが心の中で笑った。


「やれやれ、アリス、相変わらず派手だな。拳で解決するマダムって、ホントお前くらいだぜ」


「ふふ、フェニックス、貴方はまだわたくしの魅力を知らないだけですわ! 拳も気品も、両方備えたマダムこそ最強ですの!」


---


縁談騒動の後、ガーランド領はさらなる結束を強めた。村人たちはアリスの強さと優しさに心から信頼を寄せ、領地の発展に一層力を入れた。市場は拡大し、石畳の道が整備され、遠方の冒険者や商人が「無双の麗人」の領地を見に訪れるようになった。アリスは領主館で、村人たちと今後の計画を話し合っていた。


長老が感慨深く言った。


「アリス様、ガーランド領はかつて不毛の土地、どの国も欲しがらぬ荒れ地でした。それが今、こんな繁栄を迎えるなんて……。バルドール領の脅しを退けたアリス様は、まさに我々の誇りです」


リナが目を輝かせて提案した。


「アリス様、ガーランド領をもっと大きくしましょう! いつか、大陸一の領地に! そして、アリス様の夢の舞踏会を、この領主館で開きましょう!」


村人たちが「いいね!」「大陸一、最高!」と盛り上がる。アリスは胸が熱くなり、高笑いした。


「ふふ、舞踏会! 大陸一の領地! なんともマダムらしい夢ですわ! よろしくてよ! ガーランド領は、社交界の花が咲く楽園となりますわ! おーっほっほ!」


その夜、アリスは領主館のバルコニーで星空を見上げ、フェニックスと語り合った。


「フェニックス、縁談なんて野蛮な策略、社交界の花を目指すわたくしには無縁ですわ。ガーランド領で舞踏会を開き、大陸中の貴族を招待する夢、必ず叶えます!」


フェニックスは少し沈黙し、珍しく真剣な口調で答えた。


「ふん、アリス、舞踏会か……。昔、俺の契約者だった奴も、そんな華やかな夢を追ってたな。だが、この大陸じゃ、力がないと夢は守れねえ。バルドールみたいな奴らは、いつまた来るかわからんぜ」


アリスは目を丸くし、フェニックスの過去に興味をそそられた。


「まあ! フェニックス、貴方の昔の契約者ってどんな方でしたの? 社交界の花? それとも、わたくしのような無双のマダム?」


「ハッ、そいつは……まあ、お前とは違うタイプだ。強い女だったが、夢に溺れて力を見誤った。結果、領地は滅んだ。アリス、お前はそいつとは違う。拳も夢も、本気で握ってるからな」


アリスはフェニックスの言葉に胸を熱くし、星空に誓った。


「ふふ、フェニックス、貴方の信頼、しっかり受け止めましたわ! ガーランド領は、わたくしの拳と気品で、どんな敵からも守ります! 大陸一の領地、そして舞踏会、必ず実現しますわ! おーっほっほ!」


だが、バルドール領の敗北は、さらなる波紋を呼んでいた。大国エデン王国の貴族たちが、ガーランド領の力に注目し始めていた。アリスのマダムライフは、新たな試練を予感させていた。


(第5章へ続く)

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