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もう一つの求婚(終)

 となりに立つヨーナが、つないでいる僕の手をぎゅっとにぎった。


「ねえ、エルウィン殿下。お姉さま、とってもきれい。お姫さまみたい」

「うん、こんなにきれいな人は見たこと無いよ」


 そして、ヨーナに向かって言う。


「ヨーナが一番きれいだから、その次だけどね」


 でも、ロイダさんは本当にきれいだった。真っ白なドレスに包まれて兄上に手を引かれて皆の前を進む。白のドレスが美しく光を放つのは、ロイダさんの刺繍のおかげだとヨーナが説明してくれた。


「違うわ、お姉さまが一番きれいよ」


 ヨーナはうっとりと見つめる。


「ねえ、君もあんなドレスを着たい?」

「え?」


 ヨーナが僕を見る。


「ヨーナも着れるの?」

「うん。大人になってからだけど着れるよ」

「わあ、着てみたい!」


 ほほを少し赤くして、夢見るような顔をした。とてもかわいい。

 

「じゃあ、僕と結婚しよう。大人になったら結婚するために、今は結婚の約束をしておこう?」


 ヨーナは少し考えるように首をかしげた。


「今から結婚の約束をしておくと、きっと姉さんは何年もかけて、一番すてきな刺繍をしてくれるんじゃないかな」

「そうかな!」

「君の大好きな仕立て屋のご夫婦も、とっておきのドレスを準備してくれるんじゃいかな」

「わあ!」


 ヨーナはますます顔を赤くして、目をきらきらさせた。


「だから、今から約束しておこうよ」

「うん、分かった!」


 これで、全て大丈夫。ホーソンに報告して、婚約の準備をしてもらおう。


 最近は勉強も頑張っているし、嫌いだったトマトもちゃんと全部食べている。武術も兄上が稽古を付けてくれるようになった。きっと兄上だって僕を認めてくれるはず。


 うきうきした気分の僕に、ヨーナがつないだ手を揺すって言う。


「でも、エルウィン殿下。ヨーナ、もっと大事な事があるの忘れてた」

「なに?」

「結婚するなら、うんとヨーナの事好きになってくれないと駄目なんだよ。アーウィンさまがお姉さまの事を好きなくらい、とっても」


 それなら大丈夫。僕はヨーナのもう片方の手もつないだ。


「大好きだよ。一番好きだ。世界で一番好きだよ」

「えへへ、嬉しい」


 ヨーナは嬉しそうに笑ってくれた。


「ヨーナは僕の事好き?」

「うん、大好き」

「それならいいでしょう?」

「うん」


 僕たちの大切な約束。最高の気分の僕に、後ろから祝福の声がかかる。


「やるじゃないか、おめでとう」


 叔父君だ。後ろで一部始終を聞いていたのか、面白そうに笑って僕の頭を撫でてくれる。幼い頃からよく遊んでくれる大好きな叔父君に祝福してもらって僕はますます嬉しくなる。


「兄上もアーウィンも、この点では頼りなかったからな。お前はそれを受け継がなくて良かったじゃないか」


 そして、いたずらを教えてくれる時のような顔をして笑う。


「なあ、アーウィンに報告したら俺に教えてくれ。聞いた時のあいつの様子を、後で聞かせろよ。こんなに早く花嫁の父の気分を味わうとは思って無いんじゃないのか。面白過ぎるな」


 僕に面白い遊びを教えてくれるのは、いつも叔父君だ。兄上にも同じように、いたずらや遊びを教えて父上に叱られていたそうだ。その叔父君が面白いというのだから、きっと面白い事なんだろう。


「分かりました!」


 元気よく答えると、僕とヨーナの頭を両手でごしごしと撫でた。


「きゃあ」


 ヨーナも嬉しそうに笑っている。


「「「わああっつ」」」


 歓声があがった。目を向けると、兄上とロイダさんが皆に向かって礼をしている。


「ヨーナ、僕たちもあんな風になろうね」

「うん」


 僕たちはぎゅっと手をつないで、幸せな二人をうっとりとながめた。


(終)

最後まで読んで頂いてありがとうございました。

明日、明後日と一話ずつ番外編を投稿して完結にします。


最後に少し出てきた、ガイデルが騎士になる話と、

結婚後も三人で枕を並べるのかしらと、周りが気を揉む話です。


番外編までお付き合い頂けましたら嬉しいです。

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