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返礼の怪人  作者: Aimerのライブいきたかったー--(´;ω;`)
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火玉稲荷神社

 麒麟の案内通りに妖魔に運転された車は、周りに比べて整備が行き届いており、自然にあふれていながらも、昔ながらの雰囲気を感じられる大きな建造物が建っている場所のすぐ側にある、かなり大きな駐車場に停められた。その大きな建造物の敷地内は数多くの人たちでひしめき合っていた。

 車を降りた妖魔は、その建造物を不思議そうに眺めた。

「本当にこんなところに妖怪が居るのか?」

 そう怪訝な声を出す妖魔の前には一般的なものよりも一回り程大きな鳥居があり、その中央上部にある額束にある額には火玉稲荷神社と書かれている。その大きな鳥居の内側から除くことができる境内には、多くの人たちが行き来できるように整備された参道に、目の前の方にはかなり大きめの御社殿が鎮座している。それだけではなく、参道の脇にはどう考えても境内には不必要に思われる食べ物や衣類、お土産屋といった様々な露店が立ち並んでいる。

 火玉稲荷神社は国内でもここ20年程飛躍的に人気を集めている観光地である火玉町の有名な観光スポットということもあり、建設当初こそ一切の露店が無く、普通のものよりも大きめのただの神社だったが、観光客が増えてきてからは、観光地としての側面が強まり、様々な露店が建てられた。

 そんな、一見すれば妖怪がいるとはとても思えない場所に妖魔は疑念を隠せなかった。

 その妖魔の端的な疑問に麒麟が説明を始める。

『正確に言うのであれば、ここは適当な場所よりも多くの妖怪がいるというだけで、妖怪自体は基本的にどこにでもいるのですよ。』

 妖魔が不思議そうな顔をする。

「そうなのか?妖怪が出るのは心霊スポットだけだって聞いたが?」

『それは噂の話でしょう?確かにあなた方人間の言う心霊スポットに妖怪が多くいるのは事実ですが、だからと言ってそこにしかいられないというわけではありません。所詮、噂は噂というだけのことですよ。』

 その麒麟の少々大雑把な説明に妖魔は納得しながらも別の疑問が浮かんだが、麒麟の言う通り、所詮は噂だったとして浮かんだ疑問を棚に上げた。

『まぁ、いるとは言いましたが、流石に時間が早すぎましたね。人が居なくなる深夜まで待つとしましょう。そうすれば妖怪もかなり出てきますから。』

 それを聞いた妖魔が驚愕し、軽く吹き出す。

「はッ!?深夜まで待つのか!?今何時だと思ってるんだよ!?」

『18時ですね。まぁ、あと4時間ほど待てば人もいなくなるしょう。』

 当然のように告げ、本気でここで4時間も待とうとしている麒麟の時間間隔を疑いながらも、妖魔は付き合っていられず、マンションに一度帰るために車に乗り込む。

 その様子を見た麒麟は不思議そうな表情をする。

『待たないのですか?』

「待たないじゃなくて待てないんだよ。1時間とかならまだしも4時間もは流石に待てねーよ。俺は一回帰らせてもらう。」

 強情な様子の少年に麒麟は苦笑する。

『仕方ありませんね。では一度帰って深夜にまたここに戻ってくるとしましょう。』

 そして麒麟も車に乗り込み、妖魔たちは一度マンションに戻った。


 5時間後、火玉稲荷神社に戻ってきた妖魔は、夕方に見た光景とは打って変わり、人が一切おらず、閑散とした様子に軽く感嘆の声を漏らした。

「さっき見たときはあんなに賑やかだったのに、夜になればここまで人がいなくなるもんなのか.....。なんと言うか、不法侵入するみたいでちょっと気が引けるな。」

『さぁ、行きますよ。』

 夕方とは雰囲気を完全に変えた火玉稲荷神社の圧力に若干気後れしている少年に構わず、麒麟は先を急ぐように少しだけ早めに歩を進める。

 妖魔はそれに少しだけ慌ててついて行きながらも、これから始まるであろう何かに不安と高揚の入り混じった複雑な気持ちを抱きながらも、妖怪を殺すために必要な事だと自身に言い聞かせ、意気を高めた。

 妖魔達が鳥居をくぐり境内に入ると、外から見た以上に境内は閑散としており、妖怪はおろか、人ひとりいなかった。

 ここに案内される際の麒麟の口振りから夕方に見た人々の数とまではいわずとも、10匹程度は妖怪がいると思っていた妖魔がわかりやすく落胆しながらため息を吐いた。

「お前に言われたとおりに夜に来てみたのに、妖怪なんてどこにも見えないんだが?」

 そんな少年の嫌味交じりの疑問を麒麟は気にも留めず、目の前に広がっている、本来であればありえない状況に困惑していた。

『おかしいですね...。この時間のこのような場所ならば妖怪ならば好んで生息しているはずなのですが.....。』

「そんな事言っても、事実として今ここには妖怪なんて一匹もいないじゃないか。第一、この時間のこのような場所ならって一体どういうことだよ?」

 自分でも予想外の事態に困惑しつつも、麒麟は少年の疑問に答えることを優先する。

『私たち妖怪は基本的にあらゆる場所に生息することが可能です。それは例え深海や火山などといった極めて危険な場所も例外ではありません。しかし、だからと言って妖怪は生息する場所はどこでもいいというわけではありません。あなた方人間に好みがあるように、私たち妖怪にも好みというものはあります。』

「その好みの場所ってのがここみたいな場所ってことか?普通の場所とどんな違いがあるんだ?」

『ここは他の場所と違って霊力に満ち溢れていますからね。これは妖怪にとってはかなりの好条件なのですよ。』

 疑問を一つ解消できたのに今度は自分が知らない言葉が出てきたことに妖魔は嫌になった。それを顔に出しながらも、聞かないわけにはいかないので口をはさむ。

「その霊力ってのは何なんだ?それも生きるために必要なのか?」

『必要と言えば必要ですが、不要と言えば不要です。生きるために必須というわけではありませんが、私たち妖怪は力量で上下関係を決めますので、その力量を高めるためにも霊力は高いほうがいいのでそういう意味でここは妖怪ならば好む環境であるということです。あとは単純に、霊力が枯渇していては本調子が出ないということもよくありますので。まぁ、人間で言うところの体調不良みたいなものですね。』

 無意識に霊力と生命力を同一視していた妖魔だったが、麒麟の説明で生きる上で必須かそうでないかという以外はあまり変わらないものであると理解すると、今度は自覚して同一視した。正確には、区別するにたる他の理由もあるのだろうとはなんとなくわかってはいたが、これ以上気にすると気が狂いそうだと思い、強引に同一のものとみなすことにした。

 その少年の前で麒麟は少年には気付かれないように表情を険しくしていた。

『(自分で説明しておいてなんですが、やはりこの状況はおかしいですね...。妖怪ならばこれほど霊力にあふれている場所を見逃すはずがないんですが.....。)』

 麒麟が再び周囲を見渡す。しかしそこにはやはり妖怪も人もいなかった。

『(この少年を鍛えるという点では、何体も居られるよりはマシですが...、流石にここまでいないというのは不自然ですね。彼に死なれては元も子もありませんし、安全を考慮して今日はもう切り上げるべきでしょうか.....。)』

 切り上げるかどうかを悩むくらいには現状は酷いものではなかった。

 確かに、これほどの好条件の場所に妖怪が一体もいないのは不自然であるが、それを踏まえても今の状況は少年を鍛えるための環境としては都合がいいい。あとは妖怪を一体見つければ訓練場としては最高の環境だ。しかし、そんな好条件でも無視できないくらいには今の状況は不自然だった。


 参道の一番奥、御社殿の中で一人の少女が今の時間は誰もいないはずの境内に誰かがいる気配を感じて好奇心に胸を躍らせていた。

「誰だろう?こんな時間に?」

 少女が内心を反映した声色でそう呟くと、少女の近くにいた鼬のような姿をした妖怪がその少女の目の前まで来て自身を主張するように立ち上がり身体を大きく見せる。

 それを見た少女が優しく微笑む。

「そう?それならお願い。見てきてくれる?」

 それを聞いた妖怪は意気を上げるように鳴き声を上げてから少女に背を向け、誰かがいる気配がするほうへ駆けていった。

 その様子を微笑みを崩さずに見送った少女は、その姿が見えなくなると表情を期待を孕んだ無邪気なものに変えた。

「お友達になってくれるかな?」

 その少女の呟きを周りにいた妖怪たちが聞いていた。


 妖怪も人もいないを境内を妖魔は項垂れながら、麒麟は警戒しながら進んでいた。

 ここに来て妖怪を探し始めてからすでに30分近く経とうとしており、妖怪と戦う機会を待ち望んでいた妖魔は、初めに比べるとかなり意気を失いつつあった。

「なぁ、流石にここまで探していないんだったらここにはいないんじゃないか?」

『そんなはずはないはずなんですが...。』

 最初に比べて麒麟の言葉に含まれている自信が少なくってきており、たとえ麒麟の言っていたことが事実だったとしてもこれ以上付き合う気力は起きなかった。

 麒麟も自身の言葉に自信がなくなってきていることには気づいていた。初めのうちは少々運が悪かっただけだと自身に言い聞かせていたが、それだけでは説明しきれないほどに妖怪が見つからなかった。

 この異常事態に、麒麟が少年からの自信の信用を多少失ってでも切り上げるかを検討するほどに懸念を深めていた。しかし、そんな麒麟の懸念は良い意味でか悪い意味でか杞憂に終わった。

 妖魔たちの前に一匹の鼬が現れた。正確には鼬のような姿をしているが、前足からは高熱で青白くなっている骨が腕刃となって突き出しており、尻尾が二つに分かれておりその先にはゆらゆらと炎が揺らめいていた。一目で動物ではなく妖怪だとわかる姿をしていた。

 ようやく待ち望んでいた機会が訪れたことに妖魔が疲労を感じながらも意気を取り戻した。

「ようやく出てきたか。随分と待たされたけど、まぁいいや。」

 妖怪を見た瞬間に激情で我を忘れそうになった妖魔が自分に言い聞かせるように力強く呟く。

 妖魔が構えを取る。しかし、その構えは先ほどのケリーとの戦いで見せたものとは少々異なっていた。昨日の妖怪との戦い、そしてケリーとの試合を通して学んだことから少々構えを変えたのだ。

 今までは態勢を高めにしていたが、腰を落としてかなり低くする。普通の人から見ればただそれだけのことのように思えるが、今まで4年という長い期間、自身を鍛え上げてきた妖魔にとってはそれだけでもかなり変化することはわかっていた。

 深呼吸をして頭を落ち着かせる。昨日のように妖怪に対して憎しみは湧き上がってくるが、それを自信が強くなるための邪念として無理やり振り払う。それでも完全には振り払うことはできなかったが、ならばそれは必要なものなのだとして内に秘めておく。そうして深くより深く集中していく。

 そしてその集中が十分に深まったと感じた妖魔は妖怪に向かって一気に駆けだした。最小限の動きで妖怪を自身の間合いに入れると手刀を繰り出す。

 妖魔が先手を取ろうとしたことには理由があった。昨日の戦いで妖怪に先手を取られてしまった妖魔はその後の戦いで後手に回ってしまった。さらには昼間のケリーとの試合でも自分が能動的になった途端に負けてしまった。だからこそ、妖魔は今度は先手を取ることでどのような結果になるのかを試してみることにした。

 無論、それだけが重要ではないことは妖魔自身理解している。先手を取るかどうかなど初歩的な事であり、わざわざ確認するほどのことではない。これはあくまでも妖魔が妖怪との戦い方を学んでいく上での微調整の一つに過ぎない。先ほどの構えの変更もその微調整の一つだ。もしかしたら自分は先手を取ったほうが上手く戦えるのではないか。その程度の疑問から来た確認だった。

 今までも妖魔はこのような微調整を何度も繰り返してきた。そのための時間ならば4年間という長い時間があった。妖魔は妖怪に対する憎悪を持ってその4年間のほとんどを自身を鍛え上げるために費やしてきた。だからこそ、今日妖魔は今まで手も足も出なかった、戦いのプロであるケリーに一矢報いることができた。

 今までは人間を相手に微調整してきた。しかし、今度はその相手が妖怪になった。人間と妖怪とは生物として全く違う。だからこそ妖魔は初歩的な事から微調整しなおすことにした。

 妖魔が繰り出した手刀が、達人に迫りつつある技量を以って空を切りながら妖怪の首元に向けて一直線に落ちていく。それを妖怪は横に大きく飛んで回避する。妖怪に当たることなく空を切り裂くだけに終わった妖魔の手刀により発生したわずかな衝撃で妖魔の足元に落ちていた木の葉が舞い上がる。

 その木の葉が地面に落ちるよりも速く妖魔は再び妖怪に向けて駆けだす。

 初手の攻撃が躱されたことは妖魔の想定内だった。これだけ広い境内ならば、カウンターを狙わないのであれば大きく移動するだけで簡単に避けられる。そして昨日の戦いで、同じような条件で実際にそうやって攻撃を躱した妖怪を妖魔は見ている。しかし、大きく移動するということはそれだけ隙が生まれやすく、次の行動までに時間がかかるということでもある。だからこそ妖魔は目の前にいる敵が大きく移動して躱すと仮定したうえで、その後の隙を逃さないために本命の追撃を加える。要するに、先ほどの手刀は妖魔が仕掛けた罠だった。

 相手が人間であればそれに気づかれる可能性もあった。しかし妖怪はそれに気づくことができるほどの知性はなく、気にすることなく罠を張ることができる。昨日は冷静になることができなかったせいで出来なかった戦法だ。 

 ほんの数秒で妖怪との距離を再び詰め終えた妖魔は、今度は逃がすまいと妖怪の重心が乗っていると思われる後ろ脚に向けてスライディングをするように蹴りを放つ。躱そうとすれば重心を無理に変えようとすることで体制を大きく崩すタイミングでの蹴りであり、確実に当たる。妖魔はそう確信に似たものを感じていた。

 しかし、その蹴りは妖怪には届かなかった。重心を変えようとすれば体制を崩すことを本能的に理解した妖怪が、腕刃を地面に突き刺してそれを支えに妖魔が向かってきている方へ大きく跳躍したのだ。それに合わせて逆の足についている腕刃を妖魔の首に向けて勢いよく振るわれていた。

 妖魔が妖怪の尻尾で揺らめいている炎の熱を強く感じ取れる位置ですれ違う。妖魔はその熱を頬で感じながら避けられないはずの攻撃を避けられたことに、自身の首元を切り落とそうと眼前に迫ってきている腕刃に驚愕する。

 しかし、長年の経験から培ってきた危機回避能力から、反射的に肩から上を大きく横に反らして躱す。そのまま妖怪とすれ違い、慣性を利用して急激にスライディングの速度を落として立ち上がる。通常であれば身体にかなりの負担がかかるその動作を、達人に近づきつつある技量を以って最低限の負担で済ませた妖魔は、妖怪が自分に攻撃を仕掛けてきていないことを確認すると、先ほどの攻防を客観的に批評する。

「(当たったと思ったんだけどな、まさかあんな躱し方をできるなんて.....。やっぱり人間相手の考え方はよくねぇな。)」

 無論、先ほどまでも人間と同じように考えていたわけではなかった。しかし、想定していたよりも遥かに上回る厄介さを有していることを先ほどの攻防で実感した妖魔は、さらに気を引き締めなおした。

 妖魔が気を引き締めなおすと、今度は妖怪が妖魔に向かって駆け出す。獣の持つ圧倒的な敏捷性で妖魔との距離を一瞬で縮めると、再び妖魔の首にめがけて飛び掛かり青白く光る腕刃を振るう。

 妖魔はそれを最低限の動きで躱すと、目の前で無防備に揺れている尻尾を掴み地面に叩きつけようとする。

 しかし、できなかった。妖怪の尻尾で揺らめいている炎が妖魔に掴まれた瞬間に大きくなり、火傷しそうな熱さに反射的に手を放してしまった。思わずそのまま大きく後ろに後退し妖怪と距離を取る。

 圧倒的な敏捷性を誇る妖怪ならばその動きに追いつくことはできたが、二つの理由で出来なかった。一つは妖魔に尻尾を掴まれたことで一瞬ではあるが動きを封じられたこと。もう一つは振り下ろした腕刃が地面に刺さり抜けなかったことだ。そして、大きく後退しながらその様子を見ていた妖魔があることを思いつく。

「(これならさっきみたいなことはない。いけるか...?)」

 先ほどのこともあり確信を持つことはできなかったが、試す価値は十分にあると考えて、地面に刺さっていた腕刃を抜いた妖怪が再び自分との距離を一瞬で詰めてきて振るってきた一撃を、今度は大きく後方に飛んで回避した。

 

 鼬の姿をした妖怪が現れたとき麒麟は少しの間だけ安堵していたが、今はまた現状に懸念を覚えていた。

 自分の予想通り妖怪はいたが、それでもまだ今妖魔が戦っている一体しか見かけていない。妖怪が好む条件がそろっている場所にいる数としては極端に少なく、不自然な状況には変わりなかった。

『(もっと奥に居ればいるのでしょうか?いやしかし、目的はあくまで彼に妖怪との戦い方を学んでもらうこと。あの妖怪を見つけた以上、戦闘が終わり次第こちらの目的は達成される。深追いはせずにもう帰るべきか、それとも念のために確認しておくべきか...。)』

 万が一、深追いして一か所にかなりの数の妖怪が固まっていれば、今の少年の力では殺されて終わりなのは明白である。それよりであれば少年に自分との取引に応じさせて、安全を確保してからのほうがいい。しかし、その時にはすでに手遅れの状態に陥っている危険性がある。

 現状の原因に心当たりがある麒麟は、妖魔をここに連れてきたことに後悔しながらも、打開策を思案し続けていた。


 鼬の姿をした妖怪の腕刃を駆使した攻撃を何度か大きく回避し続けた妖魔は、すぐ後ろに屋台の一つの壁があるところまで後退した。

 これ以上後ろに下がることができない状態の妖魔に、妖怪が止めを刺そうと腕刃を大きく振るって妖魔の首を切り落としに飛び掛かる。

 再び首元に振り落とされている腕刃を、妖魔は今度は躱しもせず回避もせずに体を脱力させてじっと見る。意識を極限まで集中させて腕刃の軌道を見切る。思いついた作戦を成功させるためにギリギリまで引き付ける。そして妖怪の腕刃が頭辺りまで振り落とされたところで妖魔が動き出す。

 身体を左側に傾けながら、右手で妖怪の腕刃が突き出している少し上あたりの前足を、掴むのではなく反らすように添える。そのまま左手で妖怪の胴体を軽く押し完全に軌道を逸らした。今までは妖怪の攻撃に対して躱すか回避を選択していた妖魔だったが、今回はいなす選択をして、危険ではあったがそれを成功させた。

 妖魔に攻撃をいなされた妖怪は振り落としていた腕刃を止めることができずに、屋台の壁に激突するように腕刃を突き刺した。突き刺すように仕向けられてしまった。すぐにその場から飛び退こうと壁に突き刺さっている腕刃を抜こうとしたが、着地する際に威力を落とした先ほどとは違い、振り落とした勢いそのままに突き刺さってしまった腕刃は簡単に抜けることはなかった。

 攻撃をいなした妖魔はその隙を逃すことなく、妖怪の背中に拳を落とし、刺さっている腕刃を折りながら地面に叩きつけた。地面に叩きつけられた妖怪はその衝撃ですぐには態勢を立て直すことができずに、妖魔の流れるような動作で繰り出された踵落しを頭にもろに食らってしまい、頭を潰されて息絶えた。


 妖怪が息絶えた瞬間、好奇心と期待に心を躍らせていた少女が予想外の結果に驚いていた。

「あの子に勝っちゃうんだ、怪人でもないのにすごいなぁ...。あの子も弱くはないんだけどなぁ。」

 そんなことを言いながら、少女は姿も名前も知らない誰かに対する好奇心と期待を高めていた。

ようやく後期が終わった(;・∀・)

ラストのテストとレポートの連続がヤバすぎて2週間ぐらい全然かけなかった(;´・ω・)


誤字、脱字などがあればご気軽にご指摘ください( ゜Д゜)

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