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返礼の怪人  作者: Aimerのライブいきたかったー--(´;ω;`)
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霊体化

妖魔はマンション町の中心部から少し離れたところにあるマンションの駐車場に車を止めた。

バーベキューで使用していた道具を部屋の一室にある物置に片付けてからリビングの電気をつけた。

「これがあなたの部屋ですか、1人暮らしのわりには広い部屋に住んでいるのですね。」

妖魔の部屋は10畳の1LDKと、一人暮らしをするには十分すぎるほどの広さがある。

室内には部屋の広さを邪魔しないだけの必要最低限の家具が置かれていた。

初めて人の部屋に入った麒麟は、その広々とした部屋を見渡しているとあることに気付いた。

「それにしても、どの食器も2セットずつあるというのは不思議なものですね。誰か一緒に住んでいた人でもいたのですか?」

妖魔の部屋に置かれている家具は1セットずつしか置かれていない。しかし、食器や歯ブラシなどといった生活に必要な小物が2セットずつ置かれていた。どれも使用されている形跡があり、一人暮らしをしているようには見えなかった。

「別に、客が来たときように置いてるだけだ。」

少年の様子を観察していた麒麟は、妖魔自身も気づかないほどのわずかな変化に気付いた。

表情は険しくなり、視線をそらさず自身のことを凝視している。正確には、まるで獣が獲物を狙うような目で自身の行動を注意深く観察している。一挙手一投足から先ほどまではあったはずの隙が全くなくなっている。少しでもおかしな動きを見せようものなら、あるはずのないナイフを突き立てられるような殺気が体中から溢れ出している。それ以上詮索するなと口ではなく体が言っている。

その様子を見て麒麟はそれ以上の詮索をやめる。

少年から目を逸らし、それ以上少年を刺激しないようにしながら、今まで得た情報から少年に対する思考を深める。

「(先ほどからの様子からして過去に妖怪絡みで何かがあったことは確実。それも彼と親しい人物、おそらくはこの部屋で一緒に過ごしていた人物に何かがあったと見て間違いないでしょう。それに加え、4年前という単語に対する先ほどのあの反応...原因はおそらくあれでしょうか.....)」

そこまで思考を続けていると、その少年から話を逸らすようにいきなり質問を投げかけられる。

「そんなことより、さっきのことを説明してくれ。なんで俺にはお前が見えていたのに及川教授には見えてなかったんだ?」

「それはあなたの中に私の体の組織の一部を移植したからですよ。先ほども説明した通りあなたの体の中に私の体の組織の一部を移植したことで、妖怪の持っている能力があなたにも宿っています。本来であれば“霊体化”している妖怪は同じ妖怪にしか見えませんが、その影響であなたにも私の身体が見えるようになっているのですよ。まぁ、霊体化してすぐのあなたの様子からして、まだ私の組織が体に馴染んではいないようですが。」

妖魔が真剣に麒麟の話を聞いていると、聞き慣れない単語が出てきた。

「ちょっと待て。霊体化ってなんだ?」

「霊体化というのは、言葉通り身体を霊体にすることですよ。」

「いや、それは何となく想像つくんだ。俺が聞きたいのはその霊体の方なんだが。」

「そうですね...わかりやすい例を挙げるとしたら幽霊でしょうか。体を幽霊のようにすることで人間や動物には見えないようにするのですよ。」

その説明を聞いた妖魔は大まかにではあるが聞き慣れなかった単語を理解することができた。

しかし、理解すると同時に先ほどの状況を思い返し、とある疑問が思い浮かんだ。

「じゃぁなんでさっきの奴は俺を襲ってきたときに霊体化してなかったんだ?普通に考えて相手に見えないようにしてた方がいいだろ?」

「霊体ではこの世界に存在することはできますが干渉することはできません。わかりやすく言うのならば、物を動かしたり、熱さや冷たさなどを感じたりすることができません。ですので、霊体のままあなたを食べようとしても、そもそもとしてあなたに触れることすらできないのです。」

「つまり、ただ便利なだけの力ってわけじゃないってことか。」

「使いようによってはかなり便利な力ではありますが、大抵の妖怪は霊体化を有効活用できるほどの知性を備えてはいませんから。」

正確に言えば、妖怪の中にも麒麟のように高度な知性を有している者もいる。しかし、そのような妖怪は、そもそもとして本能的に人を襲うように生きてはおらず、理性的に生きているものがほとんどであるため、人を襲う妖怪のほとんどは、そういった知性や理性を備えていない獣のような者たちばかりなのである。

そして、そのような高度な知性を備えた妖怪は、妖怪すべての中で見るとかなり少ない。

一通りの説明を聞き終えた妖魔は先ほどまで抱いていた疑問が解消されたことに、どこかすっきりとした気分を味わいながらベッドに横になった。

そこで妖魔は、妖魔の中で一番リラックスできる場所で一番リラックスできる体制をとったことにより、墓地に足を踏み入れる前からずっと張っていた気が緩み、先ほどまでの様々なことから溜まりに溜まっていた疲労から、途端に強烈な眠気に襲われた。

その眠気に抗うことができず、妖魔はそのまま意識をベッドに溶かした。

麒麟も妖魔が眠ってしまったことを確認すると、近くにあった大きなクッションに体を預けそのまま眠ることにした。


翌朝妖魔がいつもより早めに目を覚ますと、リビングにある大きなクッションでとても心地よさそうに寝ている麒麟を見て眠気眼をこすりながら顔を引きつらせた。

「滅茶苦茶まったりしてやがる...」

そんなことを考えながらも、今ならばこの妖怪を殺すことができるのではないかとも思ったが、冷静に考え直して、どうせ殺すのならば最大限に利用してから殺すことにしようという結論に至り、体をベッドから起こして大学に行く準備を始める。

大学に行く準備を終え、駐車場にある自分の車の運転席に乗り込み、エンジンをかける。走り出そうとアクセルペダルを踏もうとした瞬間に、不意に頭の中に声が響いてきた。

「私にはあまりよくわかりませんが、人間にとって朝ごはんを食べるという行為はとても大切なことなのではないのですか?」

「うわッ!!ビックリした!てか、いつの間に起きてたんだよ!?」

驚愕しながら周りを見渡すと、いつの間にか助手席に麒麟がいた。

「ていうか、なに普通に助手席にいるんだよ!まさか大学までついて来る気か?」

「当然です。昨日のように勝手に妖怪に襲い掛かって、勝手に返り討ちに会ってもらうようでは困りますので。あなたのことは監視させてもらいます。」

言い返したかったが、実際に昨日それで麒麟がいなければ死んでいたので、何も言い返すことができなかった。

妖魔は口をとがらせながらもアクセルペダルを踏みこみ車を駐車場から出した。そして大学まで一本道の大通りに出ると、信号を待ちながら麒麟を嫌そうな目で見ながら口を開く。

「講義中は静かにしとけよ...」

出来れば大学にはついて来られたくはなかったが、時間もなかったため、諦めて麒麟と共に大学に行くことにした。

結局大学まで麒麟について来られてしまった妖魔は、あるはずのない視線を感じながらその日の最初の講義がある教室に向かった。

なるべく人目のつかない席を選び座ると、隣に飴色の髪をした少女が座った。

その少女は座席ごと妖魔の方に向き直ると、上目遣いで妖魔のことを見つめながら妖魔の膝に手を触れた。

「おはようございます!先輩!今日もいい天気ですねー。まぁ先輩からすれば、こんなに可愛い後輩をいつも目の前で見れるわけですから、毎日いい天気だとは思いますけどねー。」

そんなことを言いながら意地悪な笑みで自分を見つめる少女を一瞥して、妖魔は小さく溜息を吐いた。

「そうだな。お前が絡んでくるせいで俺の周りの空気はいつも殺伐としているよ。」

それを聞いた少女は顔を頬を膨らませて不満気な視線を妖魔に向けた。

「なんですかそれー。まるで私がいるせいで先輩が危ないみたいじゃないですかー。」

「事実そう言ってるんだよ。周りを見てみろよ、周りを。お前が絡んでくるせいで俺に向けられる視線に殺意が込められてるんだよ。」

教室内にいる男子はみんな妖魔と少女の方に目を向けており、少女に対しては羨望の視線が向けられており、妖魔には殺意のこもった視線が向けられていた。

少女は周りを見渡したが、まるで何も見なかったかのように妖魔に上目遣いで視線を戻した。

「そんなことよりも、昨日のバーベキューは楽しめましたか?先輩は私がいないとすぐにボッチになるんですからー。」

「お前がいるからボッチになるんだよ...」

妖魔は大学では友人が極端に少ない。

元々少ない部類ではあったが、今年に入り、元々友人だったものもいなくなり、さらに少なくなってしまった。そのせいで今でも妖魔と友人を続けている者は片手で数えられるぐらいまでに少なくなってしまった。

それは、妖魔が普段から不愛想でぶっきらぼうだからという理由もあるが、それ以上に、妖魔と一緒にいれば自分まで周囲の男子の嫉妬の視線の対象になる可能性が高いからという理由が大きい。なぜならば、今、妖魔の隣に座っている少女は『小森 若葉』という、大学でのアイドル的な存在であるからである。若葉は今年妖魔の大学に入学し、持ち前のルックスとあざとい性格から入学して1ケ月と経たずに男子から絶大な人気を得た。そんな若葉に様々な男子が告白した。運動部のエースや、大企業の御曹司、さらには当時いた彼女を捨ててまで若葉に告白するようなものまでいた。しかし、そのことごとくを若葉は断っていた。それが若葉をさらに高嶺の花にさせていった。そのような少女に、毎日とても親しげに話しかけられていることから、妖魔は大学中の男子から敵対視されるようになった。

妖魔と若葉がいつものように話していると、その講義の担当教授がチャイムから数分ほど遅れて入ってきたことにより、二人の会話は中断された。

話のペースを速めに進めたいけど、日常会話とかを挟むとどうしても遅くなってしまうんよな...

一応速くできるように説明の部分を最低限伝わるように端折ってるけど(;´・ω・)


誤字、脱字はご気軽にご指摘ください"(-""-)"

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