階級
新キャラをどんなキャラで行くのか考えるのがつらい。
妖魔と凌牙が離れてから3分後にMASUの本隊が爆発がしたところに到着した。
30人ほどいる部隊の中で先頭にいる一人の少年と二人の少女が、他の隊員に周囲を警戒するよう指示を出した後で、困惑しながら現場と思われる場所を見ていた。
周囲は吹き飛んでおり、爆発の発生源と思われる場所には小さなクレーターができていた。クレーターの外には吹き飛ばされたのであろう肉片や車輪の破片が散らばっており、爆発の威力を物語っていた。
散らばっている肉片や破片の一部を拾い上げては入念に調べるということを繰り返していた少年、菊池 太一が、それが何かを理解し驚愕する。
「これ、輪入道だ!周囲に散らばってるのは全部輪入道の破片だ!」
その太一の驚愕の声を側で聞いた二人の少女、天内 静香と鈴木 風もその信じられない内容に驚愕する。
「うそ!?周囲に落ちてる破片全部!?太一、本当に輪入道であってるの?」
「あぁ、間違いない。周囲に散らばっているのは全て輪入道の破片だ。俺も信じられないけど、状況を見た限りじゃ、輪入道が自爆したとしか考えられない。」
「でも、生きることを最優先に考える妖怪がそんなこと考えたりするとは思えませんけど...。それに、資料には輪入道の攻撃手段は炎の歯車を利用したものって書いてありましたし、自爆しようにもできるとは思えませんけど.....。」
風の指摘に、動揺のあまり、ありえない推測を立てていた太一と静香が冷静になる。
「確かにそのとおりね。私も自爆する攻撃手段を持っている妖怪なんて、資料で見たことがないわ。でもそうなると、輪入道は何者かの手によって爆破されたっていうことになるわよね?」
「あぁ、でもこれほどの規模の爆発、手榴弾なんかではなく、本格的な爆弾でもなければ起こせないぞ?」
「破片がどちらかの方向に集中して飛び散っているわけではないので、爆心地は輪入道の真下か真上、もしくは...」
「「もしくは.....?」」
「体内.....。」
3人が考え込み、唸る。
MASUが保管している資料室で、妖怪に関する資料を読むことができるMASUの隊員は、万が一妖怪と戦闘する状況に陥った際、生存率を上げるためにその資料を読んでいる人がほとんどである。
その資料の中には図鑑のように、妖怪の種類や生態、攻撃手段などがまとめられているものもあり、それを基に各妖怪に対する対抗策を練る訓練も、MASUに所属する前の訓練校時代から存在している。
特に部隊の中心として部隊を指揮することが多い3人にとって、それはとても重要な事であり、常日頃から読み込んでおり、記憶力が良い風は内容をほとんど暗記しているほどだった。
しかし、その資料の中に攻撃手段として自爆をするものはおろか、まず、爆発を攻撃手段として持っている妖怪自体が少ない。ましてや、身体の内側から爆発させることができるような妖怪など見たことがなく、そうなると、人為的に爆破されたとしか考えられない。
そこまでは可能性はかなり低いとはいえあり得る話ではある。問題は爆発の規模だ。
先ほどの爆発は遠巻きからも見えるほどの大爆発であり、その衝撃で辺り一帯は吹き飛んでおり、クレーターもできている。
人間の手でこれほどの爆発を引き起こすためには、最低でもきちんと回路が組まれた大型の爆弾が必要であり、MASUの隊員が携帯を許されている手榴弾程度で引き起こせるようなものではない。ましてやその大型の爆弾を輪入道の内部に爆発させないように埋め込むなど、MASUの隊員が100人いても困難なことである。
だからこそ、現状はありない状況であり、そのあり得ない状況が事実として存在していることに3人は頭を抱えていた。
3人が頭を抱え、唸っていると、一つの仮定を考え付いた静香が自信なさげに口を開く。
「もしかしたら、私たちがまだ知らない新種がいて、そいつによって引き起こされた...とか.....?」
「新種って言ったって、いったいどんな奴なんだ?輪入道をここまで粉微塵にできるなんて、最低でも青以上はあるだろ?」
「そんな妖怪が今回の件に関っているとしたら、私たちだけでは対処できません。少なくとも青以上の妖怪を相手にすることになります。」
そうして再び3人が考え込む。今度はあり得ない状況にではなく、仮定が事実だとした際の、自分たちには手に余る事態に。
3人が考え込んでいると、そこに一人の少女がやって来る。彼女は3人の部隊の一人であり、周囲を警戒していた隊員たちの報告役だった。
「周囲に異常はありません。それにマスコミも集まって来てます。警察の人が抑えてくれていますけど、そろそろ限界かと...。」
その報告を聞いた静香は少しの間考え込み、そして、意を決したように顔を上げる。
「じゃぁ、周囲に散らばってる輪入道の破片を回収して今日は撤収しましょう。ここまでの事態となると隠蔽は難しいでしょうし、清掃班は呼ばなくていいわ。それよりも、現場の維持を優先して、調査班を呼んで頂戴。」
静香の指示を聞いた少女は、静香と風を睨みながらも黙って頷き、他の隊員たちに指示を伝えるために戻っていった。
睨まれた二人は互いに見つめ合い気持ちを共有し、表情を硬くしながらため息を吐いた。
二人がため息を吐いた理由に心当たりが全くない太一は不思議そうに二人にどうしたのか尋ねたが、はぐらかされるだけに終わり、首を傾げた。
「ひとまず、今日の所は一度退いて、本部に報告しましょう。もしかしたら、私たちより上の部隊がこの件を引き継ぐことになるかもしれないけど、その時は仕方ないわ。今回の件は私たちの手に余るってことで、また今度頑張りましょう。ね?」
それを聞いた太一は悔しそうに顔をしかめたが、すぐに笑顔に戻し二人に微笑む。
「そうだな。じゃぁ、今日はもう帰ろう。みんな戻るぞ!」
太一がそう大声で指示を出すと同時に、破片の回収作業を終えた他の隊員たちが乗ってきた大型トレーラーに戻り始める。
明らかに曇った笑顔で皆に指示を出す太一を、静香と風は心配そうに見つめていたが、気持ちはわかるため何も言うことができなかった。
そのまま全員が撤収したのを確認すると、3人もトレーラーに乗り込みその場を離れた。
自分の部屋に返ってきた妖魔が早速麒麟に質問攻めをする。
先ほどまでは混乱していた頭も、マンションまで車を運転することで冷やす時間ができ、冷静になることができた。その頭で情報を再度整理し、気になることを闇雲に聞くのではなく、順序立てて聞いていく。
まずは先ほども聞いたことを確認がてら質問し、妖魔の認識に誤解や不備があれば麒麟がそれを訂正し、補足する。そのような流れで話は進んでいき、その確認作業が終わった後、話はついに、妖魔が一番気になっていることになる。
「それで、お前が言ってた怪人とか憑依とかってのは何なんだ?お前の口振りからして、凌牙ってやつがそうだっていうのはなんとなくわかるけど...。」
『そこは先ほどの妖怪の階級にも絡めて説明しましょう。というより、それをちゃんと理解するためには、まず階級をきちんと理解しておくことも大事なので。』
妖魔が何となく姿勢を正す。それを見た麒麟も雰囲気を真剣なものに変え、説明を始める。
『まず、なぜ妖怪に階級というものが存在するのかについてですが、これは妖怪が成長していくために必要な事だからです。』
「妖怪が成長するのに、なんで階級が必要なんだよ?」
『モチベーションの問題ですよ。あなた方人間が一生懸命勉強して、資格を取って、より良い地位を求めて努力するように、私たち妖怪も、自身の待遇をよくするために努力をします。その待遇を大まかに決めるために階級があるのです。』
「つまり、階級を一つの目標にすることで、妖怪が己を高めるために努力するように仕向けてるってことか?」
『理解が早くて助かります。階級は先ほども言った通り6つありますが、その内の下から3つ、黒、白、黄は単純にその妖怪の実力が反映されます。簡潔に言えば、黒ならば弱く、黄ならば強いということになります。しかし、赤から紫、特に、青と紫は少々特別なものとなっております。』
「その赤と青の間にどんな違いがあるんだ?凌牙ってやつの口振りからすると、青と紫は別格って感じだけど...。」
『それは少々誤解がありますね。確かに青と紫の間に実力差はありますが、赤と青の間には、実力という点では、あまり違いはありません。青の妖怪よりも強い赤の妖怪も少なからずいますしね。赤と青の間にある違い、それは人間に憑依できるかどうかということです。』
そこで妖魔の態勢が少々前のめりになる。
自分が一番聞きたかったことがようやく聞けることに、長い話に疲れながらも強い興味を示す。
『憑依というのは、本来は別の生物である人間と妖怪の生命の形を同化させることで、お互いが持つ力を共有できる状態にすることです。いや、より正確に言えば、命そのものを人間は妖怪に、妖怪は人間に変えていき、全く新しいものに変えてしまうのです。それにより、妖怪の力を得た人間を怪人と言うのです。』
「お互いにそれまで持っていなかった力を手に入れられるかわりに、人間は人間を、妖怪は妖怪をやめるってことか...。」
『そしてこれは、そのことに目を瞑れば大きなメリットも得られますが、同時に大きなデメリットも抱えてしまうことになってしまいます。』
「メリットはお互いに持ってない力が手に入ることなんだろうけど、デメリットは何なんだ?」
『お互いの命の形を変えてしまうために、憑依するには互いの命を極限まで近付け、同化させる必要があります。そのため、どちらか片方でも死んでしまうと、もう片方も死んでしまうというリスクがあるのです。そして、一度憑依してしまうと、途中でやめることはできません。』
妖魔が難しい顔をする。
ハイリスクハイリターン。そう表現するのに最も適したものに、妖魔は少々敬遠した。そして、実際にそれを冒している凌牙に興味が湧いた。
それから妖魔は、新しく出てきた言葉を理解し、冷静になった頭で情報を整理するために、黙っていつも通りの一日を過ごした。
麒麟もそれを察して、本来ならば今後の方針について話し合いたかったが、それ以降は何も話すことはなかった。
翌日、妖魔は再び火玉稲荷神社にやって来ていた。
昨日の話で凌牙に興味が湧いた妖魔は、ここに来ればなんとなく凌牙に会えるような気がして来てみたはいいものの、昨日の一件で辺り一帯は封鎖されており、妖魔のような一般人が立ち入ることができるような状態ではなかった。
「なんと言うか、思ってたより警備の人数が少なく感じるなぁ。」
『表向きは警察が捜査しているように見せて、実際にしているのはMASUの本隊か、もしくは調査班の人間でしょうからね。事実を隠蔽するためにも、警察側が関与する人数をできるだけ少なくした結果、人数が減ったのでしょう。』
その説明に納得しながら、妖魔はふと疑問に思う。
「そう言えばお前、随分とMASUのことについて詳しいんだな。MASUって人間の部隊なんだよな?」
『基本的にはそうですが、上層部の人間には個人的に妖怪と関わりを持つ者もいますし、昨日の彼のように、怪人として特殊隊員として活躍している者もいますしね。そのような者たちから情報を引き出すことくらいは、簡単ですね。』
とんでもないことを平然と言ってのける麒麟に、妖魔は表情を軽く引きつらせた。
しかし、すぐに気を取り戻すと、話を本題に持っていく。
「この調子じゃ、凌牙ってやつに会うのは難しそうだな。そもそもMASUの人間でも、あいつが怪人である限り、本隊の人間と関わっちゃいけない時点で、ここにいるっていう望み事態薄いし...。」
『時間的な問題もあるでしょうね。今の時間は来訪客が一番多い時間帯、その分警備が厳重になっていても、なにも不思議はありません。』
「そうなると、ここに来るのは深夜か...。」
そう呟きながら、妖魔がなんとなく警備の後ろに壮大にそびえ立っている大きな鳥居を眺めていると、隣から視線を感じた。
そちらを見ると、麒麟が驚いた顔をしながら妖魔を見つめていた。
「...なんだよ?」
『いえ、随分とやる気があるのですね...。』
「確かに危険ではあるけど、そのリスクを冒すだけの価値はあるからな。」
当たり前のことを言うようにそう言ってのける少年に、好都合だと思いながらも麒麟は思案する。
『(昨日の話でそこまでMASUに興味が湧いたのか、それとも紅 凌牙個人に興味が湧いたのか...。)』
少しの間、仮定を立てては否定を繰り返し、麒麟は結論に至る。
『(力.....。)』
3日間妖魔を観察してきた末にたどり着いた結論は麒麟を納得させるのに十分だった。
そしてなおのこと妖魔が力を求める理由に興味が湧き、知る必要があると考え、それを知るためにも、もう一度あの場に行き、不敵な笑みを浮かべていたあの少年に会う必要があると考え、決心を固めた。
昨夜、凄惨な現場の報告を終えた太一は、今朝になって上の人間から伝えられた指示の内容に、班ごとに与えられる個室の中で、激しく憤っていた。
「どうなってるんだッ!!今回の指揮権が別の班に委託されるだけならともかく、完全に手を引けだと!!!」
「落ち着いて太一。確かに今回の件から降ろされたのは私も納得いかないけど、きっとそれくらい危険なのよ。太一だって見たでしょう?輪入道が木っ端微塵になって飛び散っていたのを。それだけでも十分、私たちには手に余ると上が判断してもおかしくはないわ。」
「それならなんで俺たちよりも階級が下の班が参加しているんだ!そのまま俺たちがやってもいいじゃないか!!」
「それはわからないけれど、今はそんなことより今回のような危ない事案でも任せてもらえるように、強くなりましょう?」
「でも!.....」
太一と静香によるこのような問答は10分近く続いていた。
普段ならば太一の怒りを鎮めるために、強く言い包めることもある静香だが、今回は太一が怒る理由がわからなくもない、というより、自身も少々不満に思っているのであまり強く言うことができずにいた。
昨夜のことを上の人間に報告した太一たちは、今朝になっていきなり今回の件から完全に外れるように伝えられた。
それだけならば、まだ太一たちの手には余る事案だったとして、不満に思いながらも納得することができたが、自分たちよりも階級が低い班が参加していることを知り、太一は不満を通り越し、今のように憤り始めた。
今回の件から外された理由に、静香は太一を鎮めながらも思案していた。
「(本当にどうして?私たちの実力がまだ足りていないだけなら、私たちより階級が下の班を今回の件に参加させるのはおかしいわ...。何か別の理由があるにしても、元々私たちが請け負っていた事案から、わざわざ私たちを完全に外す理由はなに?)」
そんなことを考えているうちに、先ほどまで個室の中にある自身の席で、激しく憤っていた太一が不意に立ち上がる。
それに驚いた静香が意識を完全に太一の方に戻すと、太一は個室の出入り口に向かって歩き始めた。その歩みからは冷静になろうとしている様子は感じられず、一歩一歩に怒りがこもっているように感じられた。
嫌な予感に苛まれた静香は、急いで出入り口の扉を塞ぐように立った。
「太一!何する気!?」
「どいてくれ、静香!上の奴らに直接抗議する!!」
嫌な予感が当たったと感じながらも、静香は太一を鎮めるために尽力する。
「上の人たちに直接抗議してもどうにもならないわ!命令違反をする可能性が高いとして、謹慎処分が下るだけよ!」
「それでも、何も言わないよりはマシだ!それとも、ここでみんなで腐ってろって言うのか!?」
次の瞬間、静香は太一に向けて銃を向けていた。
あまりにも予想外の行動に、そして、大切な幼馴染に銃口を向けられた太一は大きくたじろいだ。
その太一の反応を見た静香は、癇癪を諫めるための優しい微笑みを、けれど、どこか覚悟を決めた雰囲気のある表情を浮かべた。
「ありがとう太一。あなたが私たちのためにも早く昇級できるように頑張っているのは、ここにいるみんなが知ってるわ。でもね、そのためにも、あなたを行かせるわけにはいかないの。たとえ、四肢を打ち抜いてでも。」
「け、けど...」
「太一を否定するわけじゃない。でも忘れないで、太一は私たちの班長なの。太一の意思はそのまま私たちの意思にもなるわ。」
それを聞いた太一がハッとしながら周りを見る。そこには、太一と同じように悔しそうに怒りを抑えながらも、太一を温かく見守っている少年、少女たちがいた。
静香の言葉で、自分の言動の一つ一つは班としての責任が伴うということ、そしてその責任は自分一人だけではなく、班の全員が取らされることに気づき、先ほどまでの勢いは完全にそがれ、太一は苦虫を嚙み潰したような顔をした。
「ごめん...みんな.....。」
太一が謝罪の言葉とともに頭を下げる。それにより室内に漂っていた張り詰めた空気は四散し、室内にいる班の全員の顔に和らいだ。
空気が緩んだところで号令を出して皆を各自の作業や訓練に戻らせた静香は一人、誰にも気づかれないように表情を曇らせていた。
結果として太一は冷静さを取り戻し、室内の空気も和らげることに成功したが、そのために愛する人を脅迫するようなことを言ってしまったことには変わりない。そのことに対する罪悪感が静香の心を締め付けていた。
やっとノートパソコンが修理から帰ってきた!(^^)!
早速続き書くかーって思ったけど何分語彙力がないもんで、ストーリー自体は思い浮かんでるのにキャラの心情描写とかでめちゃくちゃ詰まる。
誤字、脱字などがありましたらご気軽にご指摘ください( *´艸`)




