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駒鳥(ロビン)捕物控  作者: つくも拓
大罪の珠 
8/18

魔術師達の宴(三)

追いすがる捕方衆を嘲笑うかの如く、飛翔して頭上を飛び越え屋外を目指す赤い竜人でしたが、その姿が一転掻き消える。

その場にいた者総てが狐に摘まれた様に戸惑うさなか、一人の若い捕方が声をあげ広間の奥に逃げようとしている影に捕縄を投げる。

「兄さん、オイラには魔術まやかしは通じねえぜ。神妙にしやがれ!」

捕縄を握るは我らがロビン、捕縄の先はと言うと黒のターランの腕に巻き付いております。そしてターランのもう一方の腕には先程奪われたはずの大罪の珠が抱えられておりました。そしてターランの隣には、やはり大罪の珠を抱えるサリバンの姿。

奇しくも新旧世代で五賢が分かれて対峙する。

「どう言う了見だ、ターラン、サリバン!」

「どう言う了見も何もないでしょう、ガーウィンの旦那。この二人が珠を盗んでた下手人って事ですよ。

誰の目を誤魔化せても、このオイラの目は誤魔化せねえぜ。

だよな、お二人さんよう」

「するってえと何かい。黒蜥蜴党なんてのはどこにもいなくって、ターランが黒魔術で幻術を見せてたって訳か!」

「察しがいいねえ、ガーウィンの旦那。

ただ珠の在処ありかは分からねえモンだから、確認と称して持って来させる。持ってきたところで黒魔術を発動、いもしねえ蜥蜴に罪をおっ被せたってとこだな」

露見ばれちまっては仕方がない。者共、出合え。出合えーー!」

あるじを護らんと、ターランとサリバンの配下が魔術杖を手に手に構えをとる。

これに対抗してガーウィン、ラガン、スウベニルの配下も魔術杖を構える。

帝都を代表する魔術師達が真っ二つに分かれて激突の構え。

数は劣るが赤魔術は攻撃魔術の華と呼ばれておりますので余談を許さない。

どちらが口火を切るか?

空気は張り詰め緊張が走る。

「小僧、よくぞ我が黒魔術を看破ったな。名を聴いておこうか」

「クロモン卿配下にその人ありと知られる、駒鳥のロビンたあオイラの事よ!」

ロビンの口上を聞いて、あちらこちらとざわめきがおきます。

「誰だ?」「おまえ、聞いた事あるか」

クロモン卿の配下ですら首を傾げております。

それもそのはず、ロビンが捕方になってからまだ半月と経っちゃいない。手柄らしい手柄も立てちゃあおりません。そんな若造が大見栄を張ったところで誰も知っている訳がない。

「クロモンの、どう言う事だ?」

「ラガンの旦那、ロビンは知られているとは言ってませんや。知られると言ってまさあ」

「……つまり、これから知られるようになると」

「そのつもりなんでしょうねえ」

ネタが割れてもロビンは物怖じしない。

「その通り。これから名をあげるオイラの初手柄となるんだ。光栄に思いやがれ!」

「「「まだ手柄も上げた事のないヤツが偉そうにしてんじゃねえ!」」」

ごもっともで。

「野郎共、やっちまえ!!」

前に踏み出すロビンに向けて、サリバン配下の放つ魔術が襲いかかる。


南無三!


誰もがロビンの最期を覚悟しましたが、当のロビンは何処吹く風。平気の平左で立っている。

これには両陣営が目を見張る。

サリバン・ターラン陣営がもう一度魔術攻撃を行うが、やはりロビンには届かない。

「だから言ったろう? オイラには魔術まやかしは通じねえってよ」

そう言うや否や、ロビンはサリバン達の方へ駆け出しました。


「おい、クロモンの。

あれは一体どう言う訳だい?」

「あっしもよく知らねえんで。

リッつあん、オメエさん何か知ってるかい?」

「まあワシも原理は存じませんが、ビン坊は生まれついての魔法無効装置マジック・キャンセラーでやして。

ビン坊を中心に半径二間(約六メートル)程のところはどんな魔術も消えちまいますんで」

「つまり、ロビンがいれば向こうの魔術は効き目がないって事か」

「まあ、その通りで。ただ…」

リッつあんが続けて何か言おうとしてますが、ガーウィンは「この好機を逃すな」とばかりに攻撃を仕掛けます。


斉射!!


ガーウィン配下の魔術師軍団、杖を構えて一斉に魔術を放つ!

放たれ魔術はサリバン・ターラン陣営に向かい……消え失せました。

呆気に取られるガーウィン。

リッつあん、ガーウィンの肩を叩くと続きを語る。

「ビン坊が無効化しちまうのは、相手の魔術だけじゃないんでさあ、ガーウィンの」

「え……」

「ビン坊が絡んだら魔術は効かなくなっちまうんで、結局終いには肉弾戦ドツキあいになっちまうんでさあ」

長年研鑽を重ねた様々な攻撃魔術が消え去る様を目の当たりにし、ガーウィン、ラガン、スウベニルとその配下の魔術師軍団は落胆のあまり茫然自失。

「まあ、魔術とびどうぐが使えないなら人数の多い方が有利だよ、ガーウィンの……

ガーウィン? ガーウィンの旦那??

ダメだ、こりゃ。固まっちまってらあ。

おう、クロモンの」

「おうよ。総員、構え!」

練兵で慣らしたブンチの喝に、魔術師軍団ハッと我に帰る。

「掛かれ!!」

「「「御用だ御用だーーーー!!!」」」


帝都の誇る大魔道士と魔術師軍団が揃って居ながら、魔術が全く使えないモンですから、始まったのは子供の喧嘩。

そうなりますと、リッつあんの言った通り人数かずの多い方が優勢になるのが物の道理ってヤツですから、サリバンとターランの一味はだんだん追い詰められてくる。

追い詰められれば窮鼠も猫に被りつく。

「もはやこれまで! サリバン、やるぞ!!」

ターラン、サリバンに声をかけると二人は大罪の珠を懐から取り出した。

「待て、テメエら何をする気だ!」

「知れた事よ。魔力が上がると言うこの大罪の珠を体内に取り込み、我らが魔力を増大させてくれるわ!」

水を打ったような静寂が広がり、その場に集まった全員の目が大罪の珠に釘付けになりました。


大罪の珠を服んだら一体どうなるのか?

実のところ、服もうとしているターランとサリバンもおっかなびっくり。追い詰められちゃって自棄になってるだけで、本当は慌てて服む気はなかった。

全員が固唾を飲んで見守る中で、首を傾げる男が二人。

「リッつあん、アレどこかで見たような気がするんだけど……」

「ビン坊、オメエさんもかい。アレに似てるんだよなあ」

ロビンとリッつあん、当人達はこっそり話しているつもりですが、周りがシンと静まり返っているもんですから筒抜けになっている。

「……リッつあん、アンタあれが何なのか、心当たりがあんなさるのかい?」

このところリッつあんと話す機会が多かったラガンが恐る恐るの体で訊いてくる。

敵も味方も、全ての耳目が二人に集まります。


大罪の珠とはなのか? 

いかになるのか、事件の始末。

見事に咲くのか初手柄。

次回で宴の締めとなります。

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