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駒鳥(ロビン)捕物控  作者: つくも拓
跋扈するもの
15/18

狐火(六)

巫女に先導され退室する信太の女将と、ロビンとリッつあんの肩を借りて後に続くカイノ伯。

呆気にとられたまま見送るクロモン卿ご一行。

面で表情は分かりませんが、ホッとしたご様子のトウカ様。


「信太のおかげで貸しらしい貸しを作らずに済んだようだの。あやつには何かで報いてやらねば」

「・・・あのう、トウカ様」

「クロモン。皆まで言うな。カイノ伯にもそなた達へもなんらかの礼は致す。何もないでは後々しこりが残るし妾の沽券にも係わる。

カイノ伯は一筋縄ではいかぬ男ゆえ、どうすべきか悩んでおったのじゃ。信太のおかげで手綱がこちらに渡っただけ。

それなりの礼と、そなた達の名においてノレロの治安のために我が百万を数える眷属が手足となろうぞ」


一口に百万と申しますが、それは全国での話。ノレロだけならせいぜい千から二千。しかもノレロ限定の治安維持協力と、トウカ様もなかなかしわい。

しかし物は考え様でございます。

縄を打ってはみましたものの罪に問えるかはいささか微妙。別件逮捕だし、そもそも自らはストーカーから逃げようとしただけと言い張られると火の粉はヨウ・シムネに降りかかる。

何にも無しでトウカ様の御目見えと協力が得られる様になったと考えれば儲け物じゃあないか。

そう思い至ったクロモン卿、トウカ様に軽く目礼を。

トウカ様もそれに気づいて口角を上げる事で返します。


「ところでタマノ。そんな、そろそろ本格的に神職の修行に入ってはくれぬか?」

「申し訳ございません、当代様。

中途半端に道が途絶えたため、まだ踏ん切りがつきません。

いま暫くご猶予をいただけはしませぬか」

「やはりか・・・この身体でお務めを果たすのは結構キツくなってきたんじゃが」

「ゴメンね、おばあちゃん」


「「「「「おばあちゃん??!!」」」」」


「クロモンよ、そう言う訳じゃ。タマノは次のトウカの筆頭候補での。経歴に瑕疵きずを付ける訳には参らなんだのじゃ。くれぐれも多言無用ぞ」

「委細承知いたしやした。ここに居る者の胎だけに納めやす」

「タマノ。五年じゃ。それ以上はこの身が保たぬ。しかと心得よ」

「でも、どうすればいいか」

「案ずるな。このババに任せよ。

ヨシノ、クズノ」

「「ここに」」

「あの者はもう来ておるや?」

「「先程お見えになり、次の間にお通ししてございます」」

「これへ」


ヨシノ、クズノと呼ばれた巫女が連れてきた女性を見て驚いたのはヨウ・シムネ。

「母上!?」

件の女性は三つ指ついてトウカ様に深々と頭を下げる。

そのあとタマノに向かい、改めて頭を下げる。

「この度は当家の愚息がご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした」

上げられた顔を見てタマノは驚く。

シムネの母上と言う事はヨウ公爵家のご正室。そんなやんごとなきお方が…まさか…

「………一大地マリアさん?」

やっとの思いで声を絞り出すタマノに、奥方様はニッコリ。

「おや、あたしをご存知で?」

「あたし、貴女に憧れてアイドルを目指したんです!」

「それはそれは。嬉しいやらお恥ずかしいやら」


一大地マリア。活動期間は二年ほどだったのですが、その二年間の輝きは他の追随を許さない人気っぷり。

そのあと姿をくらませてしまい行方知れずですが、アイドルの草分け的な存在として伝説のスターでございます。

「あたしは元々家庭志向でね。可愛いお嫁さんになるのが夢だったんですよ。

それがスカウトされて。親の借金があったんで「身体を売るよりはいいか」位の気持ちでデビューして、どういう訳かあんなことに。

もう毎日怖くて怖くて。そんな中でシカタ様に見染められたんで。

芸能界には未練はないし、どちらかと言えば戻りたくなかったのでヨウ家の権力ちからで身をくらませた次第ですよ。

え?あたしのフアン?

もう皆んなあたしの事なんて覚えちゃいませんよォ」



いつもはそんな事をうそぶいておりますマリアですが、タマノの様に真っ直ぐな視線で真っ直ぐな憧れをぶつけられるとやはり少し面映い様で。


「タマノさん。愚息には二度とバカな真似はさせませんので。

また、前の事務所が頼れないならヨウ家がタマノさんをステージに載せて差し上げます。

あなたの人生を応援させて頂きます」

「ありがとうございます」

タマノは、保険の外交かと思いつつもここはしおらしく頭を下げる。

そこにドタバタと複数の足音。


「神前である! 無礼なるぞ!!」


巫女の止める声を無視して飛び込んで来た四人。

タマノの顔を見るなりボロボロっと大粒の涙。

「「「「ダッキー!!!」」」」

「み、皆んな?」

そこに現れたのはテールズの仲間たち。

「会いたかった!」「探したのよ」「どこに行ってたのよ」「何してたの」と口々に叫んでタマノを揉みくちゃにする。

「「「「会えて良かった!!!」」」」

事態を把握できず、タマノは昔の仲間の背を撫でる。

遅れて入ってきた壮年の男はよほど急いだのか膝に手をつきゼイゼイ言っております。

「ホンマにダッキーやあ…会いたかった、会いたかったでえ」

「社長?」





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