04話 御守り
「あ、おはよー千歳!体調大丈夫?」
「大丈夫だよ、ありがとう」
「あれ?何それ?ブレスレットかなんか?」
「え、あぁ、うん、そう」
「千歳って犬好きなんだ?」
「うん、まぁ、あはは」
昨日、交久瀬くんに送ってもらった時...
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「おい、美澄。」
「なに?」
「手、出せ。」
「手?はい。」
チャリン
「?なに?これ、犬の.....ブレスレット?」
「御守り。俺の式の力が少し入ってるから、もうアヤカシの瘴気にあてられることはないし、お前がアヤカシに襲われれば俺に伝わる。ずっと付けてろよ。」
「うん、分かった。ありがとう。」
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交久瀬くん、なんだかんだ優しいのかも。
《おい、美澄。》
「へっ!?」
今、頭に声が、
「びっ、くりした、急にどうしたの千歳」
「え、あの、今、」
《お前にしか聞こえてねーよ。慌てんな。頭の中で喋れ。》
「ご、ごめん、なんでもない。」
(頭の中?こんな感じかな)
《そう。そんな感じだよ。これから毎日、帰る時2階の特別教室の右の部屋に来い。休日出かける日は連絡しろ。》
(え、どうして)
《姉さんに言われたんだよ。毎日お前を家まで送ってけって。外に出かけてる時何かあったらお前の所まですぐ行けるようにどこ行くか俺に連絡しとけ。着いて行ったりはしないから。》
(わ、分かったけど....そんなに嫌なら断ればいいんじゃないの?)
《馬鹿かお前は。》
(なっ、馬鹿ってなに!)
《姉さんに逆らえるわけないだろ。化け物だぞあの人は。》
(化け物?あ、ていうか特別教室の)
《じゃーな、ちゃんと来いよ》
(ちょっ、)
ブツッ
人の話聞かない人だな.....そういう血筋なの?
「どうしたの?千歳」
「ううん、なんでもないよ」
2階の特別教室の右に部屋なんて、無いよね?
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「来てみたけど、やっぱり何も無い......」
スウッ
「え、と、扉が出てきた、」
「早く入れよ」
「あ、うん、」
ガチャッ
「何、この部屋」
「姉さんが作った。」
「文月さん?」
「そう。化け物なんだよあの人は。」
「何者なの?文月さんって、」
「化け物並の強さを持った人だよ。」
説明する気無いな....
「そ、そうなんだ......この部屋、どうして何も無かったのに急に出てきたの?」
「俺の影で隠してたからだよ。」
「影?」
「アヤカシと関係のある人間にしか見えないようにしてある。」
ガチャッ
「あれ?どこ、ここ」
「久瀬さん!?」
「あれ、美澄さん。どうしてここに?というかこの部屋、なんなの?」
「ここに入れるってことは、久瀬さんもアヤカシと関係のある人なの?」
「うん。そう。で、誰?この人」
「2組の久瀬さんだよ。」
「あ、あなたは、災いを呼ぶ伊織ちゃん、」
「その呼び方「そう呼ばれるの嫌いらしいからやめてあげてくれないかな!」
「あ、うん、分かった、」
「なんだよ美澄。割り込んでくるなよ」
「言い方がきついんだよ交久瀬くんは!もっと人に優しく接しないと!」
「はいはいわかったよ。善処するよ。で、あんた、最近変なことない?」
「変なこと、?そういえば、最近毎日、4時頃になると気が付くと校舎内のどこかにいて、それが2週間くらいずっと続いてて.....」
「2週間も!?」
「う、うん....」
「毎回違う場所なのか?」
「それが、日が過ぎるごとに、第3理科室に近づいてるの、」
「第3理科室って、」
「美澄。第3理科室がなんなんだ」
「知らないの!?第3理科室は今は使われてなくて、入ると呪われるって言われてるんだよ!」
「ふーん。呪い、ねぇ。ちょっと厄介かもな。」
「それで、昨日は、第3理科室の扉の前だったの。」
「え、じゃあ、」
「どうしよう、私、今日またあんなことがあったら、第3理科室の中に入っちゃう、」
「じゃあ、今日は私たちと一緒にもう帰ろう
!!ね!それなら大丈夫だよきっと!」
「い、いいの?」
「おい、何勝手に」
「いいよね!交久瀬くん!」
「はぁ......まぁ、いいよ。」
「やった!じゃあ、もう帰ろう!」
「ありがとう、美澄さん。」
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「それにしても、なんだったの?あの部屋。」
「いや、それは......ね、色々あるんだよ。ね!伊織くん!」
「あ?......おい、あいつどこ行ったんだよ。」
「え?久瀬さんならここに....え、いない!?どうして..........」
「ッチ、4時だ。第3理科室ってどこだ!」
「えっ、と、こっち!」
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「久瀬さん!って、な、に、この黒いの、」
「瘴気だよ。....あれが呪いなら、結構頑張らないといけないんだけど。」
「久瀬さん.....」
「美澄はここで待ってろ。」
「え、ちょ、交久瀬くん!」
(ど、どうしよう、交久瀬くんまで中に、)
「........あんなに真っ黒になるほど瘴気があるのに、全然体調が悪くならない。」
【千歳ちゃん。扉から離れて。】
「えっ、文月さん?」
【そうだよ。伊織が昨日君にあげた物を通して通信しているんだ。】
「これを通して.....」
【そう。伊織の事は心配しなくても大丈夫だよ。それに、その御守りを付けていれば、君は瘴気にあてられて気を失うことも無い。伊織はああ見えて強いからね。その式神の加護があれば、雑魚は近づいてすら来れないだろう。】
《ドガン!》
「えっ、」
「なんだよ、呪いじゃないじゃん。気合い入れて損したよ。せっかくこいつを呼んだのに」
『フ、フザケルナ、ヤットヨンダンダ、タクサンヨンデチョットズツコッチニチカヅケタノニ、』
「残念だったな。お前のところにはもう誰も来ないよ。片付けろ、夜叉。」
「あ、あれは.....」
【“鬼神”だよ。伊織は式神だけじゃなく、アヤカシやそういう類いのものを調伏し、従わせることも出来る。伊織の手に鍵があるだろう?】
「手首に付いているものですか?」
【そう。あれを使って呼び出すんだ。伊織は式神は言葉で呼び出し、調伏したものはあの鍵を使って扉から呼び出すんだよ。大抵の術師はああやって鍵を持っていて、それぞれの相棒を呼び出す。】
「そうなんですか......」
「終わったよ。」
「久瀬さんは!?」
「無事。もうすぐ起きるよ。」
「う、ん、ここは、」
「久瀬さん、大丈夫?」
「え、美澄さん、」
「ほら、動けるならさっさと帰るぞ。」
「あ、久瀬さん大丈夫!もう、あんなこと起こらないからね!」
「あ、え、と、ありがとう、ありがとう美澄さん!」
【伊織。】
「頭に話しかけないでくれよ。」
【昨日と今日で連続。それに、夜叉を呼び出したんだ。】
「あぁ、だいぶ疲れてるよ。それもこれも姉さんがあいつを守れって言うからだ」
【そう言っているけれど、ちゃんと守っているんじゃないか。満更でもないんだろう?】
「別に。」
【重ねているんだろう?千歳ちゃんと同じ“誘惑者”であった彼女と。】
「あいつは関係ない。」
【へぇ...........そうだ伊織。明日は仕事が入ってるよ。】
「なんでだよ、休日だってのに、」
【休日だからこそだよ。千歳ちゃんと行くんだ。】
「なんであいつまで」
【彼女はアヤカシを呼び寄せる。お前のお目当ても見つかるかもしれないよ】
「.......あぁ、もう、分かったよ。」
【仕事の細かい事については明日、榮が説明してくれるから。】
「分かった。」
【........ちゃんと千歳ちゃんのこと送っていくんだよ】
「分かってるよ!」