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迷宮が尽きる場所(2)

 仕事に戻れるようになるまでに、ジャンシールはさまざまな人と顔を合わせた。

 魔導の仲間たち、聴取にやってきた憲兵、おかみさんと一緒に大きなりんごパイを届けてくれたロロ……

 それから、迷宮の住人も。

「えらい無茶したな、猫。丸焦げになりかけたそうじゃないか」

と、寮の裏庭でホークは苦い顔をした。

 陽の下にまっすぐ立つ彼は、明るい町の景色によくなじんでいた。ジャンシールはそらとぼけてみせる。

「俺は知らないね、そんなこと言ったのはどこの誰だ?」

「小隊長から直々に聞いた。わしも現場まで行ったんだからな」

 礼拝堂の嵐が治まると、憲兵の詰所もにわかに騒がしくなったという。連行されていたホークは隊員にまぎれて教会に辿りつき、そして……


「女の子がいただろう」

 彼がぽつりとつぶやいた。

 ジャンシールはその横顔を見つめて思い返す。ランドレンに抱きしめられていた、命を失った小さな身体。

 あの晩、司教の手から離された亡骸を目にしたとき、ホークの直感が働いた。

「待ってくれ。その子の顔を……」

 よろよろと近づいてきた異相の老人に、遺体を運ぼうとしていた憲兵は黙って道を開けた。

 少女のまぶたは少しだけ開いていた。

 光の消えた瞳をじっと見つめてから、ホークは震える手でそれを閉じてやった。



「あんな形で同族に会うとは。あの子の半分か、そのまた半分はシェピの血が流れていたはずだ」

「そうか、シーダが……」

 ジャンシールは、肩を落としたホークのとなりで眉を下げてうなずいた。

 あの少女は、幼いころランドレンに拾われたと聞いた。

 本当の親は彼女を守りきれなかったのか、それとも捨てたのか。どちらにせよ、異人種の血は少女に過酷な運命を辿らせたことだろう。

「一言でも話していれば、何か変わったかもしれん。地下にもぐったのを悔いるのは最初で最後だ」

 シェピの老人が弱々しく首を振ると、ブルネリアンが背を叩いた。

「元気出せよホーク、あんたがしょぼくれちゃ店が(すた)る」

「ふん、どうせ開店休業だ」

 戻らないと知るものをなお探すように、海の瞳がエーテルを見上げた。

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