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瞳に終焉をうつして(4)

 シーダの命が尽きたのと同時に、消えかけていた光の塊が救いを求めるように石像の中へ逃げ帰った。

「くそっ、何てことだ!」

 ゼルガーが急いでアニスを助け起こす。

 急な変化に巨大な女神像が小きざみに震え、ピシピシと不穏な音を上げはじめていた。

「……いけない」

 惨劇に凍りついていたジャンシールの瞳が色を取り戻す。ランドレンはもう力を制御できないのだ!

 小さなヒビから放射状に光が漏れ出したのを見て、彼は本能的に声を張った。

「逃げろ、石像が破裂する!」

 不器用に鞍を下り、脚の痛みに耐えて走り出す。女神サイデアのもとへ。

「ジャンシール、一体なにを!?」

 アニスが悲鳴まじりに叫ぶ。震動がふたたび礼拝堂を揺さぶり、大きな木材が落ちてきた。ゼルガーが彼女を壁に押しやる。

「仕方ない、奴にまかせるぞ! お前も来いランドレン、ここで死なすわけにはいかん!」

「死……?」

 司教は少女の亡骸をかたく抱いたまま立ち尽くしていた。その背をゼルガーが強引に押し、疾風号がアニスのもとへ跳んでくる。


 ジャンシールは無我夢中で台座によじ登った。

 乳白色の石は内に満ちるエーテルのせいで火傷しそうなほど熱い。人に許される度を越えた、あまりにも大きすぎる力を全身に感じる。

 女神像を見上げた瞬間、その微笑みに亀裂が走った。

 彼はとっさに右手を当てた。身体を媒介にして、エーテルを自然に(のが)す。それしかない。



 手に力を込める。しかし、暗く重いものが彼を止めた。

 ……できるのか、この俺に。

 素質の大半を奪われ、もうわずかなエーテルしかとらえられない。優れていたギルーでさえ裂傷を負ったなら、手を失うだけでは済まないかもしれない。

 失う。

 失った、エーテルの流れを。

 今の俺は、何なのだろう?



 緑の目が惑いさまよったその時。

 ジャンシール、と誰かが呼んだ。声の主を見つけ、彼は少しだけ頬を緩ませた。

 そうだった。俺はあんたの相棒だ。

 そんなに泣くなよ、全部うまくいく……!



 ブルネリアンの魔導士が、片手を高く天へ伸ばした。



                        (第六章 了 )

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