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滅びの光明(1)

「どうした、止めてみせろよ。お前の信じる正しい魔導で!」

 ノーリックがあざ笑った。

 彼が手をなぎ払うたびに細い雷光が生まれる。回廊に光の矢と乾いた破裂音がそそぎ、ジャンシールたちは退路を断たれて逃げ惑った。

 疾風号も長い首を下げて必死に駆け回る。彼は初めて目にする熱い光に怯えていたが、次第にものすごく腹が立ってきた。

 あの偉ぶったカミナリ男、赤服よりも気に入らない!

 竜は辛抱づよく機をうかがい、やがて見きわめた。いいところに走り下がってきたゼルガーを、激しい頭突きで前に送り返す。

「うわっ!?」

 声を上げてつんのめった彼に、ノーリックが「無様だな憲兵!」と向きなおる。その手が宙に上がる、一瞬の隙……

 ぐっと身を沈ませた疾風号が、力のかぎり跳躍した。


「何……」

 飛び上がった大きな影に気をとられ、ノーリックが天井をあおいだその矢先。ヒュッと空を裂いた(うろこ)の尾が、彼を横殴りにした。

「ぐあっ!?」

 胸をはじかれて倒れ込んだ彼を、駆け寄ったジャンシールがすかさず押さえつけた。

「ゼルガー、早く!」

「あいつ、いま俺を(おとり)に……!?」

 彼は釈然としないままノーリックを縛り上げていく。その後ろで、壁を蹴って着地した疾風号が得意げに首をふるった。

「魔導庁に連行しよう。隊も揃っていることだ」

とゼルガーがようやく息をつき、額をぬぐう。

 友人を引き起こしたジャンシールは、「この馬鹿!」と悔しげに背中をたたいた。


 すると、顔を伏せていたノーリックがくつくつ笑い出した。

「……馬鹿はどっちだろうなあ、ジャン。俺と遊んでどれだけ時間を無駄にしたと思う?」

 疾風号が鋭い鳴き声を発し、ジャンシールとゼルガーはハッと顔を上げた。

 開け放たれた礼拝堂の最果(さいは)て。

 女神の面前に、もうひとつの影が現れていた。幻と見まがう白い姿。しかし、影は確かな声を持っていた。

「迷いし者に星明かりを。嵐の夜をも越える、強き祈りの翼を」


 純白の衣をまとったランドレン司教が、渦巻くエーテルの彼方で静かに彼らを迎えた。



「司教様……!」

 ジャンシールは危険も忘れて前に歩き出した。

 ゼルガーが「よせ!」と急いで引きとめる。礼拝堂に踏み入った二人と一頭へ、司教は遠くから微笑みかけた。

「夜も深いですね、皆さん。猫魔導士さんはまったく元気がいい。ゼルガー小隊長、あなたは大事な規則を破ってどうされたのです?」

 教えを説くときと何ひとつ変わらない、優しい声。女神像から染み出すエーテルの光が、整った顔に美しい陰影を与えていた。

 制帽をかぶりなおしたゼルガーが負けじと顎を反らす。

「緊急事態なのでな。お前たちのケチでくだらない企み、何としてでも阻止せねばならん」

「ああ、ひどい言われようだな。女神サイデアも嘆かれるでしょう」

と、司教は穏やかに苦笑した。


 ジャンシールはごちゃごちゃになった頭を抱えた。

「司教様、どうしてです。どうしてあなたがエーテルを操る必要があるんですか!」

「魔導士でもないのに、と? 忘れたかな、かつては私も三角頭巾の卵の一人でした」

 答えるランドレンは楽しそうだった。

「しかしあなたは、人を救う神の道に……」

 ここでジャンシールは気づく。

 魔導を志していたランドレンが、道を変えた理由。

「そう、素質が高いほど衰退の危険も大きい。魔法等級を研究する中でわかってきた…… 私をごらんなさい。その生きた事例が、ここにあるのですよ」

 司教はみずからの胸に手を置き、まぶしいくらいの笑みを二人へ向けた。

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