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再会(1)

(第六章 導入)

囚われた部屋から脱出を試みるアニスだが、聖堂の少女シーダに足止めされしまう。

一方、ジャンシールとゼルガー、そして疾風号は異変の中心であるセレスタン教会へ向かう。彼らの前に現れたのは、姿を消していたノーリックだった。

「ノーリック…… どうして、この場所に?」

 ジャンシールは、張りつめた面持ちでゆっくりと語りかけた。

「探したか? 俺はずっとここにいたさ」

 友人の気さくな態度はこの夜から奇妙に浮き上がっている。

「なあジャンシール、悪いが出直してくれよ。サイデア様のご機嫌を取るので忙しいんだ、わかるだろう?」

 ノーリックがマントの裾を上げ、後方を示した。礼拝堂の奥に見える巨大な像…… 二対の翼を広げた女神が静かに彼らを見下ろしている。

 その微笑みは、嵐のように荒れ狂うエーテルに取り巻かれていた。


 ゼルガーが剣をかまえつつ進み出る。

「あれが貴様の宝物庫か、ノーリック・ザム。溜めこんだ力でどんな大魔法を使うつもりだ?」

「おっと、うかつに寄るなよ小隊長。俺の仕事が終わるまでは大人しくしてもらおう」

 ノーリックが口の片端をつり上げ、肉づきのよい頬に鋭い影が寄る。

 違う、とジャンシールは感じた。あれは自分が知っているノーリックではない。これまでにない歪んだ自信が彼をつき動かしている。

 サイデア像に目を走らせると、乳白色の翼それ自体がほのかに光を放ち始めていた。ろうそくや光石のやわらかい明かりをおおい隠し、不穏な輝きが広がっていく。

「ゼルガー。俺たち、とんでもないものを見るぞ……」

とジャンシールが引きつった瞬間、入口に立ちはだかったノーリックが片手を天に挙げた。



 冴えた空気に稲光が走った。

「何っ!?」

 回廊全体が青白く照らされ、弾ける光が一直線にゼルガーを狙う。

 間一髪で避けた彼は、「ジャンシール、退()け!」と叫んだ。光熱の矢がかすめたマントから焦げた匂いが立ちのぼる。ジャンシールは疾風号を出口の方へ押し出し、慌てて壁ぎわに寄った。

 ノーリックが腹を抱えて笑う。

「そう怖がるなって! ちょっと披露しただけだ、邪魔しなければ脅かさないさ」

「い、今のは何だ!?」

 身を低くしたジャンシールが声を張り上げると、友人は「力だよ!」と楽しそうに両手を広げた。

「といっても、完成にはもう一歩だけどな。そうだ、お前もこっちに来いよジャンシール! 最高の魔導士として歴史に名を刻めるぞ」

 ノーリックが熱に浮かされた目を輝かす。強く睨み返しながら、ジャンシールは「どういうことだ」と尋ねた。



 鋭い問いかけに、友人の高揚は少し抑えられたようだった。表情を引き締めて声をひそめる。

「これは新しい魔導の一大研究だ。協力すれば素質が“受け取れる”」

 離れて身構えていたゼルガーが「何だと?」と眉をひそめた。ノーリックはそれに答えず、魔導士だけに語りかける。

「……知ってるだろう、ジャン。俺は商売が好きじゃない、家業を継ぐなんて真っ平ごめんだ。たが親父を納得させるだけの才もなし、さあどうすれば救われる?」

 確かに、彼は何度も催促(さいそく)されていた。

 しかしそのたびに明るく笑い飛ばし、あるいは愚痴を言いつつも退(しりぞ)けていた。魔導とイェリガルディンを愛している、それこそがノーリックだと思っていた……

 今この時までは。


「ここに答えがあったんだよジャンシール。得た力で黙らせればいいんだ」

 彼の声から親しさは消え去っていた。ジャンシールの口がひとりでに動く。

「それが魔導だっていうのか」

「正当だとも」

 素早く打ち返したノーリックがひときわ険しい表情に変わる。

「そう、ごく自然な欲望だ。偉大な力を前にすれば求めずにはいられない…… 高尚ぶっても無駄さ、あのギルーでさえ同じだったからな!」

 ほつれた髪の下で、道を外れた両の目がぎらりと光った。

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