表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/78

犠牲と消失(2)

 ジャンシールとアニスは、最後までギルーの顔を目にすることができなかった。

 彼は顔を失っていた。

 郊外の平野の片すみで、おこした焚き火にのめり込み倒れていたのだ。


「夜警が気づいて火を消したが、上半身が広く焼けている。素人は見ないほうがいい、お前もだ」

と、ゼルガーが騎竜兵へ首をしゃくる。アニスは険しい視線を返して尋ねた。

「ギルーだという証拠は?」

「骨格、衣服所持品。その他身体的特徴も合致している」

 現場に立つ三人の足もとには浅く掘られた穴があり、燃えつきた木切れが風に煽られている。ゼルガーの部下たちが野次馬を追い払いながら地面を調べていた。

「犠牲者が出た以上、この件は我々が取り扱う。お前たちは今度こそ切り上げろ。聞いているのか?」

 凄まれたジャンシールはハッとして顔を上げた。アニスがそっと肩に触れる。

「戻りましょう、魔導庁へ」



 ギルーの帰還は、すでに町中に伝わっていた。

「人が燃えていたって?」

「魔導士だそうだ。何て恐ろしい……」

 低いざわめきを耳にしつつ二人は足を速めた。アニスが前を見たままつぶやく。

「手を引きますか?」

「まさか。 ……まだ何もできてない」

 ジャンシールが悔しげに口を引き結んだとき、教会の裏口からランドレン司教が慌しく出てくるのが見えた。


 犠牲者に祈りを捧げるため、憲兵隊に呼ばれたのだろう。彼の横顔は痛ましげで、ジャンシールは責められているような気持ちになる。

 脅されて足踏みしている暇はなかったのだ。ギルーが姿を隠した目的が何であったにせよ、先に見つけていればこうならずに済んだ……

 彼の後悔を感じ取ったのか、アニスが小さく言った。

「ともに歩みましょう。謎のすべてが尽きるまで」

 彼女の実直な言葉は、うつむきかけたジャンシールに静かな力を与えた。

「あんたと一緒でよかった」

と返す表情に笑みはなかったが、緑の目は先を見据え直していた。



 だが、その日の騒ぎはまだ終わらなかった。

「お、おーい!」

 庁舎の門をくぐった彼らのもとへ、ひょろ長い三角頭巾が駆け寄ってくる。

「ピオ、どうした!? 真っ青じゃないか」

とジャンシールが驚く。その両肩をつかんだピオは、震える口で懸命に尋ねた。

「ノ、ノーリックに会わなかった? どこにもいないんだよ、消えちゃったんだ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ