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御手の導き(2)

 またあいつか……

 と、ジャンシールは心につぶやいた。

 無駄な気力を使いたくない。縦に長い相棒に隠れようかと思ったが、目ざといゼルガーに逃げただの何だの騒がれるのも(しゃく)だ。

 なるべく道の端に寄って、何気なくすれ違おうとしたのだが。


「おい、そこっ!」

 この男はなぜ一言目から怒っているのか。

 ジャンシールは心底うんざりして立ち止まった。立派な黒馬が蹄鉄(ていてつ)を鳴らして歩み寄り、騎手の鋭い目が見下ろしてくる。

「何をしている、ここは第二区だぞ。お前たちがうろついていい場所ではない」

「だから仕事だって、この前も言っただろう」

 じろりと相手を見上げる様子で二人の間柄を察したのか、アニスが一歩前に出た。


「調査の一環です。バーナディー邸を訪問しましたがお会いできませんでした。これより中心へ戻ります、ゼルガー小隊長」

 まるで部下のような報告に、ゼルガーは「ああ、お前が例の……」と拍子抜けして彼女を見た。

 いつだったか、枯れきった騎竜隊に若い女が入ったと聞いてはいたが、まともに顔を合わせるのは初めてだった。

 冷静で思慮に富む、青灰色の瞳。そう役立たずでもなさそうだとゼルガーは考えを改める。

 だがこの組み合わせは気に入らない。彼は皮肉に口の端をつり上げた。

「竜の代わりに領民を引く、か」

「我々は協力しています」

 彼女が落ちついて答えると、ゼルガーはつまらなさそうに顎を反らし、言葉を残さずに道を進んでいった。

「行きましょう」

 何もなかった、というようにアニスがうなずきかけてくる。

 そして、身を震わせるジャンシールを留めていた手で、そっと背中を押し出した。その小さな動きは彼を温かい気持ちにしたのだった。



 二人が上手くやれているのはいいが、バーナディーに会わねば困るということに変わりはない。

 魔導士の必死な表情を読み取ったのか、さんさんと光を浴びるランドレン司教が「それならば」と拳で胸を叩いてみせた。

「私から頼んでみましょう。今日のうちに手紙をやりますよ、どうかあなた方に応対して下さるようにと」

「えっ、よろしいんですか!」

「ふふふ、私だってたまには役に立つでしょう。法衣を汚して説教をくらっているだけではないのですよ……!」

 不敵に微笑むランドレンは神の徒にしてはガラが悪そうに見えたが、そんなことは問題ではない。両手を握りしめながら御姿を仰ぐ魔導士を、道行く人が不思議そうに眺めていた。

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