表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/78

竜の遠雷(1)

 三十から(ゼロ)


 ギルーが残した謎の言葉を聞いたアニスは、

「量、回数、それとも温度……」

とつぶやいた。

「そう、何かの数。それが失踪の理由に関わってると思うんだ」

 ジャンシールも考え込む。休息日の翌日、二人は冷たい小雨の中を歩いていた。

 単身で聞き込みをしたと白状されたアニスは、「手がかりが見つかってよかったですね」と平板に片づけたが、その内容には興味を示したようだった。

「ローザングラスに数字と、ギルーの身辺が怪しくなってきましたね。モロワ所長は何と仰ったのですか?」

「すっかり心配してる、悪い話が隠れてるんじゃないかって。確かにそういう魔導士ってのはゼロじゃないんだ、残念ながら」

と相棒を見上げる。


 アニスがまばたきをして記憶を探った。

「以前、王都の方で事件がありましたね。でたらめな魔導をかかげて寄付を集めた組織が、大金ごと消えてしまったとか……」

「もっとせこい悪事もある。俺の最初の任地では、裏金をもらって畑の水量を増やしてたやつがいた。エーテルで水を押すだろ、それでちょいちょいってね。みみっちくて嫌になる」

 アニスは思わず相棒を見下ろした。深くかぶったフードの中、ほの白い顔に意外そうな表情が浮かんでいる。

「イェリガルディンの前はどこに?」

「ずっと西の、カヌっていう町。知ってるか?」

「産業に乏しい僻地(へきち)ですね」

 正確な知識だ、とジャンシールが笑った。

「その僻地の水が合わなくて、二年もしないで逃げ出した…… おっと、そこだな。竜は大丈夫かい」


「ええ、ここに」

 騎竜兵がマントを持ち上げると、青い制服の腕に(くろがね)色の生き物がしがみついて

いた。

 肘のあたりに丸い頭を据え、ぼってりとした尾がアニスの手からはみ出すほどの大きさ。急に冷え込み出したとあって、ひもに通した熱石を背負い身体を温めている。

「よ、よろしく頼むぞ遠雷号」

 ジャンシールが恐々のぞき込むと、芥子(けし)の実の粒のような目が見上げてきた。

「怒らせなければ噛みませんよ。ただ、胴のふちの(うろこ)が爪のように硬いので気をつけてください、削っていますがすぐ伸びるんです。さあどうぞ」

「あっいや、俺は持たなくていいんだ。本当に……」



 大人しくなったジャンシールを、アニスはそっと観察する。

 よくはずむ(まり)のような男だと感じていたが、カヌの町から逃げてきたと語った声には今までにない(かげ)りがあった。

 詳しく聞いてみようかと思った時、

「行こう」

と魔導士がうながし、彼女は口をつぐんで従った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ