王様の憲兵隊(2)
淡い色どりの町に赤の風が走るとき、それは憲兵隊である。
彼らはリートスク国王直属の名に恥じない仕事ぶりで国の治安を保っている。しかしその誇り高さゆえに民とぶつかり合うことも多いのだった。
リート人から外れる者に対してはことさら強気だ。ジャンシールはゼルガーの憎々しい顔を思い、語気を荒げる。
「まったくあの赤フクロウめ、虫食いリンゴで頭を打っちまえばいいんだ!」
「そんなこと言ってるとまた目をつけられるよ。ほらほら、わが家にご到着」
ピオが笑い、二人は揃って魔導庁を見上げた。
白や灰色の石造りの、半円形の庁舎。
たくさん並ぶ窓は曲線彫刻でふんだんに飾られ、女神の使徒たちが星の合間を飛ぶ。
光石が灯る中を三角頭巾が行き交い、そこにエーテルの流れ込んだ光景は、たそがれに包まれて謎と秘密をはらんでいた。
「重なった」
と、二つの流れを目で追うピオがつぶやく。
エーテルは自然の営みからこぼれ出る不思議な力。
それに触れ、日々の暮らしに少しを借りるとき、魔導士たちはちっぽけな個を越えた悠久の脈を感じている。
その広がりと繋がりこそ、いつだって忘れてはいけない魔導の礎だった。たとえ向かっ腹が立った時でも。
ジャンシールは恥ずかしそうに言った。
「助かったよ、ピオ。所長に会ってこよう」
「あーもう帰ってるよ」
「うん!?」
あっけらかんと言ったピオにびっくり顔を向ける。
「孫の誕生祝いにでっかいケーキを焼かなきゃってね。君って本当に信じやすいねえ!」
「何だ、そういうことか……」
と頭を掻く友人を見て、ピオが明るく笑った。
「さあ、籠を返せば終わり。みんなで何か食べに行こうって言ってるんだけど、君も来るよね?」
寮に戻って調査指針を考えようとしていたジャンシールだが、腹ごしらえも重要だなと思い直した。嫌なゼルガーとも会ってしまったことだし、気持ちを盛り立てたい。
「ああ行こう。ただし俺は禁酒だ」
「よーし、その決心が何秒もつか数えてあげよう。隣で大いに飲むからね!」
彼らは背を叩きあって石の回廊を歩いていく。通り過ぎる窓に宵の気配が降り始めていた。
(第一章 了 )
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次話より第二章に入ります。




