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エンジェル・リード  作者: 宝積 佐知
エピローグ
123/123

あとがき

 前作【Ace in the hole. ー最後の切り札ー】のスピンオフとして書き始めましたが、明るい話を目指したのに、前作が暗い&重いので、グレーなお話になってしまいました。


 ほっこりするライトなお話が書きたいです。




 ー本編についてー

 物語の本流は、天神侑の再起と日常です。

 それから、エンジェル・リードの補強。

 侑の過去を考えると、争いは好まないと思ったので、湊や航がトラブルメーカーになってしまいました。


 侑は、湊や航のような子供に幸せでいて欲しい。

 湊と航は、侑が心から幸せな未来が見たい。

 彼等の夢は叶っているのですが、その本質は『続いていくこと』なので、変化に対して過剰反応する。


 物語が長くなってしまったので、湊とムラトのポーカー勝負に落ち着きました。




 ーエンジェル・リードについてー

 若い芸術家に資金投資する個人投資家という設定を、完全に持て余していましたね。

 元々、エンジェル・リードは湊が新の為に作り上げたものなので、最終目的というものが曖昧だったのだと思います。


 湊にとって、エンジェル・リードは夢であり、墓でもあった。だから、捨てられない。生きる術であり、心の拠り所でもあったから。侑もその気持ちは痛い程に分かるので、辞めちまえとは言えなかった。


 終章で、航が方向転換を図ってくれたのは、湊と侑にとって本当に嬉しかったでしょうね。

 彼等はこの先、カフェでもトラットリアでも経営しながら、他愛のない日常を積み重ねて行くのでしょう。それが彼等の願いで、祈りだったから。




 ーVSムラトー

 獅子身中の虫ですね。エンジェル・リードにとっては扱い難い上客で、格上の相手。最後は湊とポーカー勝負で終わりました。勝敗を分けたのは、湊や侑が生身で関係性を築き、困難を自力で乗り越えて来たことでしょうね。




 ー登場人物についてー


 ■天神侑(26)

 元国家公認の殺し屋で、現在はエンジェル・リードの窓口係をしている。金髪碧眼の優男だが、超人的な身体能力を持っており、近接戦闘では最強と呼べる実力者。

 過去に人体実験を受けており、脳に爆弾を抱えている。現在のところは湊の開発した薬で効果は抑えられている。

 忠信高く無欲な姿から、湊や航はサムライと称している。



 ■蜂谷湊(19)

 エンジェル・リードのボスで、他人の嘘を見抜く能力を持っている。見た目は天使のような美少女だが、男。基本的には裏方の頭脳労働なので、喧嘩や戦闘になると大抵の場合は負ける。作中のポジションが墓守なので、いつも少しだけマシな結末を用意する。

 イメージはヤドクガエル。見た目は綺麗だけど、猛毒がある。



 ■蜂谷航(19)

 湊の双子の弟で、ニューヨークの大学に通っている。几帳面な性格なので、日々を丁寧に送る。人間関係で挫折した過去があるので、捻くれ者。バスケットボールのクラブチームに所属している。趣味は料理、バスケットボール、バイク、登山など。超感覚的知覚能力を持っている。

 イメージはロシアンブルー。懐く相手を慎重に選ぶ。



 ■神谷翔太(22)

 ハヤブサの弟子であり、見習いの殺し屋。

 翔太の過去については前作をご覧下さいませ。

 御人好しで真面目。湊とは友達であり、何かと世話を焼いていたので侑に『番犬』と呼ばれている。

 イメージはゴールデンレトリバー。



 ■立花蓮治(26)

 裏社会の抑止力、最速のヒットマンと称される殺し屋。凄腕のスナイパー。

 無愛想、ぶっきら棒で口が悪いので、湊や侑とよく喧嘩になる。特に、侑とは犬猿の仲。湊の元飼い主。物語の中で、立花だけが違う視点から見ている。



 ■ムラト=アル・ラフィティ(19)

 熱砂の国の大富豪、その長男坊。ローマングラスのような美しい青い目を持つ。

 陽気な青年であるが、ピエロを演じられる切れ者でもある。

 幼い頃から暗殺の危険に晒されて来た。目的の為なら手段を選ばない冷徹さを併せ持つ。



 ■アーティラ(19)

 ムラトの従者の少女で、争いの無い平穏な世界に憧れている。ムラトに向ける感情が恋慕なのか憧憬なのかは、彼女自身も分からない。武器の類を使い熟し、敵対勢力を殲滅する。雇い主である湊と対等な侑に嫉妬と羨望を抱く。



 ■バシル・イルハム(19)

 熱砂の国出身で、飛び級でニューヨークの医大に通う医学生。父親は赤い牙と呼ばれる過激派組織の主導者であったが、本人は何も知らなかった。無知な善人。




 ー各話ー


 1.水底のマグマ


「俺は正義も悪も信じない」

 ⑹掃き溜め 天神侑


 或る日、都内で拳銃を使った殺人事件が起こる。

 犯人の目的や正体も不明のまま、連続銃殺事件へと変わって行く。

 そんな中、捜査一課の坂田冬馬は、本部長から指令を受け、事件解決の為にエンジェル・リードの元を訪れる。


 ーーーーーーーーーーーーー

 部外者から見たエンジェル・リードの胡散臭さを描きたかったんですよね。その為には普遍的な正義の人が必要だと思い、坂田を一時的に登場させました。




 2.十字架の所在


「命に替えても守るよ」

 ⑶家族 天神侑


 事務員を雇いたいという湊と提案で、エンジェル・リードは南方花という若い女性を受け入れる。事務経験の無い元保育士という肩書きと湊の提案を不審に思った航は苦言を呈する。


 ーーーーーーーーーーーーー

 念の為に言っておきますが、職業に対する偏見はありません!

 航に比べると、湊が悪人なんですよね。しかも、かなり悪どい詐欺師です。けれど、湊が何もしなかったら、もっと最低で救いのない結末を迎えていたのではないかと思います。




 3.熱砂の宝玉


「愛や信頼をお金で買うことは出来ないけど、投資することは出来る」

 ⑽山札のエース 蜂谷湊


 アラブの大富豪ラフィティ家の長男、ムラトが来日する。エンジェル・リードは案内と護衛の依頼を引き受けるが、ムラトには或る目的があった。


 ムラトの目的とは、身分階級を撤廃する為のクーデターだった。夢物語だと苦言を呈していた湊と侑だったが、謎の武装組織から襲撃を受ける。

 ーーーーーーーーーーーーー

 ムラトは獅子身中の虫ですね。切り捨てるにはリスクが高く、受け入れれば飲み込まれる。エンジェル・リードというよりも、湊が乗り越えるべき壁ですね。




 4.殺し屋たちの奇想曲


「忘れない為だよ」

 ⑽追悼 蜂谷湊


 繁忙期に侑がインフルエンザに罹り、湊は仕事に忙殺されていた。睡眠不足と疲労困憊で飲食店へ出掛けた湊だが、提供された食事に毒を盛られたことを知る。


 スネークと呼ばれる殺し屋のギルドから命を狙われていることを知った湊は、友達の助けを借りて窮地を脱する。その騒動の背景には、侑の過去が関わっていた。

 ーーーーーーーーーーーーー


 湊も侑も人殺しが好きな訳ではないけれど、身に掛かる火の粉は振り払う。二人の関係を語るには、天神新を抜きには語れないと思ったので書きました。




 5.誰が駒鳥殺したの


「俺は赦しというものを知っているけど、報復することも知っている。君達は、罪には罰が下ることを身を以って知るべきだ」

 ⑼以毒制毒 蜂谷湊


 都内の進学校で女子生徒がイジメにより自殺した。

 エンジェル・リードは或る事情からイジメの実態調査を行うことになり、友達の殺し屋と共に高校へ潜入調査をする。


 誰が少女を殺したのか?

 エンジェル・リードは目に見えない怪物に立ち向かう。

 ーーーーーーーーーーーーー


 これは賛否両論かなと思いながら、恐々と投稿した覚えがあります。エンジェル・リードは正義の味方ではないので、このくらいはやるかな、と。




 6.毒と薬


「雨の日に傘を差すのは、悪いことじゃないぞ」

 ⑽飼い主の責任 立花蓮治


 裏社会の抑止力と呼ばれる殺し屋、立花の元に或る科学者の暗殺依頼が出る。調査を進める内に、立花はその科学者がエンジェル・リードと深い繋がりを持つことを知る。


 最速のヒットマンVS元国家公認の殺し屋。

 血を血で洗う復讐か、サレンダーか。


 日の当たらない社会の闇で、エンジェル・リードは決断を迫られる。

 ーーーーーーーーーーーーー


 立花は、湊の元保護者ですね。ただし、善人ではないので容赦無し。エンジェル・リードが暴走したら、真っ先にやって来る殺し屋です。


 エンジェル・リードは無敵じゃないし、完璧でもない。

 近接戦闘なら侑が勝つでしょうが、事前の準備をされたら立花が勝つと思います。その性能差を埋めたのが、彼等の関係性だったのでしょうね。




 7.自殺志願者


「死が救いだなんて、絶対に違う!!」

 ⑽未熟な勇気 バシル・イルハム


 ニューヨークに暮らす航の元に、怪我を負ったエンジェル・リードの侑が訪れる。療養の為の休暇期間を穏やかに過ごす二人だったが、界隈で起きる未成年者の失踪事件に巻き込まれる。


 事件は連続猟奇殺人へ発展し、身元不詳の侑は警察に疑われてしまう。


 犯人は何者なのか、目的は何なのか。

 二人は、ジャンクマンと呼ばれる殺人鬼の正体に迫る。


 ーーーーーーーーーーーーー


 バシルは、無知な善人として書きました。

 航の友達ならば、きっととんでもなく御人好しだろう、と。

 侑の戦闘シーンが書きたかったんですよね。ヒーローは遅れて登場する、みたいな。




 8.彷徨う刃


『解釈するしかない。少しでも救いのある方にね』

 ⑼因果逆転 蜂谷湊


 怪我の療養の為にニューヨークを訪れた侑は、美しいナイフを見付ける。


 それは呪われたナイフとして数々の悲劇を引き起こして来た。エンジェル・リードは呪いの真相を確かめる為に調査を始めるが、其処には恐ろしい事実が隠されていた。


 ーーーーーーーーーーーーー

 因果逆転はいつか書きたいテーマだったので、満足です。

 翡翠はトリックスターですね。悪意のない殺意、真の邪悪。


 侑は、審美眼はあるのでしょうが、好戦的で、たまにとんでもないものを掘り出して来てしまいますね。航は慎重な性格なので、大らかな侑とは結構良いコンビなのかも知れません。そして、二人が行き詰まった時に打開してくれるのが湊だと思います。




 9.夜空に光る


「この不平等な世界にも、差し伸べられる正義はある」

 ⑽地上の星 常盤霖雨


 エンジェル・リードの湊は、帰り道に謎の剣道家に襲撃される。生きる世界と価値観の違いから相互理解不能のまま、湊は叩きのめされてしまう。


 その頃、イジメにより女子高生が自殺したとして、加害者が刑事裁判に掛けられる。裁判に提出された証拠がエンジェル・リードの調査結果であったことから、湊は加害者側の弁護人と討論になる。


 罪と罰、更生と未来。

 正義とは何なのか。


 ーーーーーーーーーーーーー

 加害者が裁かれるならば、エンジェル・リードも同様なのではないかと思い、書きました。


 湊は頭脳労働が主なので、戦闘になったら大抵の場合は負けます。本当は、意地っ張りでプライドが高い人なのでしょうね。そのお蔭で生き残って来たので、簡単には譲れないでしょう。


 当たり前に味方でいて、助けてくれる侑の存在は心強かったでしょうね。




 10.君の手


「血塗れの手でも、未来は描けるよ」

 ⑺未来を描く 蜂谷湊


 中国マフィアから救援を受け、エンジェル・リードは龍の巣へ踏み込む。


 黒社会の総本山、青龍会の総帥は湊の大学時代の友達だった。青龍会内部の裏切り者探しに協力する中、侑は自分の手がどうしようもなく汚れていることを悟る。


 明るい未来を掴む為に、エンジェル・リードは或る選択をする。


 ーーーーーーーーーーーーー

 これが本編で一番危険な取引ですね。

 湊とリュウは、対等な友達として書きました。互いに立場があって、プライドがある。けれど、等身大の自分として話し合って、窮地には保身も考えずに助けに行くような関係。


 侑はリュウではないし、そうなる必要もない。

 侑の湊に対する見方が変わったお話。




 11.ダイヤの原石


「夢の終わりなんて見たくない!」

 ⑺リスタート 蜂谷湊


 春休みに来日した航は、二人の若い芸術家に出会う。

 彼等の才能はダイヤの原石だと確信したエンジェル・リードは、投資することを決める。


 一方、中東の大富豪の長男であるムラトは海外の過激派組織に命を狙われ、エンジェル・リードに救援を求めてやって来る。


 ーーーーーーーーーーーーー

 原点回帰で、エンジェル・リードの活動。

 彼等は、努力している人が好きなんでしょうね。その結果に関わらず。夢が叶う瞬間が見たいだけ。


 新の生涯というものは、美化出来ないけれど、否定も出来ない難しいものだと思います。だから、松雪のことを突き放せなかった。そういう時に道を切り開いてくれるのは、航なんでしょうね。




 12.羅生門


「どうぞ、お好きな地獄を」

 ⑽フーダニット 蜂谷湊


 世界の裏で何が起きているのか知る為に、エンジェル・リードは中東にある熱砂の国へ向かった。フィクサーの一人とされる大富豪と対峙し、エンジェル・リードは宣戦布告をする。


 ーーーーーーーーーーーーー

 物語が長くなってしまったので、一旦終了。

 急ぎ足で纏めたので、とっ散らかっていますね。


 ハイジャックされた時、湊はアドレナリンがドバドバなので痛みを知覚していない。目の前で刺されまくっている湊を見た侑のショックは計り知れないですね……。


 ムラトやバシルと和解するエンドも考えていたのですが、それはこの物語としての敗北ではないかと思い、そのままにしました。

 何度か書き直したり、加筆したりしましたが、此処で譲らないのが湊かな、と。




 終章

 飛ばない鳥


 ーーーーーーーーーーーーー

 飛べない鳥は不幸だなんて、勝手に決めてはいけない。


 侑はどうにかしてやりたいと思うことが多かったのですが、湊も航もそんなことは求めていない。

 湊は目の前のたった一人を救うだけのヒーローで、航は手を掴んだ相手を支えてくれるヒーローなのだと思います。そして、頼るべきものが失くなった二人にとっては、側で守ってくれる侑もヒーローだったのではないでしょうか。





 作品を読んで下さり、また登場人物を愛し、私の拙い創作活動を支えて下さった読者の方に感謝を申し上げます。

 此処まで読んで下さって、ありがとうございました!

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