98.【ティナ】美しい花には……
「きれい……」
「(そやけど、なんや、場違いな感じのする花やな~)」
アタシとルビーは、アタシの魔道具を作ってもらうのに必要となるリスケッタの花をやっと見つけた。
川のそばに咲くその花は、ルビーの言うとおり、この緑一色のこの森には珍しく、赤い大きく、ものすごく目立っていた。ここに咲いていることを精一杯主張するように。
「(おっ姉御、見てみぃ)」
アタシはルビーが指を指したその先に目を向ける。
「わぁ……」
その一角には赤い花が所狭しと咲いていた。
20輪以上あるんじゃないかしら?
「(これでミッションコンプリートやな)」
「そうね。花を採って、夜が明けるのを待ってから、ダンジョンにもどりましょ」
アタシは川をジャンプして渡り、ルビーとともにリスケッタの花へと近づく。
「(うげぇ……)」
「そういえば、そうよね……」
1輪のリスケッタの花に近づくと、その下にあるものが見えてきてしまう。
……ゴブリンの死体だ。
「下級魔獣を苗床にして育つ植物だって言ってたもんね……」
「(花はきれいやけど、その下は見とうないな……)」
花の下はちょっとグロい。
仰向けになったゴブリンのお腹からニョキニョキと茎が伸びており、根っこはゴブリンにからみつき、ゴブリンから養分を吸い取ったかのようだ。……実際そうなのかも。
「ねぇ、想像したくもないんだけど……」
アタシは右奥の小さな花畑からそっと目をそらす。
「(ワイ、見てもうたわ……。ゴブリンだけやないけど、全部の花に1体ずつ死体ついとるな……)」
やっぱり……花畑がキレイなのは上側だけらしい。
「(下のゴブリンはいらんのやろ。さっさとあの花のとこだけ採ってまおう)」
「ゴブブ」
「(なんやねん。その返事。さっさといくで~)」
「……ルビー、それアタシじゃないわよ」
「(ん?)」
誰がゴブブなんて言うのよ!
リスケッタの花に近づくルビーの隣にはゴブリンがいた。
もちろんリスケッタの花の苗床になってるゴブリンとは別の生きているやつだ。
「(なんや、この花はワイらのもんやで?渡さんで~)」
「ゴブブブブ!!」
ルビーの言っていることが伝わったのか、ゴブリンがリスケッタの花に向かってダッシュする。
そして……
バクッ
「「あーーーー!!」」
野良のゴブリンはリスケッタの花を食べてしまった。
「(なにすんねん。《ウインドボール》」
「ゴフッ」
ルビーの《ウインドボール》が野良のゴブリンの背中にあたって、吹っ飛ばす。
でも、もうリスケッタの花はきれいにゴブリンのお腹に収まってしまったようで、残るのは苗床ゴブリンと花のなくなった茎だけ。
「そういえば、下級魔族が食べに来るって言ってたわね……」
「(まぁまだまだあるからえぇけどな)」
諦めて、小さな花畑の方の花を採ろうと、そう思ったそのとき、アタシの耳が不穏な音を拾った。
「ルビー、急いで花採って!」
「(ん?どうしたん?)」
「早く!」
「「「ゴブブブー」」」
「「「キーキーキー」」」
「「「ブモー!!」」」
森に響き渡る大量の野良魔獣の鳴き声。
「(なんやこれ!)」
「低級の野良魔獣が集まってきてるみたい!大したのはいないけど、数が多いわ!」
「(っと!《ウインドボール》)」
「キュー!」
ルビーが一角ウサギを吹っ飛ばす。
それを皮切りに、いろんな種類の低級野良魔獣がリスケッタの花めがけてとびかかってくる!
「(これはっ!ちょっとしんどいで!)」
ルビーが魔法を連発しながら、ぼやく。
アタシも集まってくる魔獣をなぎ倒し、花を守る。
リスケッタの花の匂いは低級魔獣を寄せ集めるとは聞いてたけど……こんなにいっぱい来るもんなの!?
「広範囲の魔法は使っちゃダメだめだからね!」
「(分かっとるわい!花がダメになったら、なんのためにここまで来たのか分からん!姉御!はよぅ花採って!)」
いくら下級の魔族とはいえ、数が多い。
全部は打ち倒せず、一部の魔族は花に食らいついてしまっている。
アタシはまだ無事な花に走り寄り、花の部分を切り取る。
「採ったわ!」
ガブ
「ってえーーー!!」
フォレストウルフがアタシの手ごと、花を食べてしまう。
「なにしてんのよ!!」
腕を振り回し、フォレストウルフを吹っ飛ばす。
もちろん、フォレストウルフごときでアタシの腕はどうにもならない。無事だ。
……もちろん、花は無事じゃない。
「(アネゴ!こっち採ったで!)」
そんなことをしている間にルビーがもう1輪確保していたようだ。
「この瓶に入れて!」
アタシは持ってきていた瓶をルビーに投げ渡す。
ルビーは素早くその瓶の中にリスケッタの花をしまう。
「一旦ひくわよ!」
「(りょーかい!)」
アタシとルビーは戦場となった花畑を離れ、川向いへと避難する。
花は瓶に入れてあるから、もう匂いは漏れだろうし、一安心だ。
「(……こりゃ見つからんわ)」
「そうね……」
きっと見つけた花はまさに今さっき咲いたのだろう。
あの魔獣の食いつきよう。
咲いたそばから、すぐに食べられてしまうだろう。
採取できる時間なんてごくわずか。アタシ達が採れたのは本当に運がよかったとしか言えない。
「本当はもうちょっと採っておきたかったんだけどなぁ」
アタシの魔道具を作るのには1輪で大丈夫だと言われてるけど、せっかくあれだけ花があったのだ。これから何かに使うかもしれないし、もうちょっと確保しておきたかった。
「……」
「どうしたの?ルビー」
ルビーがリスケッタの花があった方を見つめて、何か考え込んでいる風だ。
「(姉御、ちょっとどうかな~とも思うんやけど……。さっきのゴブリン持って帰らへん?)」
「え?最初に花食べちゃったゴブリン?って、あ!」
リスケッタの花は食べた下級魔獣を苗床にして育つ植物。
ルビーの魔法を受けて倒れているゴブリンを持って帰れば……。
「……鉢植えが必要ね」
「(墓の間違いやろ)」
目的のモノが手に入って、浮かれていたアタシ達は、忍び寄る者の存在に気づくことができなかった……。
ヘッジ「ちょっと疑問なんすけど」
ティナ「どうしたの?」
ヘッジ「1輪の花が咲いて、食べられてって繰り返す花だとしたら、リスケッタの花って増えてかないってことすか?なんかすぐ絶滅しそうっすけど……」
ティナ「あとから聞いたんだけど、花の部分を食べられても、また同じところから花が咲くんだって」
ヘッジ「へ~」
ティナ「高ランクの魔獣に咲く花ほど何度も花をつけるらしいわよ」
ヘッジ「魔獣の命を吸ってる感がすごいっすね……」
◇◇◇◇◇◇
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