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59. 【イルミア】魔族も魔獣もみな殺す

 私はイルミア、ソロで冒険者をやっている。孤児院を出てから、魔獣狩りを続けていたら、いつのまにかAランクにまでなっていた。でもランクなんてどうでもいい。私は魔獣を殲滅する。この世から魔獣がいなくなるまで戦う。ただそれだけ。

 今回、冒険者ギルドの要請で、新たにできたという領内のダンジョンに向かうことになった。


 ありがたい。


 ダンジョンなら、魔獣がたくさんいるはず。これで、またたくさん魔獣を殺せる。


「そのヴェールの町はここからどのくらいかかるの?」


「この魔導車なら2日もかからん。今日は野宿になるが、明日のうちには着くだろう」


 ヴェールの町にはその町長が送っていってくれるらしい。なんでも、領主との打合せがあって、こっちに来ていたとか。おかげで最新の魔導車で移動だ。とにかく速い。

 ……これに乗って戦ったら、もっとたくさん魔獣を殺せるのでは?


「町長、これ欲しい」


「……私もよくは知らんが、これを作るのにAランクの魔石が何個も必要になるらしいぞ」


 それは無理だ。

 Aランクの魔獣など滅多にいない。私もこれまでに1体しかお目にかかったことがない。ベヒーモスと呼ばれる家何軒分かいう超大型の獣だった。こいつ1体で街が壊滅し、高ランクの冒険者が集められて討伐にあたった。私はそのベヒーモス討伐の功績が認められてAランクになったのだ。

 今なら1人でもなんとか相手にできるとは思うけど、そもそもほとんどいないのだ。それを何体も倒して魔石を集めなきゃならないなんて、新しく作るのは無理だ。


「これがあれば、たくさん魔獣倒せる」


「ん?まぁ移動が楽になるからな。そうかもな」


「そうじゃない。乗りながら狩りをする」


「……操縦しながらか?なかなか難しそうだが、確かに面白い考えだな」


「でしょ。だから、ちょうだい」


「……いや、あげられるわけがなかろう。何を考えてる」


「ケチ」


 なぜだ?

 きっと私がこれを使うのが一番いい。私が使えばきっとたくさん魔獣を殺せる。

 町長はなんだか呆れたような顔をしているけど……呆れるのはこっちだ。

 いったい何を考えているのだろうか?


「……」


「町長、何考えてるの?」


「いや、だから、この魔導車はとても貴重で、」


「違う。なんか悩んでる顔してる」


「……」


 今日会ったときからそうだ。

 ルーベンさんは町長になる前から知ってる。というか、元Aランクの冒険者なのだ。知らない人の方が少ないだろう。「破滅の達磨」なんて二つ名で呼ばれ、紳士的な態度と裏腹の風貌・戦い方で魔獣どころか人間の方まで震え上がる著名な冒険者だ。ルーベンさんの方は私の事を知らないだろうが、その強さにはずっと憧れてきた。

 だが、今日目にしたのは、そんな強烈なインパクトを持つ人じゃなかった。そりゃ、見た目が強面なのは変わらないが、なんというか……覇気がなかった。

 冒険者を引退し、町長になって、丸くなってしまったのだろうか。


「そうだな。正直、私は今、悩んでしまっている」


 ポツポツと町長が話し始める。


「魔族はもしかすると悪い者ではないのかもしれない」


 は?

 何を言っているんだ、この人は?

 魔族ガ悪クナイ?

 マゾクハコロスベキソンザイダ。

 コイツハマゾクノテサキカ?


「!?」


 私の剣を町長が籠手で防ぐ。

 当然、魔導車の操縦から町長の手が離れ、そのまま私達は野原に放り出される。


「待て!話を聞け!!落ち着け!」


 ナニヲイッテル。オチツイテイル。

 オチツイテ、マゾクノテサキヲコロス。


「ここで私をやれば、君はダンジョンで魔族を狩りに行けなくなるぞ」


「!?」


 ……。

 どうやら、私は少しだけ、熱くなってしまっていたらしい。

 まぁ仕方ないだろう。町長がおかしな事を言い始めるのがいけないのだ。


「ふぅ。これが噂に聞く『双剣の殺戮者』か……」


 町長が一息つきながら、ポールアックスをしっかり手に持ったまま、こちらに話し始める。


「安心しろ。我々の生活のために魔獣を狩ることは必須だ。キミが魔獣を狩ることを止めはしないし、むしろ我々はその手伝いをしよう」


「うん。それがいい」


 ふむ。魔族の手先というわけではないようだ。


 町長は私の様子を見て、ポールアックスを地面に置き、倒れていった魔導車を取ってくる。


「さすがは最新の魔導車だな。傷すらつかんとは。さぁ乗れ」


 私は再度、町長の後ろにまたがる。

 ……いまさらだけど、魔導車ってこんなに小さいもの?前と後ろに2人が乗るので精一杯だけど。というか、私だからいいんだけど、町長みたいな人だと2人も乗れないんじゃない?なんか不安定で離すとすぐ倒れるし。


 走りながら、町長が再び話し始める。


「キミは魔族がなぜダンジョンを創るのか知っているか?」


「知らない」


「なんでも、その土地で災害が起きるのを防ぐためにダンジョンを創ってるらしいぞ」


「ふ~ん」


「……それだけか?」


「……どういうこと?」


「……いや、いい」


 魔族が何をやっているかなんてどうでもいい。

 私は魔族も魔獣も殺したい。

 どうしたら、殺しやすくなるのかとか、そういう話をしてくれればいいのに。


 その後、町長はあまり口を開かず、私達は黙々と進んだ。

 といっても私は座っているだけだったけど。


 そして、領都を出発して翌日の夜。すっかり暗くなってしまってからヴェールの町についた。


「町長、おかえりなさい!」


「あぁ、変わったことはなかったか?」


「はい、魔獣の襲撃もありません。あ、そういえば魔木を狩ってきた冒険者がまた出ましたよ!それも二組!」


「ほぅ。それはいい話だ。バーナード様も魔木の件は相当気にされていた。まぁまずは中に入れてくれ」


 門番は元気よく返事をした後、跳ね橋が下がってきて、水路を渡れるようになる。

 ……ここ町?防壁とか領都並じゃない?


 感心しながら、町長と共に橋を渡っていく。

 渡りきったところで、門番がまた跳ね橋を上げようとする。


「ま、待ってーーーー。アタシも入るわ!!」


 そこへ1人の冒険者が飛び込んできた。

 こんな時間まで魔獣を狩るなんて、なかなか勤勉な冒険者だ。


 と思ったけど、よく見たら、その冒険者はロクな装備もつけず、身体中傷だらけ。しかもほぼ手ぶらで、とても何かの魔獣を狩ってきたようにも見えない。

 ……冒険者じゃなくて一般人が魔獣に襲われたのかしら?


「え、イルミア!?」


「あら?お姉ちゃんじゃない」


 よく見たら、ダメそうな冒険者はシスターやってるはずの我が姉アメリアだった。

ヘッジ「アメリアってなんか聞いたことあるっすね」

ティナ「あれよ、人間がダンジョンの視察に来たとき、魔道具使ってダンジョンがあるかどうか確認してた女よ!」

ヘッジ「あ~あのわがままな感じで魔石を毛嫌いしてた女っすか!」

ティナ「そうそう。あの子、視察に来た人間たちと一緒に帰ったと思ってたけど、ヴェールの町にいたのね」


◇◇◇◇◇◇


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