49.始まる侵略
「まずいな、これは……」
人間どもの侵略が始まった。
いや、侵略というにはまだ早いかもしれないが……
見張りをしているスライム達が言うには、外周エリア、つまりダンジョンエリアとはなっていない森の外側で狩りをする冒険者が格段に増えたということだ。着実に魔獣が狩られ始めている。今はまだ外周エリアでしか狩りはされていないようだが、魔獣が減ってくれば、当然より内部へとやってくるだろう。
俺は広場に主要メンバーを集めて、状況を説明した。
「とうとう本格的に攻めてきたのね……」
「あぁ、防壁もできあがって、町の防衛に不安がなくなったから、冒険者をこっちに回し始めたんだろう」
「(看板の内側にやってこないところをみると、目的はやはり魔石の採取かのぅ)」
その点については、多少の安心材料だ。
やつらは積極的にダンジョンの攻略へは乗り出さないようだ。その気があるなら、看板の内側にやってこないのは不自然だからな。
とはいえ、いつまでも放っておくわけにはいかない。
「でも、こないだの戦いを考えても、そんじょそこらの人間には負けないんじゃない?」
「(オレ達戦える。もう負けない)」
「ほら、ゴブタロウもやる気だし。上層エリアに踏み込んできたところで、相手すればいいんじゃないの?それで魔道具もいただいてさ~」
むしろチャンスだとばかりにティナが余裕を見せる。
「無理じゃないだろうが、今回はそう簡単じゃない」
「(あのね~人間、みんな魔法使ってたの~キラキラしてたの~)」
「あら、魔道具持ってるってことじゃない。いいじゃない!まさに願ったり叶ったり!」
「(……いや、難しいところじゃのう)」
やはり楽観的なティナに対して、ミズクはある程度状況を理解しているようだ。
「だから、そう簡単じゃないって言ってるだろうが。スラポンは『みんな』って言ってるんだぞ。ホントに全員ということはないだろうが、相当数が魔道具を使っていることが予想される。これまでの冒険者のような、へっぽこな奴らと同じとは考えない方がいいだろう」
「「「「うっ」」」」
あ、しまった。そのへっぽこに該当するダットン達がダメージを受けてる。
「でもよぅ、旦那、いくら魔道具を持ってるったって、そこらへんの冒険者相手なら、多分ゴブリン達は戦えちまうぜ?少なくともDランクくらいまでなら、大丈夫だろ」
普段、ゴブリン達と訓練しているダットン達の言葉だ、それはそうなのだろう……たぶん。
だが、裏を返せばCランクの冒険者がいるとまずいということだ。それに……
「確かにゴブタロウ達でもやってやれないことはないと思う。だが、それをやるとゴブリン達の損耗も避けられないだろう」
ゴブリン達がわらわらと集まってきたときには、ゴブリンだけじゃ戦闘面は不安だと思っていた。だが、今となっては立派な主戦力だ。それだけに軽々と損耗すると分かっている作戦は取りづらい。
「じゃ、どうするのよ?」
「……」
俺はティナの問いかけにすぐには答えられない。悩んでしまう。
「(主はタイミングを考えてるんじゃろう?)」
「……そうだ」
「何のよ?」
「ダンジョンのランクアップの、だ」
ここ数日、悩み続けている問題だ。
ランクアップがいつ頃になるかでとるべき作戦が変わってくる。
ランクアップがもうすぐなら、多少今は我慢して、ランクアップ後の戦力で相手をすればいい。Cランクの魔獣を創ることもできるし、魔獣を増やす魔力の余裕も出てくるはずだ。ランクアップができれば、だいぶ潮目も変わってくるはずだ。
だが、もしそうでないなら?
そうでないなら、今ある中で対応しなくてはならない。目の前にいる人間をすべて返り討ちにすれば終わりではないのだ。人間は数だけは多い。長期的に相手をすることを考えなければならない。その場合には、ある程度訓練し、レベルの上がったゴブリンを失っていくことは避けるべきだろう。
「(まずは、冒険者達の戦力を見てはどうかのう?スラポンの言葉だけではイマイチよう分からん)」
「(え~なんでよ~)」
スラポンがティナの膝の上でプリプリと怒っている。それをティナがよしよしと慰めて……というより愛でている。
「……そうだな。ゴブタロウ達でも楽勝と思われるなら、それで済む。ひとまずはそれで行こう」
まるで人間達の思惑とおりに獲物を用意してやるようで、少々シャクではあるが……。
俺はダンジョンコアを手に取り、スキルを使う。
「《魔族創造》」
コアから光が溢れ、5体の魔族が姿を現す。
「コボルトね」
そう。今回創ったのはゴブリンより少し大きいくらいで、二足歩行する犬型の魔族、コボルトだ。Eランクの中では多少知恵のある方であり、忠実でもあるので、こちらの指示どおりに動いてくれるはずだ。
「お前たちには、この森に近づく人間の相手を頼みたい。5体で固まって動き、この森にやってくる人間を排除しろ」
「「「「「ショウチシマシタ」」」」」
5体は一斉に走り出していく。
「ティナ」
ティナは黙って頷き、偵察のためにコボルト達と距離をとって、ついていく。
コボルト達と冒険者の戦いについては、ティナが見届けてくれるだろう。
ゴブリン達で対処できる程度であればよいが……。
そうでなかった場合も考え、なんらか対抗手段を考えなければならないな……。
「旦那~」
「どうした?」
ルイーズが声をかけてくる。
「旦那は魔道具とか魔石を魔力に換えることができるんすよね?」
「まぁそうだな」
「んでもって、魔力があれば、ダンジョンコアのランクアップが早まるんすよね?」
「そうだ」
なんだ?ルイーズは何を言いたいんだ?
「ちょっと思いついたことがあるんすけど……」
悪くない。
俺はルイーズの作戦を聞いて、少し光明が見えてきた気がした。
ヘッジ「ちょっとやられ役のコボルトがかわいそうっすね」
ティナ「ん〜負けるとも限らないけどね。でも負けるとしたら、それは弱いのが悪いのよ」
ヘッジ「まぁそうなんすけどね〜。死んで恨んで出てこないっといいっす」
ティナ「魔族が死んでアンデット化する話は聞いたことないわよ?」
ヘッジ「そういうことじゃないっす……」
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