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27.ランクを超えろ

「そうだ!腹の底から絞り出せ!やれる!お前ならできるぞ!!」


 ジュワッ


「いいじゃないか!それだ!だが、もっといけるぞ!」


「……なにやってんの?カイン兄?」


「おっティナか?見てくれ、この成果を!」


 俺は今しがたの成果をティナに見せる。


「これって……もしかして《溶解液》?」


 そこには、指でつらぬいたように穴の空いた岩がある。


「そうだ。スライムに《溶解液》を濃縮させることができないか試してもらってるんだ」


 その成果がこれだ。

 元々の《溶解液》の効果はあまりにイマイチだった。

 素手で触ったとしてもちょっとヒリヒリする程度。これでは、数が増えたところであまり意味はない。


 だが、思ったのだ。量が減ったとしても濃縮してやることによって、《溶解液》の酸を強くすることはできるのではないか、と。

 そこで、スライム達には吐き出す《溶解液》の濃度を高めるべく、水分を絞り取るようにして吐き出す訓練をさせていたのだ。


「すごいじゃない!?攻撃範囲はかなり狭いけど、立派に攻撃って言えるレベルにはなってるんじゃない!?」


 スラポンが嬉しそうに飛び跳ねる。

 それをティナが抱きしめる。今に頬ずりでもしそうだ。


「そうだろそうだろ。まずは、スラポンに訓練の仕方を教えてやって、あとはスラポンに他のスライムを訓練させようと思ってな」


 他のスライム達は維持費削減のため、すでに配下の登録は削除してしまっているから、《交信》が使えなくなってしまっている。

 配下ではなくなったので、魔力の補給は受けられなくなったわけだが、ダンジョンコアの周囲は魔力の濃度が濃い。スライム達は特に不満はないようで、居心地よさそうに迷宮の中を徘徊している。


「そして、訓練がある程度できたところで、エサを与えて、スライム達を一気に増やす。スキルやレベルを分裂後、継承するのであれば、おそらくこうした技術も継承してくれるはずだ」


 そうすれば、スライム軍団の誕生だ。

 いま、このダンジョンの主力はEランクの魔獣だ。普通にやったのでは普通に人間どもに負けてしまう。ランクを超えた何かしらの力が必要だ。


 スライム達には地下迷宮の天井にでも住んでもらって、冒険者がやってきたところで強化したスキルを連発させるのだ。


「なんかちょっとみみっちい気もするけど、やられる側からすると、効果的な気もするわね」


「そうだろそうだろ。この10日間、いろんな方法を試しながら、訓練してきたわけだからな」


 最初はとにかく連発できないか、と試して、スラポンが手のひらサイズにまで縮んでしまった。

 次に試したのは、薄く拡がって、相手に張り付き、全身から薄くスキルを使う方法。これも全身がうっすらとヒリヒリするだけで、ロクにダメージはなかった。

 ちなみに実験台でスキルを受けたのは俺じゃない。ゴブタロウだ。


 最終的には今の濃縮攻撃に落ち着いた。スラポンとしても濃縮するというのは初めてのことだったようで、イメージを使えるのに苦労したが、なんとか形になった。


「《溶解液》が濃縮してこれなら、《毒液》や《麻痺液》も濃縮したら効果が増すのかしら?《粘着液》はよりくっつくようになったり?」


「おっティナも考えられるようになったじゃないか。なかなか可能性が広がると思うだろ?」


「いや、最初にスライムに目をつけたのアタシだからね!むしろ、カイン兄、最初、すっごい懐疑的だったじゃない!」


「ん、そうだったか?」


「そうよ!……ところで、ゴブリン達のアレも、カイン兄の指示?」


「ん?まぁ半分はそうだな」


 俺達の横では、ゴブリン達が列をなし、木の棒で素振りをしている。

 ゴブタロウが前に立ち、「ゴブっ!ゴブっ!」とみんなで掛け声をかけ、訓練をしているように見える。

 といっても、結構バラバラだし、振り方もなんかおかしいやつもいるし、明らかに上の空でてきとーにやってるやつもいる。


「もともとはゴブタロウが話をもってきたんだ。『ダンジョンを守れるように俺達も強くなりたい』ってな」


 それで、俺が提案して、訓練を始めさせている。


「ゴブリンは元々、ナイフとか使うのもいるから、武器を使わせるのは分かるけど……戦力になるのかしら?」


「まぁ、多少訓練してもまっとうな戦闘じゃ大した戦力にはならんだろうなぁ」


「……『まっとうな』ってことは何か考えがあるわけね?」


「ん~明確になんか考えてるわけじゃないんだけどな。ただ、もし、本格的にゴブリン達を戦力として扱おうと思ったら、戦術が必要になると思うんだ」


 個々の戦力がたかが知れてるのだから、なにかしらの策が必要になるだろう。


「そのとき、各ゴブリン達がこっちの策を理解する……のは難しかったとしても、こっちの指示どおりにきっちり動いてくれないと話にならない」


「それは……そのとおりだと思うけど、ゴブリン達にはなかなかハードルが高そうね……」


 気まぐれ、怠け者、勝手、自己中心的、まぁ言い方?は色々あるが、基本、やつらは自由だからな。


「俺もそう思う。だから、『指示に従って、1つの事をこなす』って訓練がまず必要だと思うのさ。あの素振りはその一貫。本当は別に素振りじゃなくたって構わない」


「じゃ、ゴブタロウが指揮をとってるように見えるのも……」


「指揮をとる練習だな。あいつが俺達とゴブリン達とのハブ役になるわけだからな。ゴブリン達の将軍(リーダー)はあいつだ」


「ゴブタロウがリーダーねぇ」


 できるのかしら、とでも言わんとする目でゴブタロウを眺めるティナ。


 それにゴブタロウが気づいた。

 何を勘違いしたのか、喜んでゴブタロウがやってくる。


「(ティナ~、俺、すごい?かっこいい?)」


「……」


 すごーく嫌そうな目でゴブタロウを見下すティナ。

 おまえ、ヘッジやスラポン達と比べて、ゴブタロウの扱いが悪すぎないか?


「おい、ゴブタロウ。部下をほっぽりだして、おまえがこっち来てどうする?見てみろ」


 ゴブタロウがこっちに来た瞬間、座り込むやつ、木の棒を置いてどっかに行ってしまうやつ、一応でも隊列をなしていたゴブリン達はもうバラバラだ。


「(えっ!?おい!おまえらーちゃんとやれーーー)」


 ゴブタロウが叫び散らしながら戻っていく。


「「いや、アンタ(おまえ)もだよ」」


 ゴブリン達が戦力になる日はまだまだ遠そうだな……。


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