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102.【レオン】手段選ばず

 俺達スノーウルフは、深緑のダンジョンの位置を特定するために、以前カインらと会った場所の周辺を探すことにした。


 だが、その道のりの途中で不思議な光景を目にする。

 下級魔獣達が我先にと赤い花を求めて争っているのだ。

 異様だ。

 しょせん、花。俺達が食ってもそううまいもんでもなかろう。


「(確かにこの香り、うまそうではあるが……)」


 おそらく花の香りなのだろうが、甘い匂いはそそられるものがある。

 だが、あれほど激しく争って手に入れるようなものだろうか?


 と、そのときだ。


「採ったわ!」


 見覚えのある猫の獣人がその花を掲げているではないか!


「(下がれ)」


 俺は仲間に下がるよう指示する。

 この喧騒の中だ、俺達に気づいていることはあるまい。

 俺は一人で様子を伺う。


 しかし、あんな獣人ですら欲しがるような花なのか……。


 その後、獣人は空を飛ぶ小さな魔獣とともに南の方へと歩いていく。


「(おまえらは一旦帰れ。俺一人で追う)」


 仲間をボスのところへ返し、俺は単独で獣人……ティナといったか?その後を追った。

 仲間を引き連れていては尾行はできない。万一戦闘になれば、俺一人では歯が立たないだろうが、所詮は獣人。生粋の獣である俺とは鼻の性能が違う。風向きにさえ気をつけていればバレはすまい。

 しかも……


「なに、このゴブリン、くっさ~~い」


 なにやらゴブリンを一匹抱えている。

 ……絶対にバレないな。


 あとをつけていった先には少し開けたところで、岩肌に洞穴のある場所だった。

 以前、カインと出くわした湖にも近いし、ここがやつらの拠点で間違いなかろう。


「はやくカイン兄もどってこないかな~」


 うむ。


 俺はそっとその場を離れ、ボスの元へと戻った。


 ◇◇◇◇◇◇


 ボスの元へと戻ると、すでにドーレンは戻ってきていた。

 俺達はボスの前で情報交換を始める。


「(で、ダンジョンマスターを見つけておきながら、おめおめと戻ってきたわけか?)」


 どうやら、ドーレンはカインに会ったらしい。


「(あ?威力偵察というやつだ!)」


 よく威力偵察なんて言葉、ドーレンが知ってたな。


「(ほぅ、では、やつがどこにいるのか分かっていると?)」


「(……)」


「(これだから脳筋は……)」


「(あぁん!?なんの成果も上げられずに戻ってきたやつが何を言う!)」


「(誰が成果なしか。やつらの拠点を見つけてきたわ)」


「(なっ!?)」


 ダークウルフが単独で真正面から挑んだようだが、それで、やつに敵うわけなかろう。

 カインを見つけたなら、いきなり襲いかかったりしないで、適当に話を合わせて拠点に案内させればいいのだ。やつは戦力を探していたようだから、それくらい容易だろう。

 ま、脳筋のドーレンには難しかったようだが。


「(ドーレン、成果なしなのはどちらだ?」


 ギリギリと牙をすり合わせ、悔しそうにするドーレン。

 ふん、たまには頭を冷やせばいいのだ。


「(レオン、そう煽るでない)」


「(はい、ボス)」


「(して、ドーレンよ。ダンジョンマスターはどうだった?)」


「(……はい。やつはなにやら、俺達を前になにやら友好的な様子で話しかけてきました)」


「(俺のときもそうだったな。どうやら、戦力になる魔獣を登用したかったようだぞ)」


「(……そのときにやつは、ダンジョンマスターだと名乗ったので、こちらから先手を仕掛けました)」


「(どこが先手だ?今の話じゃ、お前らの方が先に見つかってるではないか)」


「(あぁっ!?)」


「(レオン)」


「(はい、ボス)」


「(それで、ドーレン、戦ってみた感触は?)」


「(……正直、底が知れません。スキをついて、一撃くらわせましたが、その後、力の高まりを感じて引きました。それまでは明らかに手を抜いていました)」


「(勝てるか?)」


「(……勝ちます)」


「(ハッ、これだからダメなんだ)」


「(あぁん!?)」


「ボスは『勝てるか?』って聞いたんだ。それで『勝ちます』って答えになってないな」


「(……ボスの言葉は絶対だ!ボスは俺らに『ダンジョンマスターの首を取ってこい』と言った。それを何が何でも叶えるのが俺の役目!)」


「(……)」


 ボスはドーレンを見つめている。

 ……ボスは何を考えているのだろうか?


「(勝てないな)」


「(決めつけてんじゃねぇ!)」


「(真正面から行ったんじゃ、俺らだって勝てない)」


「(!?)」


「(俺はできないことはやらん)」


「(てめぇ、ボスの命に背く気か!?)」


「(そんなわけないだろう。俺はできないと分かっていることはやらん。できるようにしてからやるのだ)」


「(あ?)」


 全く分かっていないな、これだから脳筋は……。


「(手を貸せ)」


「(なっ)」


「(我らスノーウルフとダークウルフが手を組み、奴の虚をつけば、デーモンといえど討ち取れるだろう)」


「(誰が、貴様らなんぞと)」


「(じゃ、どうするんだ?ダークウルフだけで勝てるのか?)」


「(……)」


「(何が何でもボスの命を叶えるのではなかったのか?)」


「(くっ!)」


 またも悔しそうにするドーレン。

 だが、答えなどすでに決まりきっている。


「(……ボスのためだ)」


「(もちろんだとも)」


 こうして、俺達スノーウルフとドーレン達ダークウルフは手を組むことになった。


 このときのボスの俺達を見る目はどこか少し柔らかいものだった気がする。


ティナ「アタシ後つけられてたのね……」

ヘッジ「ティナのアネキって、獣人っすよね?鼻きくんじゃないんすか?」

ティナ「くっ!あのときはゴブリン抱えてたのよ!あんな臭いのが近くにあったら、鼻なんてきかないわよ!むしろアタシよく耐えたわ!」

ヘッジ「ルビーには持てないっすもんねぇ」

ティナ「それにAランクの獣人といえど、さすがに鼻でウルフ系には勝てないわよ」

ヘッジ「あっちはThe獣っすからね」


◇◇◇◇◇◇


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