101.森の覇者
リスケッタの花を用意し、ドノバンにも来てもらって、ティナの身体強化の魔道具を作ってもらう準備ができた。
「で、魔道具ってどうやって作るんだ?」
俺は興味本位でドノバンに聞く。
「ざっくりいや、基本的には発動体となるものに魔法陣を刻んで、魔石を取り付けるって感じだな」
「なんだか簡単そうね」
それだけ聞くと確かに簡単そうに思える。難しくないなら、ぜひ自前で作れるようになりたいな。
「言葉にすりゃな。だが、実際は大変だぞ?そもそも魔法陣ってのは特殊な道具で刻む必要があるし、ちょっとでもずれりゃ、おじゃんだ。やり直しも効かねぇ。魔石と魔法陣の接続も相当高度な技術を要する。まぁこっちは下手くそでも魔力効率が落ちるってだけではあるけどな」
刻む魔法陣がどんなものかも聞いてみたが……よく分からなかった。とりあえず、ものすごく細かいうえに俺では分からない刻む強弱のようなものも関係するらしく、さっぱりだ。
「ちなみに発動体は魔力の通りがいいもんがいい」
ドノバンがチラチラと俺を見てくる。
言わんとしていることは分かるが、おっさんにそんな態度とられてもキモチ悪いわ。
「……エルダートレントに枝をもらってこよう」
「うむ。それがいい」
満足そうにドノバンが頷く。
「形は?着けててあんまり邪魔にならないようなのがいいんだけど」
「形はまぁぶっちゃけ何でもいいな。今回は魔法陣を2つ刻むことになるから、あんまり小さいもんだとダメだが……そうだな。ブレスレットなんかでどうだ?」
「ん~イヤリングとかは?」
「イヤリングじゃ小さすぎるな。ブローチやネックレスなんかでもいいが、そこそこの大きさになるから邪魔なんじゃねぇかな?」
「……そうね。ブレスレットでお願いするわ」
そんなこんなでドノバンとティナで話し合われ、ティナの魔道具の仕様が決まる。
「よし!んじゃ、作ってくか!」
「興味あるな。脇で見ててもいいか?」
「アタシも見たい~」
「構わんが、面白いもんでもねぇぞ。じみ~な作業だ」
「だが、ドノバンは一流の魔道具職人なんだろう?なかなか見れるもんでもないし、ぜひお願いしたい」
ティナもワクワクしながら、ウンウンと頷く。
「……俺が魔道具を作るのがうまいのはスキルに依るところが大きい。見てても分かんねぇぞ?」
ほぅ。生まれついての才能なのか。
「どんなスキルなんだ?」
「《魔装の作り手》と言ってな。素材の魔力の通りやすさを見極めることができたり、手元の魔力の可視化できたり、緻密な作業が可能となったり……ざっくり言や、魔道具作るのに必要となる技能諸々が全部やりやすくなる感じだな」
そりゃまぁなんとも……まさに魔道具を作るためのスキルだな。
「種族共通のスキルか?」
「いや、ドワーフだからって、みんな同じってわけじゃねぇ。だが、生産系のスキルを持つやつが多いみたいだな」
そう言いながらも、もういいだろとばかりに作業の準備へと入っていくドノバン。
「そういえばさ、カイン兄を襲ってきた、ダークウルフってさ、いつかあったスノーウルフ達の仲間ってことはないの?」
ドノバンが準備をしている間にティナが話を振ってくる。
俺もダークウルフ達を見たときにはスノーウルフのレオンの事を思い出した。
「どうだろうな?レオンの仲間だったら、俺を見て、いきなり襲いかかってきたりはしないんじゃないか?仲間にはなってくれなかったが、そこまで敵対的な感じでもなかったしな」
ゴブリンは何体かやられたが、レオンと話をしてからは、約束通りゴブリン達が襲われることもなくなった。約束は守るやつだと思えば、俺を襲うこともなさそうに思うが……。
そもそも同じウルフ系とはいえ、種族が違うからな。
……いや、待てよ。レオンはボスが別にいるとか言ってたな。派閥みたいなもんが違うにしても、同じボスの下にいるやつってことはありうるか。
だがまぁ、だとしても急に俺を襲う理由にはならんか。
「ん?お前ら、ダークウルフやスノーウルフの群れに会ったのか?」
ドノバンがこっちの話を拾い、聞いてくる。
「あぁ、スノーウルフの方はもう随分前の話だがな」
「そいつぁ、多分フェンリルの配下のやつらだな」
「「……はぁ!?」」
フェンリルだと!?
ウルフ系の魔族の頂点に位置する堂々のSランクの魔族だぞ!?
「なんだ?知らなかったのか?アルノルトあたりが話してるかと思ったが……」
言ってなかったぞ、そんなことは!!
別にこっちから「Sランクの魔族はいるか?」なんて聞き方もしてないから、話さなかっただけかもしれないが。
なんで、この森は高ランクの魔族がそんなにワラワラといるんだ!?アルノルトにドノバンと二人もAランクの魔族がいるだけでも驚きなのに、それに加えてフェンリルだと!?
「ちょっと待て、そんな大物、ダンジョンにも属さずにどうやって生きてるんだ!?」
「……どうなんだろうな?」
いやいやいや……。
「ドノバン、おまえが例の魔道具を作ってやったんじゃないのか?」
どうやって、とか聞いておきながらなんだが、それしかないだろう!?
「いや、俺は作ってない。とゆーか、さすがにSランクの魔族に必要なだけの魔力を集めるような魔道具は無理だろ。俺やアルノルトのだって、かなり無理してんだぞ」
聞けば、魔力を集める魔道具は、魔力を集める魔道具と貯めておく魔道具に分かれてるらしい。集める魔道具が相当大きくなるらしく、持ち運べるようなもんじゃないんだど。その辺りは魔力を隠す魔道具と同じだな。
「んじゃ、いったいどうやって、フェンリルは魔力を得てるんだ?」
まさか毎日魔族を食いまくってるとかじゃないだろうな?
Sランクがそれで賄うとしたら相当な魔族を狩らないとやってられないはずだぞ!?
……ん?
まさかスノーウルフがやたらゴブリン達を狩ってたのって、フェンリルのためか?
いやいや、ドノバンが知ってるくらいだ。別にフェンリルが来たのは最近ってわけじゃないだろ。それまではどうしてたんだって話になる。奥の方から順に野良魔獣を狩ってって、狩り尽くしたから浅いところにまで来たってわけでもないだろうし。
最近になって、何かが変わって慌てて対処してるとか?
最近になって変わったこと……
「まさか、以前は魔力溜まりがあったから、Sランクのフェンリルでも問題なかったのか?ダンジョンができて、魔力の流出が止まったものだから、魔力が足りなくなった?」
だとしたら、スノーウルフの行動も分かる。
そういや、スノーウルフのリーダーのレオンもダンジョンに興味を持ってたな……。
「え?でもだとしたら、魔力溜まりができる前はどうしてたのよ?」
「んなもん知るか。だいたい魔力溜まりが全くなかったのなんてどれだけ前の話になるか……」
魔力溜まりはいきなりできるもんじゃない。徐々に地脈の魔力が漏れ出てくる量が多くなると聞いている。具体的に魔力溜まりができ始めたのが何年前かなんて知らんが、相当前の話だろう。
「ねぇ……もしかして、カイン兄、フェンリルの怒りかっちゃってたり?」
ティナが恐る恐る聞いてくる。
「……ダークウルフにいきなり襲いかかられたしな」
レオンがボスのフェンリフに報告して、俺を殺そうってなったんなら、分かる。
……ってか、もうそうとしか思えない。
「おいおいおい、お前らフェンリルとやり合うつもりかよ……フェンリルはアルノルトより長生きしている相当老獪なやつだぞ」
ドノバンのいう「老獪」はもちろん「年老いている」なんて意味じゃない。年を経て、レベルも技術も上がり、めちゃめちゃつえーぞって意味だ。
「こっちにやり合うつもりなんて毛頭ない!」
「お前がそうでも、な」
ドノバンが肩をすくめて言う。
「……フェンリルこそ、この森の覇者だ。ダンジョンマスターなんてやってっから、カイン、おまえにもそれなりの自負はあるのかもしれねーが、あいつから見たらヒヨッ子もいいとこだぞ」
……。
「だが、俺を殺してもダンジョンはなくならない。フェンリルは救われないんだがな……」
「そんなことフェンリルが知ってんのか?……だが、やつはそんなに短絡的なやつでもねぇ。いきなりお前を殺そうとするってのはちょっと違和感もあるな」
だが、現実にダークウルフは襲ってきた。
あれは、俺を認識していたように思う。
クソっ!人間からの襲撃をなんとかやり過ごしたかと思えば、今度はフェンリルか!!
ヘッジ「あのときのスノーウルフはそんな状態だったんすねぇ」
ティナ「忘れちゃった人は28話〜31話を読むのよ!」
ヘッジ「そして、なんかすっごいピンチっすねぇ」
ティナ「あら、なんか落ち着いてるじゃない?」
ヘッジ「いや、落ち着いてないっす。諦めっす。もうなんかアニキはピンチばっかっすね……」
ティナ「今回もなんとか乗り越えるわよ!……たぶん」
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