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青空の彼方にて  作者: 凛灯
Epilogue
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Epilogue

 春の匂いがする。

 優しい日差しを受けて、俺は小走りで学校へと向かっていた。

 今日は快晴。真っ青で眩しい空が、俺を祝福している。

 俺は無事に志望校に受かり、今日から晴れて高校生だ。真新しい制服を身に纏って、新鮮な気持ちで学校までの道のりを走る。

 すごく気分が良かった。

 遠くから聞こえる鶯の声も、道行く人たちの声も、全てが楽しげな音楽に聞こえる。世界は彩度を上げ、新入生の俺を歓迎しているように見えた。


「すっご……」


 正門に辿り着いた俺は、想像よりも大きな校舎に感嘆を漏らした。それに加え、満開の桜。どこかで見たような光景に一瞬懐かしさを覚えながら、俺は一番大きな桜の木の下に向かった。

 時刻はまだ七時過ぎ。張り切って家を出てきたせいで、時間があり余っている。せっかくだからこの学校を探検しようかと思ったが、あまりに桜が綺麗だから俺は立ち止まってしまった。

 桜の木を見上げると、その向こうに爽やかな青空が広がっていた。海のように広く、ミントのように爽快な空。

 何故だか、あの空の向こうに何かがあるような気がして。俺はぼんやりと空を眺めていた。


「そこで何をしているの?」

「うわぁああっ⁉」


 不意に声をかけられ、俺は大袈裟なくらい飛び上がった。ボーっとしていたせいで、過剰に驚いて鞄を落とす。

 バッと勢いよく振り返れば、すぐ隣に一人の少女が立っていた。


「君は……」


 糸のように細く艶やかな髪に、耳辺りで髪を留める蝶のヘアピン。高校一年生にしては大人びた雰囲気に、端正な顔立ち。

 その少女に見覚えはないけれど、なぜだか無性に胸の奥が熱くなった。


「……ごめん、人に名前を聞くときはまず自分からだよね。俺は西条さいじょうつなぐ。突然だけど、よろしく」


 慌てて俺は自己紹介をした。いや、自己紹介をする必要はなかったのだが、俺が名前を訊ねたようになってしまったため、急いで自分から名乗ったのだ。

 桜吹雪の中、少女は俺を見て大きな瞳を揺らした。何故か泣きそうになりながら、その少女はにこりと綺麗な微笑を湛えて言った。


夕凪ゆうなぎこころ。よろしくね」


 お久しぶりね、繋くん。

 青空の彼方から、そんな声が聞こえたような気がした。


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