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青空の彼方にて  作者: 凛灯
第一章:チーム・コンパスの秘密調査
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2/22

その1

 テレビのスイッチが入ったみたいに、意識がふと浮上した。くぐもった泡沫のような音が、耳奥で鳴り響く。重たい瞼をゆっくりと開けば、ひどくぼやけた視界。何度か瞬きをしてピントを合わせれば、絵画のような青い空が俺を覗き込んでいた。


 どこだよ、此処。

 最初に思ったのがそれだった。まだ空しか見ていないにも関わらず、此処が知らない場所であることは何となく肌で感じた。空気が、あの空の色が、記憶にあるものと違う気がする。そう思い、今まで見てきた空を思い出そうとするが、不思議なことに何一つ思い出せなかった。

 空なんて、何か特別意識をして見るようなものじゃない。だから、記憶にも残っていなかったのだろう。

 ひとまずそう自己完結して、俺は起き上がろうとした。だが、まだ体が怠い。動くのも億劫だ。

 背に段々と冷たい混凝土のような気配を感じるようになってきた。たぶん道路かどこかに大の字でだらしなく倒れているだろう。そんな自分をぼんやりと想像していれば、突然青空が人の顔に変わった。


「うわぁああっ!?」


 文字通り俺は飛び上がる。鉛のような体の重さが嘘みたいに、俺は跳ね起きた。


「あら、そんなに驚くとは思ってもみなかったわ」


 ドクドクと五月蠅い心臓を押さえながら振り返れば、俺の顔を覗き込んだ少女が口元に手を当てて上品に笑っていた。

 腰まで伸びる濡羽色の髪に、形の良い耳の近くで留まる青い蝶のヘアピン。見た事のない制服を着こなしたその少女は、絵に描いたような美人だった。


「だ、誰?」とどもりながら問う。

「さぁ?誰でしょうね」


 彼女は未だ座り込んだままの俺を見下ろして、楽しげに口角を上げた。あまり温度を感じないようなその目に、俺は『常識』を思い出して慌てて立ち上がる。


「……ごめん、人に名前を聞くときはまず自分からだよね。俺は西条《さいじょう》繋《つなぐ》。突然だけど、よろしく」


 そう言って手を差し出せば、彼女はその手をいとも容易く取りながらにこりと綺麗な笑みを顔に貼り付けた。


「夕凪《ゆうなぎ》こころ。お(・)久(・)し(・)ぶ(・)り(・)ね(・)、ビビりさんの繋くん」

「ビビりは余計だよ。俺は別に怖がりとかじゃない」

「だってものすごく驚いていたじゃない」

「あれは仕方ないだろ……目が覚めていきなり誰かに覗き込まれたら、誰だって驚くって」

「そういうものなのかしら?」

「そういうものだよ」


 呆れながら彼女に言ったところで俺は気が付いた。

 ……彼女は今、『久しぶり』と言わなかっただろうか?


「ねぇ、久しぶりってどういうこと?」


 振り返ってみるが、彼女と会った記憶はない。そもそも、俺に女子の知り合いなんていただろうか。居たとしてもクラスメイトくらいだろうけど、心当たりはない。


「あら、知りたい?」

「そりゃそうだよ。俺、夕凪と何処かで会ってたっけ?」

「そうねぇ……」


 もしこれで初対面でなかったら、かなり失礼な態度になってしまう。だが、聞かずにはいられなかった。

 夕凪は、顎に手を当てて綺麗な顔を少しだけ歪ませる。神妙な顔つきに、やはり出会ったことがあるのだろうと、腹の奥が僅かに冷えたような気がした。


「会ったことないわ」

「…………は?」

「面白い顔ね。会ったことないって言ったのよ」


 じゃあさっきの間は何だ。変に脱力感に襲われ、俺は呆れ混じりの溜息を吐いた。


「人間って何度も生まれ変わるって言うじゃない。だったら、どこかの人生で会っていてもおかしくないかなって思っただけよ」

「そりゃ随分変わった考えだね」

「そうかしら?私の中では普通の考えよ」


 彼女は目を丸くして小首を傾げた。

 まだ出会って間もないが、彼女は所謂『不思議ちゃん』なのだろうと感じた。会話が噛み合っているようで噛み合っていない。おまけに、整いすぎた容姿に、何もかもを知り尽くしたかのような落ちついた声と物言い。俺はこの夕凪こころという少女が、この世の人間ではないような気さえした。


「ところで繋くん。此処がどこだか疑問には思わなかったかしら?」


 そういえばそうだった、と彼女に問われて思い出した。俺は知らずのうちに、見知らぬ場所で倒れていたのだ。ようやく辺りを見回したが、そこにあるのは錆びた浅葱色のフェンスと、少し塗装が剥がれた白い外壁。フェンスの向こうに見えるのは、どこにでもあるような普通の校庭とグラウンド。そのさらに奥には、霞んだ田舎の街並みが見えた。


「あぁ。改めて聞くけど、此処はどこ?」

「見れば分かるでしょう?学校よ」

「確かに見れば分かるけども……」


 ここが学校の屋上であることくらい、俺にだって分かる。実際に入ったことはないが、だいたい頭で思い描く学校の屋上といえば、このようなものだろう。


「私立天明(てんめい)高校。この付近では一番大きな学校ね」

「聞いたことないなぁ……。それに、大層な名前」

「気が合うわね。私もそう思ったわ」


 思ったことを口にすれば、彼女は意外にも同意してくる。案外気が合うのだろうかと思ったところで、夕凪は不意に俺の手に触れた。


「ねぇ、繋くん。貴方に一つ聞きたいことがあるわ」


 突然触れた淡い温もりと、女子特有の柔らかさに思わず胸が高鳴る。これくらいで動じるなど、俺もまだまだ未熟だと心の中で溜息を吐いて、彼女に視線を戻す。


「なに?」

「貴方、ここに来るまでのこと、何か覚えてる?」

「ここに来るまで?そりゃもちろん――……」


 その続きを紡ぐことはできなかった。当たり前だ。頭の中が空っぽだったからだ。

 思い返すが、目覚めるまでの記憶が一切無い。どこで何をしていて、どうして意識を失う羽目になったのか。ここ最近何をしていたのか、何も思い出せない。あらゆる記憶というものを、そのままどこかに落としてきてしまったみたいだ。


 記憶喪失。

 その文字が浮かぶが、それにしては残っている記憶は多々ある。自分の名前も、家族の名前も分かるし、趣味や一般常識もしっかりと脳に刻まれている。

 だが、今まで何をして過ごしてきたのかが何も思い出せない。普通の生活を送っていたという感覚はあるが、その詳細までは何一つ思い出せなかった。


「やっぱりね」

「……どういうことだよ」

「安心して、みんなそうだから」

「皆って、集団で記憶喪失になるものなの?」

「そうじゃないわ。でも、これは『常識』なの。至って普通のこと。だから心配する必要もないし、何か不安を抱く必要もないわ」


 手を離しながら、夕凪が読み聞かせでもするかのような声音で言う。

 不思議だ。

 彼女にそう言われると、それが当たり前のように思えてくる。そんなはずはないのだが、俺が記憶を失ってしまったことは特殊なことではないと心のどこかで思った。


「繋くんは、たぶん事故か何かで記憶を失ってしまったのよ。もしくは、何かしら記憶に関わる病気を持っていたとか」

「そんな記憶ないけど……」

「それすらも忘れているのかもしれないわ。でも、自分のことや家族のことは思い出せるわよね?」

「あぁ、ちゃんと全部思い出せる」

「ここに来た子は皆そうなの。みんな、今までのことを忘れてこの学校に転校してくるの。貴方も、そのうちの一人ね」

「転校生ってこと?」

「そういうことよ。屋上で寝ていたのは、きっとこの学校に早くから来て探検した末に眠ってしまったんじゃないかしら?」

「俺ってそんなに間抜けだったのかな。普通そんなことある……?」

「あら。でも実際居たのよ?転校してきて早々、廊下で眠っていた人とかね」


 思い出し笑いをしながら、夕凪が語る。そんな変人と同じにされたくないな、と内心思いながら俺は状況を整理する。

 俺は記憶を失った。原因は分からない。目が覚めると見知らぬ学校に居て、知らない少女に出会った。

これだけでだいぶ満腹だ。もうこれ以上突飛なことはいらない。

 そう願いたいが、おそらくこの先にはまだ新しいことや不思議なことが待っている。そんな予感が、春風と共にやってきた。


「とりあえず、私がこの学校を案内するわ。まだ来たばかりで分からないことだらけでしょう?」

「助かる……。来たばかりも何も、目が覚めたばかりだから学校内は何も見ていないんだけどね」


 もしかしたら、知らない間に学校を見て回っていたのかもしれないけれど。記憶がない分、それは確認が取れないので仕方がない。


 とにかく俺は、少しでも多くの情報を得たかった。もしかしたらこれは夢かもしれないし、アニメや漫画であるようなタイムスリップとか異世界転生的な展開かもしれない。それはそれで面白いけれど、それは読者側だから面白いのであって、自分がいざその立場に置かれても、その状況を素直に楽しめるわけない。


「一人で百面相してどうかしたのかしら?」

「へ?」

「百面相はさすがに言い過ぎかしらね……顰め面してたけれど」

「あー……なんか、まだ現実味がなくって」

「無理もないわ。最初はみんなそうだもの。だから、早く慣れるためにも行きましょう」

 夕凪は艶やかな唇に弧を描き、俺の手をごく自然に取った。「えっ!?」と間抜けな声を上げる俺をよそに、彼女は地を蹴って駆け出した。

 握られた手が熱い。顔から火が出そうだ。

 女性経験がない俺には、美人に手を握られるというだけでもかなりの刺激だった。けれど別に一目惚れしたとかではない。単純に、彼女が持つ魅力に惹かれているのだ。


 彼女が俺を見つけて声をかけてくれなければ、今頃はまだ屋上で呆けていたかもしれない。それは嫌だなと、屋上でだらしなく寝転がっている俺を想像して眉間に皺を刻む。

 夕凪は、いとも簡単に俺の世界に入り込んできた。まるで、昔馴染みの友人みたいだった。長い間共に過ごしたかのように、彼女は他人との距離を縮めるのが上手い。きっと世渡り上手なんだろうな、と率直に思った。

 そんなことを呑気に考えているうちに、自然と足が止まっていた。もちろん、俺の手を引く彼女が足を止めたからだ。


「此処は?」

「生徒会室よ。私、生徒会に所属しているの」

「言われてみれば、生徒会っぽいね」

「そうかしら?」


 夕凪が不思議そうにするものだから、そうだよと答える。此処がライトノベルか何かの世界だったら、間違いなく彼女はモテモテの生徒会長か何かだろう。まだ此処がどんな場所か分からないから、彼女がモテるのかも、この学校で生徒会がどれくらいの権力を持つのかも分からない。


「生徒会室は、基本的には生徒会の生徒と顧問しか入れないの。貴方が生徒会に入るならば別だけど、この学校で過ごす生徒の大半はここに入る機会はないわね」

「へぇー……俺は生徒会って柄じゃないし、たぶんこの部屋に入ることはないだろうね」

「入ってくれないのね」

「入ってほしかった?」

「いえ、別に。人手は足りているもの」

「なんだ、意外と冷めてるんだね」


 思わず苦い顔をすれば、夕凪は何故か面白そうに謝罪した。たぶん、大して謝る気はないだろう。

 その後も彼女は、図書室や保健室、学年ごとの教室や高校生活で基本的に使用しそうな教室は一通り案内してくれた。

 ごく一般的な学校だった。強いて言えば、旧校舎があったり、無駄に広かったりすることくらいが、普通の高校と異なる点だろうか。大方は、一般的な学校と構造は同じだ。

 それなのに、妙に新鮮に感じるのは、やはり俺の記憶がないからだろうか。学校なんて、小学校からずっと行き慣れているのだから、新鮮さなどもう微塵も感じないと思っていたのに。

 此処は、未知の世界。現実から異世界へと迷い込んだみたいだ。


「さて、案内はこれくらいでいいかしら?」

「うん。だいたいどんな教室があるかは分かった」

「それは良かったわ。慣れないうちは迷うことも多いだろうけど、分からないことがあったりしたら私やクラスメイトを頼るといいわ。みんな優しい人達よ」

「そりゃあ安心だね」


 転校なんて人生で初めての経験だから、無意識に身構えてしまう。まだ顔も名前も知らない新しいクラスメイトたちの顔を想像すれば、胸が躍るような期待と、少しの不安が顔を覗かせた。


「そろそろ教室に案内してもいい頃合いかしらね」

「今って何時?」

「八時半。ちょうど朝のホームルームが始まるくらいの時間ね」

「え、まだそんな時間なのか。なんか、昼みたいに明るい空だったから、てっきり昼過ぎかと……」

「あぁ、そのことを話していなかったわね。というより、忘れてしまっているのかしら」


 相変わらず俺の手を引いたまま、夕凪が思い出したかのようにそう言った。何のことだろうかと難しい顔をすれば、夕凪が俺をどこかへと連れて行きながら答える。


「空はずっとあのままよ。朝も昼も夜も。ずっとずっと、青い空が広がってる」

「なんじゃそりゃ。異常気象……とはまた違うか」

「混乱するのも無理はないわ。貴方はまだ世界の常識を思い出せていないのだから。この世界には、空の変化は存在しない。昔からそうでしょう?」


 一度だけ振り返りながら彼女が問いかけてくるが、そう言われても容易に頷くことはできない。そんな馬鹿げた常識が存在してたまるものか。記憶を失っていても、それが可笑しいことくらい理解できる。

 けれど、まだこれが現実だと決まったわけじゃない。ならば、そのような突飛なことが常識だと言われても何ら不思議ではない。

 もう少しだけ様子を見よう。

 これ以上彼女につっかからないように口を閉ざせば、賑やかな声が廊下の奥から聞こえた。


「いいタイミングね。朝読書が終わって賑やかな声が聞こえるじゃない」

「えっと……今居るのは中校舎だから、二年の教室だっけ?」


 確認するように訊ねれば、「そうよ」と夕凪が答えた。


「最後に案内するのは、今日から貴方が所属するクラスよ」


 そう言われて、教室名が刻まれたプレートを見上げた。


「二年……三組?」

「えぇ。貴方の制服にもホームルーム章が付いているわ」


 そこでようやく俺は自分が身に纏っている制服を目にした。

 仄かに紺色がかった黒味のブレザー。シルバーのラインが入っており、襟部分には蝶をモチーフとした金色の校章と、『23』と書かれたホームルーム章が付けられていた。それから、真っ赤なネクタイ。

まるでコスプレだ。

 それが制服に対する俺の第一印象だった。夕凪も同じデザインの制服を着ているが、彼女が着ると妙に様になっている。俺とは大違いだ。


「さ、制服に感激するのもいいけれど、貴方にはまずクラスの皆に挨拶をして貰わなくちゃ」


 別に感激はしていない。

 目でそう伝えるが、夕凪はニコニコと笑うだけだ。

 白を基調としたスライド式の扉の前に立つ。扉を隔てた向こうからは、がやがやと騒がしい声が聞こえる。どこか興奮したような、それこそこれから何かイベントごとでも始まるかのようなざわめきだ。

 転校生って、こんな気分なのか。

 扉の前で深呼吸をして、俺は思う。ただ学校が変わっただけなのに、こんなにも期待され、注目の的になる。別に特別なことは何も所持していないのに、変な気分だ。

「入ってきてください」と、中から少ししゃがれた大人の声が聞こえる。陽だまりのように優しいその声に、なんとなく安堵した。

 俺は夕凪に視線を送る。そうすれば彼女は、にこりと笑みを浮かべて頷いた。

 行ってらっしゃい。

 そんな風に言われたような気がして、俺はそっと扉を開けた。


 視線の矢が大量に突き刺さる。好奇の目に少し怯えながら黒板の前まで歩き、眼鏡をかけた初老の男性の横に並ぶ。


「今日からこのクラスの仲間になる西条繋くんです。この学校はとにかく広いから、彼が困っていたら助けてあげてください」


 皺の入った顔を歪ませて、担任が優しく微笑した。眼鏡の奥の目が、自己紹介をしろと言っているので、俺は三十人ほどの前で口を開いた。


「西条繋です。今日からお世話になります。よろしくお願いします」


 ぺこりとお辞儀をする。

 何の面白みもない挨拶だなと自分で思った。だが、これ以上話すことはない。まだ自分がどうして転校することになったのか、なぜこうも不思議な体験を妙に簡単に受け入れてしまっているのか、半ば混乱しているからだ。今でもまだ、突然夢から覚めるのではないかと思っている。

 夢にしては感覚がリアルすぎるけれど、そういう類の夢なのかもしれない。それならば良いのだが、肌で感じるクラスメイトの視線も、外から差し込む初夏の日差しも、どう見ても本物だ。

 開けっ放しの扉の方をチラリと見れば、夕凪が小さく手を振った。そしてそのまま、どこかへと歩いていく。

 どうやら、彼女はこのクラスではないらしい。少しの間だが会話を交わした人がいれば、心強かったのに。


「席は南雲《なぐも》くんの隣ですね」


 担任が一番後ろの窓際の席を見つめた。おそらく、今朝用意された新しい席だろう。「南雲くん」と担任が呼ぶと、空席の隣に座っていた、いかにもスポーツ系だと思わせる活発な生徒が手を上げた。


「ほーい。南雲はオレ!やっぱこれ転校生の席だったんだな」


 ニカリと白い歯を見せて笑う南雲という少年は、笑顔のまま俺を手招く。もう一度クラスメイトに軽く頭を下げ、俺は自分の席に座った。


「それじゃあ、今日のホームルームはこれで終わりです。今日も一日、頑張りましょうね」


 見るからに優しそうな担任がそう告げると、生徒たちは騒がしさを取り戻しながら一限の準備に取り掛かった。


「あの……南雲、だっけ?今日からよろしくね」

「おう!苗字じゃなくて名前でいいぞ」

「いや、名前まだ知らないし……」

「そういやそうだった。オレ、南雲一吹。よろしくな繋!」

「うん、よろしくね一吹」


 差し出された手を握り、握手を交わす。正直不安でいっぱいだったが、こうも簡単にクラスメイトと会話をすることができるとは思わなかった。

 その日は一吹に学校のことを教えてもらいながら、転校初日にして楽しい学校生活を送ったのを覚えている。下校時に偶然遭遇した夕凪に「転校初日だったけれど、どうだった?」と聞かれたので、自信満々に楽しかったと答えた。

 これが俺の転校してきた日の出来事。

 突然目を覚まして記憶を失い、いつの間にか転校することになっていたけれど、案外簡単に受け入れてしまった自分がいた。

 その日から俺は、この学校という小さな世界で生きている。いつしか世界への違和感も忘れ、ただただ学校生活を楽しんでいた。


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