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王国冒険者の生活  作者: 雪月透
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リベルテの家に鳥のモンスターが飼われてから少し経ち、寒さも割りと緩くなってきていた。

鳥を飼うことになったものの、レッドたちの生活に大きな変わりはない。

日々の暮らしのためにギルドで依頼を受けて仕事をこなして稼ぐ。

夜間の鳥モンスターの討伐をこなしたことで、タカヒロたちも冒険者として一廉の者だと見られるようになってきていて、当の二人はとても居心地悪そうになっていた。

フクフクはモンスターだからなのか、マイが拾ってきた頃より一回り大きくなっていて、足にマイの所有であることが刻まれた輪をつけられている。

その輪をつけられた数日は気にしていたが今では気にしていなく、それより買ってきた鳥かごでは少し狭そうにしているらしい。

そこで寝起きさせてきたためか、入れるうちは入って過ごそうとするし、鳥かごの上に止まることも多いようで、新しいものに買い換えるのも今のを売り下げることも躊躇われて、どちらもしようとは考えていない。

ひとまずフクフクが止まりやすい場所を作ることで済ませている。

そしてマイたちが世話をしてきたので人に慣れていて、今のところ誰か他の人を襲ったりする気配がないことが、皆の一番ホッとしたことである。


「とても機嫌よさそうなのはいいんだけど、やっぱりこいつ、僕を下に見てない?」

さすがに冒険者の仕事に連れて行けないため、フクフクはこの家から出してはいないが、家の中は自由にはさせている。

もちろん、なにかあればマイが弁償したり掃除したりすることになっている。

そして今、皆が集まっているリビングで、マイがリベルテとどれを食べさせられるだろうかと楽しそうに話をしている横で、フクフクはタカヒロの前に鎮座している。

タカヒロはぐで~っとリビングの机に上半身を伸ばしているのだが、その顔の前にわざわざフクフクがきて座っている。

仲が良さそうなだけに見えるのだが、タカヒロにはわざと見下ろしにきているようにしか見えないらしい。


「そんなことないよ。フクフクは賢いもん。ね~」

マイの声に反応して少し羽を広げて、ねーの部分で首を捻るあたり、賢いのはわかる。

それを見てなんとなく思うことがあるレッドだが、口に出すことはしない。

もちろんリベルテもわかっているのだが、世話をした分、自分に懐いているので特に言うつもりも無いのであった。

これは家での過ごし方によるものだ。

マイと二人で仕事をしている時には頼もしかったりするのだが、家とか王都に戻ってくると大抵、マイの尻に敷かれた行動が多い。

であれば、マイを親と思っているフクフクにすれば、タカヒロは下に見てしまってよい相手となっていた。


「フクフク~。これどうかな~」

マイに呼ばれてそちらに飛び立つフクフク。

「もう飛べるんだね、こいつ……。親飛ばないのによくもまぁ。やっぱりモンスターってところかね」

タカヒロがぼやくが、レッドにしてみればわからないから、何かを口にできようもない。

そもそもモンスターの生態が、はっきりわかっているものではないからだ。

調べると言っても、通常に暮らしているモンスターを観察するというのは危険すぎる。

マイのように小さい頃であったり、卵のときから育てるというのも試されたりしているが、それが通常に暮らしているモンスターと同じになるのか定かではないのだ。

育てるにしても、環境や食事がちゃんと分かっていないことが多いので、うまく生育できた話も多くはないのである。

鳥については貴族が飼っていたり、利用しているのである程度の蓄積された情報はあるかもしれないが、モンスターの生育であれば普通に外に出る情報であるわけがない。

今のところマイたちがフクフクを育てられているのは、通常のがどうなのか気にしていないことと、タカヒロたちがいくらか知って、いや心得があるようだったからであった。

マイたちの方を見れば、フクフクはマイとリベルテに撫でられて気持ち良さそうにしていた。


翌朝、マイの大声から始まった。

朝一番ぐだ~っとしていそうなタカヒロであるが、リベルテの次に起きるのが早く、マイが一番起きてくるのが遅い。

すでにマイを除いてリビングにいて、マイが起きてくるのを待っていたのだが、マイの大声を聞いてレッドとタカヒロが階段を駆け上がっていく。

リベルテは一つ息を吐いて、自室に戻ってからマイの部屋に向かう。

レッドたちが緊急とばかりにマイの部屋の戸の鍵を、家主特権であるマスターキーで開けて入る。

そこには腕を押さえて涙目で転がっているマイと、心配そうに部屋の上の方を旋回しているフクフクの姿だった。


「フクフク。こちらにいらっしゃい」

やってきたリベルテが肘を上げて呼ぶと、リベルテの手甲に足を掛けて止まる。

フクフクを落ち着かせるように頭を撫でた後、マイに声をかける。

「マイさん。フクフクはモンスターだってこと忘れてませんか? もう大きくなってるのですから爪も鋭くなってますよ」

そこでレッドたちも理解する。

起きてフクフクにいつものように声をかけたはいいものの、フクフクがマイの手に止まろうとして爪が刺さったのだと。

少し落ち着いてきたマイはまだ涙目ながらも、恥ずかしそうにして傷を治す。

レッドの眉間に皺がより始めたが、家の中だしと思って気を静める。

痕も残るし早くに治してしまいたいのはわかるのだが、使い慣れてきているようにも思え、レッドはそれが危うく感じてきていた。


「ん~、フクフクの爪を……切るわけにはいかないかな? どうなるかわかんないし」

タカヒロは興味がなくて調べていないだけだったが、モンスターを飼うことの難しさを書いた本があり、その中にはモンスターの爪が痛く危険なので切ったところ、痛みで暴れまわったとか、そのまま死んでしまったことが書かれている。

人の感覚で行うことがモンスターを凶暴化させたり、殺したりしてしまうという違いの表れである。


「なにか傷つけずに済むように、何か着けさせてみましょうか」

リベルテがフクフクを止まり木の近くに立ってフクフクを促しながら口にする。

マイとしてもフクフクとのふれあいの時間を持てるためにと勢い良く頷いていた。

「着けるってもなぁ」

柔らかい物がいいのだろうが、それはフクフクが止り木などに止まろうとしたときに掴めなくなりそうであるし、そういった素材をフクフクの足、爪に合わせて繕うのは細々としていて面倒くさそうである。

タカヒロとレッドが嫌そうにするのも無理はなかった。

この後、レッドとタカヒロはギルドに仕事を探しに行ったのだが、マイたちは家に残り、ずっとフクフクの爪対策を作り続けていた。


「ぴったりに作ると爪が伸びたときに突き破ってしまいそうですよね」

「うわ~、それは怖いね。爪先部分を厚くしてみれば少しは、かな?」

端切れを重ねていくマイであるが、リベルテはそれを止める。

「布では相当重ねないといけません。それではフクフクにとって邪魔でしかないでしょう?」

「そう言われれば……。爪で大丈夫になるには、これくらい? ……無いね。じゃあ革とか?」

「革でもいくらか重ねないとでしょうねぇ。……それに革は端切れでも少し値が掛かるので……。爪先以外の部分に使ってあげたいのですよね」

「ん~」

あれこれと意見を言い合う二人の間に居たフクフクは目を閉じて大人しくしていた。


レッドたちが帰ってきた頃には、集中しすぎたのだろうレッドたち肉体労働組より疲れ果てているマイたちが突っ伏していた。

リベルテが着けていた様に人の防具に手甲と言うものがあるが、フクフクは爪先までしっかりと革で覆われたものを着けていた。

部位が部位だけに靴と言った方がよさそうであるが、当然爪先は丸く削った木で覆っていて刺さらないようになっている。

爪先以外は薄めの革で合わせていて、フクフクが掴もうとする動きを邪魔しないように気を使ったとリベルテはいい笑顔でレッドに語ってくれた。

実際の爪先より長い作りにするよう測ったらしいが、フクフクはまだ大きくなるだろうと言うことで、フクフクが嫌がり始めるとかしていたらまた作り直すそうである。

そこまでになってなおまだやる気と言うことで、何かを飼うということの責任なのか強く感じるものであった。

フクフクは少し嬉しそうに机の上でダレているマイの腕に止まっていた。

ここまでお目通しいただき、ありがとうございます。

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