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空が白くなっていく。
ある者たちは疲れきっていてヨロヨロと起き上がり、またある者たちは決死の表情で武器を手に取っていた。
「怪我人たちを優先して逃がせ! 動ける兵たちは敵を食い止めるのだっ!」
ベルセイスが堂々とした口調で指揮を取る。
鎧は薄汚れてしまっているが、そんなものは気にならないほどの輝かしさを持っていた。
今のベルセイスは紛れも無く、オルグラント王国の騎士団長の姿であり、この場においてベルセイスの命令に徒に不服を唱える者はいないだろう。
若いから、実績が無いからと侮られていた部分は、今この状況において彼を貶める要因にはならない。
本人の力量は先日のレッドたち冒険者の救出で示しているし、なによりはっきりとした覚悟が彼の立場を揺るぎ無い物にさせたと思えた。
「レッド……」
リベルテが心配そうにレッドを見る。
先日の戦闘で、レッドはリベルテが亡くなってしまったものと思い、キスト兵に向かって力の及ぶ限り暴れまわり、動けはするが軽いとは言えない怪我を負っている。
レッドとしては、今のベルセイスたちとともにもう一度暴れて、少しでも足止めに回りたいと言う気持ちがあるが、この怪我では足手まといにしかならないことも分かっていた。
それに……リベルテも、多少なりとも負傷しているのだ。
助かったとは言え、『銃』に撃たれていたのだから、レッドはそちらが心配でならなかった。
レッドは自身の怪我についてはそこまで気にしないのだが、リベルテの怪我については、どうにも心配でならなく、いつからこんなに不安がるようになったのだろうか、と少し考えてしまう。
「進めっ!!」
ベルセイスの号令に押されるように、怪我を負っている兵と冒険者たちがオルグラントに向けて進み始める。……生きて帰るために。
レッドは視線を感じて目を向けると、ベルセイスと目が合った。
声を掛けられる立場では無いし、レッドたちもオルグラントに向けて進んでいる一団にいるため、声を掛けられる距離でもない。
だから、レッドはただ頭を下げた。
どうか、ベルセイス、おまえも生き延びて欲しい、と願いを込めて。
負傷している者たちが歩いているのだから、進みは当然遅い。
純粋に、軍の戦力を少しでも守ろうと考えるのであれば、怪我人たちこそ足止めに回されるはずである。
しかし、そんなことをすれば国は、国を守る立場にいる騎士たちは、その信頼を大きく損なうことになる。
今回の戦争に強制的に参加させた者たちを見捨てて、自分たちだけが生き残るのだから、当然なことだろう。
だからこそ、怪我を負っているモノたちを見捨てず、可能な限り生きて帰せるようにとベルセイスたちは動いたのだ。
彼ら騎士たちの意地もあったのかもしれない。
その思いがわかっているからこそ、この一団にいる者たちも誰も見捨てていこうとしないし、皆で生きて帰るのだ、と誰もが思っていた。
「はぁっ……。はぁっ……」
起きた時はそこまで感じなかったが、すでに足取りが重くなっていた。
もうかなり歩いた気になっていたが、振り返れば、まだそんなに進んではいないようだった。
隣に目を向ければ、リベルテも険しい表情で歩いている。
皆の表情に明るさなんて欠片も無い。
キストに攻め込んで負け、そして逃げているのだから、明るくなれるわけもない。
暗い気持ちは、確実に足取りにも影響を与えていた。
キストに進軍している時も明るいと言えなかったが、戦意はあったから、前に進むと言う気持ちがあったのだ。
しかし、今はその逆である。
そして、ただオルグラントに向けて進んでいるだけではない。
キスト兵から追われているのだ。
追う側と逃げる側では、どちらの方が気が軽いかと言われれば、そんなものは追う側に決まっている。
怪我をしている状態で、追ってくるキスト兵から逃げなくてはいけないのだから、どうしたって気持ちは沈んでしまう。
それでもあの場に残ったベルセイスたちのことを思い、皆、黙ったまま、ゆっくりとではあるが足を止めずに進んでいく。
誰もが考えながら、そうならなければ良いな、と思っていたありえない願いが終わりを告げる。
後ろから喚声が聞こえてきたのである。
決して遠くは無い戦いが始まった声に、じわりと汗が吹き出てくる。
轟音こそ聞こえなかったが、始まってしまったことを考えたら、楽観できることなど一つも無い。
足止めに残ることになった兵士たちがどこまで凌いでくれるのか。
そして、どれだけ生きて逃げ延びられるのか。
振り返ることも、立ち止まることも、するわけにはいかない。
すべてを無駄にさせるわけにはいかないのだ。
険しい表情で皆、ただオルグラントへ向けて足を動かすしかなかった。
「……もう、だめだ……。俺を、置いてってくれ……」
一人がその場に崩れるように膝をついた。
もう歩く体力がなくなってきており、そこにキスト兵が追ってきていると言う現実を突きつけられ、気力も尽きてしまったらしい。
一人が弱音を吐き出すとそれに引き摺られるように、一人また一人と座り込み始めてしまう。
周りが諦めていないからなんとか奮い立たせてきた気持ちも、一人が諦めてしまえば耐え続ける気力が折れてしまう。
「ここにきて諦めるなよっ! 俺たちのために、あっちで戦ってくれてるやつらがいるんだぞ!」
レッドはが諦めだした者たちに声を張り上げる。
ここにいる者達のために、今あそこで傷つき、倒れていっている人たちがいるのだ。
その人たちの戦いを、死を無意味にしてはいけない。
「本当に終わって良いのか? やりたいことはないのか? 会いたい人はいないのか? 俺は帰ったら食べて、飲む! 生きて帰ったことを心から喜ぶんだ。……そして、死んでいった人たちのことを悼む。それは生きてなきゃ、出来ないことだからな」
「はは……、そこは女とかじゃないのかよ。俺はやっぱり女だな。ちゃんと好きだって言いたい相手がいる。それに気づいたからな」
「……親を一人にするわけにはいかねぇよな。もう年だから、俺が見てやらなきゃ……」
「貯めてたお金、あいつらに取られるんじゃないか!? それは許せねぇ! こんなとこで終われるか!!」
レッドが帰えったらやりたいことを口にすると、皆が次々とやりたいこと、心残りを口にし始める。
どんな状況にあっても、誰にでもどんな小さなことでも、望みが、願いがあるはずなのだ。
くだらないことで良いのだ。
小さなことで良いのだ。
大よそ無理そうなことでも良いのだ。
それが、気持ちを立たせてくれるし、動く力になる。
隣を見ればリベルテが小さく笑っていた。
レッドはリベルテに曖昧に笑み返す。
先ほど口にした言葉で変なことを言ったつもりは無い。
帰ったらやりたいことをそのまま口にしただけなのだ。
ここで言う気になれなかった言葉を除いて。
くだらないことでも、少しでも笑えれば、気力は戻ってくる。
座り込んでしまった人たちが立ち上がる。
近くに居た人が手を貸して立たせたりもしていた。
このまま行けば大丈夫そうだと思ってしまうが、ここで立ち止まってしまったのは良いことではなかった。
足止めに残ってくれていた兵たちを迂回して、逃げていたこの一団を迫ってきているキスト兵の姿が見えてきたのだ。
やはり、『神の玩具』たちの事を考えれば、存在するかもしれない神と言うのは、優しい存在ではない、とレッドは内心で毒づく。
追ってきたキストの兵に、他の人たちも気付き、緊迫した雰囲気になっていく。
「まだ怪我が軽いヤツ、動けるヤツは足止めに行くぞ。他は進め」
相手はこちらを視認しているのだから無駄とわかっているが、少しだけ声を落として意見を述べる。
いつのまにかこの場を仕切りだしていたことに気付いて口を噤もうとするが、誰からも文句は出なく、そのままレッドが指揮を取っていく。
リベルテにも逃げる一団に加わって欲しかったのだが、リベルテはこの場に残り、レッドの傍から離れようとしない。
逆に、にっこりと笑ってレッドを見ていた。
レッドの考えはお見通しだと言わんばかりで、退く気は無いと物語っていた。
リベルテを思って逃げる一団に加わってほしかったのに、この場に残ったことに腹立たしくも思うが、この状況でも逃げずに傍に居てくれることの方が嬉しくも思える。
レッドは剣の柄を握る手に力を込める。
先ほど自分で言ったとおり、ここで終わる気など無い。
二人でオルグラントへ帰るのだ。
怪我を負っている一団が進んでいる先には、旧アクネシアの街があるが、あそこには子どもと老人たちばかりが残っている。
レッドたちを含む一団が、軍とは別行動をしてまで手助けをしてきた場所でもあり、さすがにそこで戦う気はなかった。
レッドたち残る一団は、まだキスト兵たちと距離があることから、少しでも狭い道を選んで体を休める。
休みすぎると動く気を失くしてしまうが、歩き詰めだったのだ。
少しくらい休まないと、動けるものも動けなくなってしまう。
レッドはこの場に残ってくれた面々の顔を見る。
誰も絶望した顔は見せていなく、笑みさえ見せているほどだった。
別に自棄になっているわけではない。
ここに残って戦うことに納得していて、負ける気もこれっぽっちもなくて、皆で生きて帰れるとを信じているのだ。
キスト兵の姿がはっきりと見える距離となった。
キストの兵が声を張り上げて、突っ込んできているのが見える。
逃げている者たちを追っている側なのだ。
簡単にレッドたちを倒せるだろうと考えていて、まったく負けるかもしれないなんてことも考えてもいないキスト兵は、意気が高い。
そんなキスト兵に向かってレッドたちは剣を振るう。
生きるためにぶつかり合った。
キスト兵たちは、レッドたち逃げていた者たちが逆に立ち向かってきたことに、幾分か戸惑いを見せる。
これは、キスト兵が元々、訓練された兵ではないことが関係していた。
元がただの平民なのだ。
威勢よく抵抗してくると想定していなかったのである。
数で劣っているレッドたち一団だが、相手の戸惑いもあってか押し込まれず、善戦を見せていた。
しかし、ここに居るのは怪我をしているために退っていた一団なのである。
ぶつかり合う前に少し休んだとは言え、長く戦える状態ではなかった。
少しずつ限界を迎え始めていく。
追ってきたキスト兵は逃げる者たちを倒すだけと考えていたからなのか、薬こそは使っていなかったようだが、怪我人と万全な状態の者たち。
その差がはっきりと時間が経つほどに出て来ていた。
呻き声を上げて倒れていく仲間たち。
一緒に生きて帰ろう、と笑いあった者たちが倒れていく。
一人また一人と減っていくことが悔しく、悲しく、焦りを募らせていく。
レッドはリベルテと背中を合わせて立っていた。
お互いにまだ、立っている。
他にもまだまだ立っている人たちがいる。
あの場所でも、ベルセイスたちがまだ戦っているはずだった。
後ろでは、怪我を負っている人たちが必死で逃げているはずだった。
帰ったらやりたいことがあるのだし、ここで簡単に終わりを迎えるわけにはいかない。
レッドもリベルテもだいぶ苦しくなっているが、リベルテと目を見合う。
お互いに、口元に笑いを浮かべる。
諦めるつもりは無いが、その先はわかっていた。
ただ最後まで抵抗し続けるだけだった。
キスト兵はレッドたちの抵抗に怯みは見せるが、数の多さは支えになっていた。
倒れ始めていく者たちに戦意を高め、残っているレッドたちに剣を、槍を振るおうとする。
抵抗し続ける意思はあるが、体は思うようには動かなくなってきている。
キスト兵の攻撃をただ受けるしかないレッドたちの間を、大きな風の音が通り抜ける。
風が吹いた後、キストの兵たちが突然、血を流して倒れる。
あまりの急激な出来事に、何事かとキスト兵が周囲を警戒して戸惑い始める。
レッドも内心で呆気に取られていた。
誰が何をしたのかはすぐにわかった。
わかったが、ここで来るとは考えてもいなかったのだ。
戸惑い、困惑しているキスト兵たちの横合いから、タカヒロが飛び出してきて剣を振るう。
走り続けてきたのだろう汗だくの姿だった。
あのまま遠くから魔法を使い続けていれば良かったのにと思ってしまうが、魔法を使える余裕が無かったのかもしれない。
タカヒロが必死に剣を振るってキスト兵を牽制する。
魔法に比べれば、タカヒロの剣は大したことはない。
年が下のレリックや、他の冒険者の方がずっと腕が立つくらいである。
本人もそれがわかっているはずなのに、魔法が使えない状態でも駆けつけてくれたのだ。
この状況に飛び込んできてくれたのだ。
「おらぁぁっ!!」
レッドはまだ動く腕に力を入れるように声を上げて振るう。
突然現れて動き回っているタカヒロに戸惑い、レッドに隙を見せていた相手である。
レッドの剣を防ぐことも出来ず斬り倒される。
レッドは萎えてきていた気持ちに活を入れて、体を動かす。
あのタカヒロの姿をみて、冒険者の先輩としてへばっているわけにはいかない。
「やぁっ!」
リベルテもまた足を動かして、キスト兵の防具の隙間を斬りつけていく。
あの『銃』を防いだ短剣は、刀身をしっかりと保っていた。
今のリベルテに残った、たった一つの武器である。
タカヒロが剣を振りながら、時折、魔法を使っていた。
しかし、先ほどの風に比べると牽制にしかなっていない。
それでも剣と魔法を混ぜて攻撃されたら、容易に防ぎきれるものではない。
キストの兵がどんどんと手傷を負い、倒れていく者が出てくる。
この状況にキスト兵に動揺が広がっていく。
優位だと思っていた状況が覆され、自分たちが倒されていくのである。
だれだって死にたくはないし、勝っていると思っていた状況からの落差が、動揺を広げていく。
流れはレッドたちに傾き始めていた。
そこに地響きが近づいてくる。
「蹴散らせっ!!」
ベルセイス率いる兵が合流して来たのである。
足止めの戦いをして、なお多くの兵が健在だった。
ベルセイスの力は確かなのだ。
でなければ、騎士団長の後継にあがってくるわけが無い。
ダメ押しのようにベルセイスたちが合流したことで、キスト兵は逃げ出していく。
逃げている相手なのだ。
自分たちの国や土地を守れたのだから、ここで命を掛けて留まる理由は兵士たちにはなかった。
逃げていくキスト兵をレッドたちはただ見送り、戻ってくる様子が無いことに地面にへたり込む。
さすがにもうこれ以上は動けなかった。
オルグラントまで逃げなければ安全ではないのだが、せめて少し休まなければ歩けなどしなかった。
「……レッドさん。無事そうで、良かったです……」
「おまえに、助けられたよ……。ありがとう」
「本当に、助かりました。タカヒロさん」
レッドたちが生きていたことに、タカヒロが安心したように口にするが、タカヒロも散々動き回ったため、地面に寝転がって休んでいた。
レッドたちがそんなタカヒロに礼を言うと、タカヒロは照れたのかそっぽを向く。
レッドたちも地面に背中を預けて空を見る。
青空が広がっていた。
あの後、レッドたちはオルグラントへと無事に帰還することが出来た。
キストもあれ以上は追ってこなかった。
オルグラントを追い払えたことで良しとしたのだろう。
キストとて帝国とも戦争状態にあるのだ。
二国を同時に相手取る余裕があるわけではなかったのだ。
そのため、レッドたちは残りの食料と水に注意しながら進み、最後はもう少しでオルグラントに戻れる、と言う気力だけで歩き続けた厳しい道のりだった。
帰還したレッドたちを蔑むような目は一つも無い。
誰もが帰ってきた者達のことを喜んでくれていた。
多くの兵を見送り、帰ってきた兵はその数を減らし負けてきたのだから、キストへの憎しみはますます募るだろう。
しかし、失った人が多いだけに、また攻めようなどと言い出す者たちは出てこない。
また専守であることを主体にした国の運営に戻っていくはずである。
「レッドさん! リベルテさん! タカヒロ君!!」
家に帰るとマイが涙を浮かべながら駆け寄ってくる。
フクフクも飛び回って喜んでいた。
帰ってこれたんだ、と言う思いを強く感じさせる。
ここが皆の帰るべき家であり、ここに居る者たちは仲間で、家族みたいなものなのだ。
「あ~、タカヒロ君もリベルテさんもボロボロじゃない! レッドさんは……そんな気がしてた。いつもだもん。これじゃあ、リベルテさんも何時まで経っても気が休まらないですね?」
「……本当ですよ」
マイの感想にリベルテが苦笑しながら同意する。
他人事のようにしみじみと言うリベルテに、レッドは言い返す。
「リベルテだって『銃』で撃たれて、危なかったじゃないか。あれは本当に心配したぞ……」
「ええ!? リベルテさん、撃たれたんですか!? 大丈夫なの!?」
まさかリベルテがそんな目に遭っていたなんて考えてもいなかったマイは、リベルテの体のあちこちに触れていく。
痛めていた骨の所を強めに触ってしまったのだろう。
リベルテが痛さに顔をしかめて、マイがあたふたする。
そんなリベルテを見ていたレッドに、リベルテは少し意地悪そうに笑顔を見せる。
「心配したと言うなら、いつも私がどれだけの気持ちになっているか、わかったのでは?」
無事に帰ってこれたためか、気持ちが高ぶっているらしく、ここぞとばかりに言ってくる。
そんなリベルテにレッドも引き下がらない。
……レッドも無事に帰ってこれたことに気が高ぶっていたのである。
「ああ、本当にな。心配でたまらなくなるから、しっかりと掴んでおかないとダメだって思ったよ。……リベルテ、結婚しよう」
以前にもそれらしいことは口にしていた。
だが、あの時は弱った体に気持ちも引き摺られていたし、その世話をしてくれているリベルテへの申し訳なさから出てきたことは否定できない。
だからこそ、リベルテも流していた。
だが、今ここではっきりと立って、目の前で口にする。
紛れも無い心からの言葉だ。
これまで長く共に冒険者を続けてきた掛け替えの無い相棒であり、長く一緒に生活しているからもうその関係と言えなくも無いが、あの時、目の前で倒れたリベルテを失いたくないし、傍から離したくないと気付いた。
オルグラントに生きてか帰ったらやりたかったことで、言わなかったこと。
それを勢いのまま言ってしまい、レッドは内心やっちまったと思うが、必死に表情に出さないように取り繕っていた。
「きゃぁ~~~」
レッドの言葉に、リベルテではなくマイが高い声をあげて、きゃいきゃいと騒ぐ。
当人より騒ぐマイに、レッドは少しだけ落ち着きを取り戻してくる。
「ついに! ついになのね! レッドさんてば、本当に遅いんだからっ!」
「え、いや……。え? すまない?」
だがレッドは落ち着いてきても、マイはどんどんと勢いづいてくる。
その威勢にレッドは何となく謝ってしまう。
なんとなく腑に落ちなくタカヒロに目を向けると、タカヒロはにやにやとレッドたちを見ている。
レッドのプロポーズの言葉に、プロポーズに関係ないマイのテンションが高い。
マイはちらちらと何かを期待するようにタカヒロにも視線を送っているようだが、タカヒロは必死にマイの視線を避けている。
レッドはなんとなく、タカヒロも観念した方が良いのにな、と考えながらリベルテの返事を待っていた。
「リベルテさん! 良かったですね!」
いつまでも返事をしないリベルテに、何かを知っているらしいマイがことさら喜んで抱きつくが、リベルテは何の反応も返してこない。
レッドが気まずげに様子を窺っていると、マイが慌てだす。
「あ~~~、リベルテさんが気を失ってるぅぅ!」
「ちょ!? 怪我が悪化したのか? 早く寝かせないと!」
レッドたちはリベルテを抱えて家に飛び込む。
なんとも締まらない感じではあるが、一日が終わりを迎えていく。
そんな日々が、騒がしくあるが楽しくもある。
辛いことも悲しいこともある。
しかし、小さなことでも、くだらないことでも一緒に騒げる仲間が、笑い合える相手が居ることが何よりなのだ。
職にあぶれた者たちが就く冒険者だから、手助け仕事しかなく、大した稼ぎもないけれど、こうして日々を生きていける。
どんな仕事であっても、稼いで生きていることにダメな話なんてどこにもない。
世界の動きに巻き込まれるだけだが、今日もこの王国で生きていく。
ここまでお目通しいただき、ありがとうございました。
これで完結させていただきたいと思います。
誤字脱字、書き方のひどさなどある物を、最後まで目を通していただけことに感謝しかありません。
完結後もいただいている誤字報告の修正を続けますので、あると思いますが、あったらご連絡をお願い致します。
またなにか思いついたら書きたいなと思います。
見直しをそんなにしないので変わらず酷いと思いますが、また書き上げることがありましたら、目を通していただけると幸いです。
本当にありがとうございました。