フェリクスside①
この国には『月の妖精』『月の姫』と呼ばれる少女がいる。
美しく輝く銀の髪、透けるような白い肌、宝石のような水色の瞳。まるで最高級の人形かのようなその姿。
8歳にしてその美しさは知れ渡るが、その姿を拝めることは滅多にないという。それは例え王族であろうとも…
なぜなら!あの親バカ親父が、隠し続けているからだ!
屋敷から出さず人前に出さず!王族から呼び出されようと何かとごまかし登城もさせない
婚約が決まって二年
婚約者のはずなのに会えないとか
そして、この令嬢が人形のように見えるのは
やはり親バカのせいだろう。
姉兄に使用人全てが溺愛した結果が無口無表情。自分から何かを望むことや、感情をだすのが苦手らしい。
さらに。そこに親バカ親父が家からださなかった弊害が。…屋敷の者としか関わっていないから、極度の人見知りときた。
ローランから聞いてはいたが…確かに人形が歩いているようだ。
……あの時とは真逆だな
まあ、よく見てみると、目や口もとからなんとなく…わかるかな
たしかにこれで顔が緩んだところを見たら…あの姉兄みたいにはなるか?
とりあえずローランはこちら側についたからな。バカ親父がいない内に少しでも慣れてもらわなくては…
初めての顔合わせではあるが、名前呼びはなんだかんだ許可してくれたし…花は好きなようだから庭園で気に入った花を贈るか
そして庭園を案内していると異変が起きた
「…っ…!」
「ローズマリー?」
立ちくらみをおこしたという彼女はそのまま倒れてしまった