女の子になれます
第2話水瀬の女の子
「水瀬。ちょっと水瀬」
気だるいまどろみの中で、目覚めよと呼ぶ声が聞こえ、
「んぅ……なぁに……?」
まぶたを開いた視界の中にいた美女は、蠱惑的な微笑みを浮かべ、その間近で見ても粗の見つからない美しい顔を近づけ、
「……ふぇっ!?」
次の瞬間、強引に唇を奪われた。
「な、なにするんだよ。火花姉さん」
「今日は私に付き合ってくれる約束でしょ。いつまでも起きないから起こしてあげたのよ」
水瀬の姉、火花は悪びれずに言って、ペロッと自分の唇をなめた。
日曜日の朝のこと。
確かに今日は買い物に付き合う約束をさせられていた水瀬である。
だが、昨日は用事があって寝るのが遅くなってしまったのと、家を出る時間までは決めていなかったのでつい油断してしまったのだった。
だからといって、キスをしてくることはないだろう。常識的に考えて。
けれど、弟に対して目覚めのキスを選択する相手に文句を言ってもやぶへびになりかねない。水瀬はささやかな抵抗として姉の行為を『王子様アタック』と名付けて少し気分を晴らす。
姉の用意してくれていた朝食をとって、外出する支度をしていると、
「あんたなんで男の格好しているのよ」
「え?」
「あたしと一緒なんだから今日は一日女の子に決まっているでしょ。ほら、時間ないんだから早く」
姉にせかされ、散々抵抗したものの、最終的にはしぶしぶ折れて。
「もう、しょうがないなぁ」
水瀬は、女体化した。