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失言

「まず、事件が起きるまでが長くないかね? 主人公が朝目を覚ましてから顔洗ってごはん食べて登校するとか、そんな普通のことを長々書かれてもかったるいだけだろう」

「うぐ……それは、日常シーンを書くことで世界観を説明をね……」

「だとしても、無駄に長すぎる。全然伝わってこないし」

「……いや、無駄なのは惡ではないス。面白味、けれんみが物語上では一件無駄に思える箇所に宿ることはよくあることスから」

「四狼、お前……!」

「けど、これは面白味が全く含有されてないス。正真正銘の無駄。ゴミクズ文章、産廃ス。話の下手な女子がひたすらオチのないトークをしてるようでただただ不快。なにこの自己満小説」

「四狼、てめえ……!」

「話の流れもどっかで見たようなテンプレ展開でデジャヴをぬぐえないな。なにこの主人公。実力はあるのに周囲から認められていないとか。いかにも中二病が好きそうな設定じゃないか。覚醒状態になると世界を滅亡させかねないから、過剰に力がセーブされていて最弱に甘んじていると、ほほう、そいつは大したものだ。僕個人としては好きにはなれないね」

「う、ぐ……」

「……ヒロインがひどいス。独善的で視野狭窄。スキが多いくせに下着を見られて怒るとか理不尽なところが多いのは何故スかね。安易なツンデレ設定でヒロインの魅力が出るとか思ってるやつは死ねばいいと思うス。ほら、このお涙ちょうだい的な不幸な生い立ち、家庭環境もチープ甚だしいス。設定雑だし」

「文章もノリに任せて書いている感があって、メリハリがきいていないのだな。君はいつもテンポ重視というが、粗雑な文章の免罪符にしてはいないかね。ほら、困ったらすぐに体言止め。擬音。同じ言い回し。君はアカホリ先生か。氏は意図的にこれをした偉人だが、君は文章技術を上達させる修練を疎かにしている無意識の怠惰に過ぎない。恥を知りたまえよ」

「コメディシーンや女の子をかわいく見せるシーンも、イマイチなにを書こうとしてるのか見えないス。シーンの目的や意義を定めず、手癖で既存作品にあるようなものを書いているから話がボヤけて曖昧になるんス。ほら、ここと、ここ。シーンを一つにまとめられるんじゃないスか?」


 小林と四狼から湯水のように沸いてくる厳しい意見と罵倒の数々に、勇介のメンタルゲージはゲシゲシと削られ、いい歳した男の子だというのに無様に涙目。

「もうやめて! 勇介君のライフはゼロだよ!」

 見ていられなくなった水瀬は勇介を守るように間に入った。

「なにもそこまで言うことないじゃないか。ボクたち、友だちだろ……?」

「水瀬……」

「いや、しかしだね、水瀬君……」

「……なんだ、勇介は水瀬に守ってもらうんスか。いいご身分スね」

「茶化さないでよ四狼君。なんと言おうと、彼の人格まで否定するのはおかしい。たかが創作の話じゃないか」

「たかが、創作……?」

 ピキッと。

 空気が凍る。水瀬は自らの失言を悟った。


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