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ヒロインは水瀬
第1話ヒロインは水瀬
マンガの主人公が伝説の勇者の血筋だとわかると失望する。
華々しい活躍、運命的な出会い、血湧き肉躍る大冒険。
なんてものは彼が彼として生まれたときには決まっていて。
ああ、やはり、自分が欲しいものは、特別な人間のためのものなのだと思うと萎える。
わかっている。
彼らには非はない。才能に恵まれ、その上で努力を重ねてきたからこそ、主人公はヒーローたりえるのだ。
才能のないということにあぐらをかいている、平凡な自分。
結局のところ、責めるところはそこなのだ。
しかし。
おのれすら自己の可能性を見限ってしまっては誰がそれを守ろうというのだろう。
実の両親すら「健康で犯罪さえしてくれなければそれでいい」と我が息子の凡庸さを疑っていないというのに。
俺もそう捨てたもんじゃない、の精神。
やる気になれば、ちょこっとは、やれる。
ただ、なにをどうすればいいのかは皆目見当がつかない。