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夜の施設などというのは、あまり気味のよいものではない。特に今日は、夕方位から風が強くなり、カーテンの外からはゴウゴウという音が不気味に響いてくる。

ブランは、深夜の事務室にひとり佇んでいた。先輩のフリントは入居者の巡回に行っている。今、『太陽の家』にいる入居者以外の人間は、ブランとフリント、玄関脇の外の小屋にいる警備員の3人だけである。


「さてと、お茶でも入れるか」


ブランは、手元の資料を閉じ、大きくのびをすると、棚から茶葉を取り出すために立ち上がった。マメなブランは、先輩と警備員の分までカップを用意すると、火鉢の上に吊るされた薬缶の方に目を向けた。


「もうすぐ沸くはずなんだけどな」


少しずつ、薬缶の口から湯気が出てくるのを見ていたブランは、不意に眠気に襲われ、自分の体が傾いていくのを感じた。


シュッ!!シュッー!!ズゴゴゴゴ…


ブランは、耳障りな音で目を覚ました。音自体は、何の事はない、目の前で薬缶のお湯がほとんど蒸発してしまい、空炊き寸前、最後の湯気を口から吐き出している音であった。ブランは慌てて薬缶を火から下ろすと、まだモヤモヤとしている頭を必死に働かせた。

先ほど急激に押し寄せて来た眠気はどう考えても不自然である。疲れから来るそれとは、明らかに違うもののように感じられた。不吉な予感のしたブランは、そのまま事務室を飛び出し廊下に出た。


「あっ!!」


ブランは思わず声をあげてしまった。事務室を出て少し離れた廊下に人が倒れていたのだ。


「先輩!!大丈夫ですか!!」


倒れていたのは、先輩介護士のフリントだった。ブランが抱き起こすと、フリントの口から気持ち良さそうな寝息が聞こえてきた。


「え?寝てるだけ??」


少々拍子抜けしてしまったブランだったが、フリントが他にどこにも異常がなさそうだと確認をとると、さっそく彼を起こしにかかった。


「先輩!!せんぱ〜い!!」


しかし、いくら揺すっても呼びかけてもフリントは目を覚まさなかった。頬を叩いてもダメだとわかると、ブランは先輩を起こすことをいったんあきらめ、入口の警備員の小屋へと走った。


「そんな…」


しかし、こちらも状況は全く同じであった。警備員は、机に頭を突っ伏したまま深い眠りに落ちていた。こうなると、今施設内にいる人間は、すべて同じ状態にあるのかもしれないとブランには思えてきた。


「これは…もしかして…」


激しくイビキをかいて眠りこける警備員を見ながら、ブランの中にひとつの予感が浮かび上がってきた。その予感のおもむくまま、ブランは再び建物内に入り、三階の一番奥の部屋を目指して駆け出した!!


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