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「よくもいちゃもんつけおったな〜、このアリババが!!」
「うるさいよ、筋肉ジジイ!!」
今日も「太陽の家」の食堂に元気な罵声が響き渡る。
向き合ってにらみ合うアリッサとガンダルガ、その後ろからブランとフリント、二人の介護士が、それぞれの担当する元冒険者をなだめている。
「アリッサさん、とにかく魔法はやめてくださいよ!!」
「ガンダルガさん、血圧をあげるのは非常によくないです!!」
結局、クビを覚悟で施設に戻ったブランだったが、施設長のツールースから言い渡されたのは「減俸三カ月」の処分のみだった。新人のブランにとって、経済的には相当の痛手であるが、驚くべき軽い処分といえるだろう。
アリッサはというと、これまた当たり前のように施設に居座っている。ブランが最近気づいた事に、どうやらツールースは、アリッサに様々な弱みを握られており、彼女には逆らえないようなのだ。自分の事をかばってくれたのも彼女なのかもしれない。確か減俸を言い渡された時のツールースの言葉は
「減俸三カ月です…あとが怖いんでね」
であった。そんな事を思い返していたブランの耳に、鋭く先輩の声が響く
「おいブラン!!魔法魔法!!」
見ると、すでにアリッサの頭上には巨大な火球ができていた。
「わーーー!!」
必死の形相で止めに入りながらも、介護士ブランの顔は、どこかキラキラと輝いていたのだった。
ドカ〜ン!!