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ブランは三階にある一番奥の部屋を目指して、廊下を足早に歩いていた。

『太陽の家』は、四階建ての建物で、およそ40人の入居者がおり、10人の職員が勤めている。無料だが、入居条件の厳しい国立の施設と違い、豪商として有名なツールース一族が、手広い事業の一環として始めた民間の施設であるため、有料だがゆるやかな条件で入居することができる。

必要に迫られて入る介護が必要な人達の他に、余生を一人でのんびり過ごしたいと考える人、アリッサやガンダルガなどのような元冒険者など、実に様々な人々が入居している。


廊下の突き当たりの部屋の前につくと、ブランはひとまず深呼吸をした。


「まずは、今後魔法を使わない事を約束してもらう…それから、迷惑をかけた人達に一緒にあやまりに行く」


これから自分がやるべき事を口に出してみる。どちらもなかなかエネルギーのいる仕事だが、迷っている間に次のトラブルが起きてはたまらない。早速、ドアをノックしてみる。


「………あれ?」


中からの返答はない。


「アリッサさ〜ん!!」


大きい声で名前を呼んでみるも反応なし。生真面目なブランはそのノック→呼びかけというルーチンワークを三度ほど繰り返した。


「おかしいな…」


先輩介護士の話では、アリッサが10分程前に自室に入って行くのを見たという。ブランは思い切ってドアノブに手を伸ばし、回そうと試みた。


「!?」


しかし、ノブはガチャガチャという音さえたてず、まるでそこだけ時間が止まったように冷ややかにたたずんでいた。


「おや、どうしたの?」


その時、アリッサの部屋の隣のドアが開き、背の小さな老女が顔を出した。


「ごめんなさいドロシーさん、起こしてしまいましたか?」


ドロシーと呼ばれた女性は、部屋から出ると杖を頼りにちまちまとにブランに近づいてきた。彼女の目はすでに長い間見えていないのだ。


「うんにゃ、それよりアリッサに用なんかい?」


口元に笑みを浮かべながらドロシーが訪ねる。


「ええ、でもノックをしても返事がなくて…どこかに出かけちゃったんですかね?」


「うんにゃ、さっき部屋に入って行く足音が聞こえたよ」


「そうですか、やっぱり部屋に…」


「お客人も一緒だったみたいだねえ」


「お客人!?」


「ああ、おそらく女性。体重はあたしの三倍くらいだねえ」


相手の足音でその人物を判別するのはドロシーの特技だ。まず間違いないとみていいだろう。


「とすると、一体…」


ブランがつぶやきかけた時ー


「ギィヤァァァァァァァァァ!!!」


部屋の中から、断末魔のような声が響きわたった!!


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