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「石?」


アリッサが注意深く問い返す。


「あの石は、ある朝起きたら机の上にあったんだ。それに触ると、不思議なことに、僕の心の中にあった苦しみがすべて消えたんだ。僕は、その石を抱えて何日もすごした。赤ちゃんのようにうずくまって石のもたらしてくれるやすらぎにただ浸る。それはなんともいえぬ心地よさだったよ。そして、ある時気づいたんだ。いつの間にか僕が石を包んでるんじゃなくて、石が僕を包んでいることに」


うっとりとしていたグレンだが、再びその顔に怒りが浮かび上がる。


「だけど、父や村の奴らが、僕の大事な石を壊して中から僕をひきずり出そうと何回もやってきたんだ。だから僕は願ったんだ『みんな石になってしまえ、誰も僕に近寄らないでくれ』ってね。その日から、もう誰もここに来なくなった。だから、僕は安心してより深い眠りに落ちていったんだ」


そこまで話すと、グレンは、アリッサの方を向き直った。


「あんたたちは、あの世から僕の魂を迎えに来てくれたんだろ?さあ、早く連れてってよ」


ゆがんだ笑顔を向ける青年に対して、アリッサが一歩前へ出た。


「クソ野郎」


「へ?」


「あんたはどうしようもないクソ野郎だって言ったんだよ。残念だがあんたは天国へも地獄へも行けないよ。これからも現実で生き、罪をつぐなうんだ」


「現…実?」


青年の顔が信じられないといったように引きつっていく。


「ああそうさ、あんたはこれから村に下り、何ヶ月もかけて村人達の治療を手伝い、一人一人に土下座して謝って、その後、自分の罪をつぐなうために牢屋に入るんだよ」


「あやまる…この僕が??」


「ああそうだ、あんたが自分で招いた責任なんだ、一生かけてその責任をとるんだよ」


「責…任?」


「ああ」


アリッサが一歩前へ進むと、グレンは後ろへと飛びすさる。


「イヤだ!!」


グレンは頭を抱えて絶叫した。


「そんなのはイヤだ!!僕は悪くない!!僕は悪くないんだ!!」


「いいや、あんたが悪い」


「イヤだイヤだ!!助けて石さん!!もう一度僕を助けてくれぇぇぇ!!」


「うわっ!!」


グレンの叫びに呼応したかのように、先ほど砕いた岩の破片がグルグルどグレンの周りを飛び回りはじめ、そして一気にグレンめがけて吸いつきはじめた!!


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