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青年は、自らをグレンと名乗った。ここキリー村の村長の息子であるという。幼い頃から、村長に英才教育を受けた彼は、村では「神童」と呼ばれていたらしい。
「父さんだけじゃない、僕は村のみんなに愛され期待されていたんだ」
少し誇らしげな表情を浮かべ、グレンは話を続けた。成長した彼は、ヨルムにある大学に受かり、そこを首席で卒業したという。そして、父親のコネで、フィン評議会の議員秘書になった。
「だけど、あいつらは全然僕の能力を認めてくれなかったんだ。だから僕はそこを半年でやめてやった」
高慢な表情で語るグレンを見て、ブランは顔を曇らせた。この人は様々な能力を持ちながら、ただひとつ、人とコミュニケーションをする力を育てることができなかったんじゃないだろうか、と。
「しかたないさ、僕は村に戻って来た。父の仕事を手伝うためにね。だけど…村人達は僕の事をバカにした。僕にはわかる、表向きは笑顔で挨拶してきやがるくせに、陰ではみんな僕をあざ笑ってたんだ!!」
グレンは、徐々に興奮が高まってきたようだ。
「僕は仕事はおろか家から出ることができなくなった。父さんは僕を気づかって、村から離れたここに僕のためだけの小屋を作ってくれた。…だけど本当はわかってたんだ。父さん達も僕の事が邪魔だったんだって!!」
青年の顔が苦痛に醜くひきゆがむ。
「僕はここで一人すごした、たまに父の雇った召使いがくる以外は、何日も一人っきりでここにいたんだ。何日も何日も何日も何日も何日も何日も何日も!!」
そこまで言うと、彼はフゥとため息をつき、病的に満足気な表情を浮かべた。
「その時、僕はあの石と出会ったんだ」