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アリッサは、ナップに剣を抜かせると、それに向けて手をかざし、ブツブツと口を動かした。そして最後にその手で剣先から柄までをスーッとなでつける。
「うおぉ!!すっげ!!」
ナップが感嘆の声をあげる。今や彼の剣は、まばゆく金色の光を放っていた。
「これであんたの剣は、しばらくの間、呪的なものも切れる魔剣と同じになったよ」
ナップが剣を軽く振ると、ブゥゥンと鈍い音が鳴った。
「さあ、とっととあれを真っ二つにしちまっておくれ」
「まかしてください!!」
言うが早いか、ナップは結界を飛び出した!!剣を頭上に構え軽く跳躍し、岩に向けて上から剣を振り下ろす。剣はそのまま、何かやわらかいものでも切るようにあっという間に下まで行き、床に到達した。
「こっちへ戻るんだ!!」
アリッサの声と同時にナップが結界に転がり込む。今や岩にはナップがつけた傷を中心に、ピシピシと全体に亀裂が入り始めていた。
「よ〜し、よくやった」
と、言うが早いかアリッサが呪文を唱え岩に手をかざすと、そこから衝撃波のようなものが起こり岩にぶちあたった。ついに岩はボロボロと崩壊しはじめ、次々に岩肌がはがれ落ちていく。
それにつれて、岩のように思われていたものは、実は中が空洞で、例えるなら「石でできた巨大な卵」であった事がわかった。そしてー
「あ!!」
思わず三人は息をのんだ。その卵の中から「人間」が出てきたのだ。
「それ」は、どうみても人間の青年であった。膝を抱えてうずくまっているその男は、髪が肩までのび、無精ひげをはやし、虚ろな目をしていた。
「あんた、何者だい?」
アリッサの質問に、青年が顔を上げ口を開く。
「あなたは…天国の人?」
「そんなんじゃないねえ」
「じゃあ地獄の番人かな、まあいいや、僕の告白を聞いてください」
青年は、面倒くさそうゆっくりと立ち上ると、ボソボソと語り始めた。