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「ナップ!!」
ブランは、あわててナップに駆け寄る。
「よかった、無事だったんだ!!お茶飲んでないのに!!」
「お茶?」
「とにかくよかった!!石にならなかったんだな」
ナップは、顔こそ青ざめていたが、冷静さは失っていなかった。
「いや、ホントに正気を失うかと思ったよ。目の前で、仲間が次々と石になってくんだからさ。自分の馬が石になり始めた時は、俺自身もうだめだと思って目をつぶったんだけど、おそるおそる目を開いたら、俺だけ助かってたんだ」
ナップは、自分の緊張を吐き出すかのように一気に話し出した。
「それで、せめて敵の正体だけでも見定めてから、援軍を呼びに戻ろうと思って…そこの藪の中で待機してたら、お前とアリッサさんが来たってわけなんだ」
ナップの、その恐ろしい現場に残るというたくましい選択に、ブランは騎士の根性を見た気がした。
「そっか、それにしても何でナップだけ助かったんだろう」
「いや、それは俺にもよくわかんないんだよな」
「あんたが助かったのは、おそらくこれのおかげだろうね」
アリッサがブランの胸元を杖でさし示す。
「え?俺の心がけがよかったって事ですか?」
「アホか。あんたが首から下げてる護符のことだよ」
「護符って……ああ、これ?」
ナップは、首にかかっていた金属製のプレートを取り出した。表面には、文字とも文様ともつかないものが刻まれている。
「あんたがどこでそいつを手に入れたか知らないが、そりゃ強力な護符だよ。あんたを様々な呪的な力から防衛してくれるものなのさ。それがなきゃ、あんただって、村に入ってすぐに『ナップ像』になってたはずだよ」
「これが…そんな…」
ナップは複雑な表情でそれを見た。幼なじみのブランは、そのプレートの由来を知っていた。それは、捨て子だったナップが拾われた時、体をくるむ布の他に唯一身につけていたものだったのだ。
「さてと、無事からくりもわかったわけだし、このままガスの出所に向かうとするかね。あんたは、どうする?」
アリッサに聞かれ、ナップは自分もついていくと答えた。
「あの…」
先に進もうとする二人の背後で、ブランは進む事を躊躇していた。剣も魔法も使えない自分がついていく事が、二人の足をひっぱる事になるのではないかという思いが彼をとらえたのだ。しかしー
「何ぼやぼやしてんだいブラン!!こうなったからには、この村で一番安全なのはあたしのそばなんだからね、離れるんじゃないよ!!」
アリッサの、裏にやさしさを感じられる言葉そのものと彼を始めて名前で呼んでくれた喜びが、彼に勇気を与え、ブランは二人の後についていった。