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「まあ、お前たちも聞いた事あるかもしれないけど、魔女なんてやつは、本当の年齢を隠したがるもんなのさ」
いくぶん得意気にアリッサが説明する。他の誰でもない、同業者の言葉だけに妙に説得力があった。
「俺の同期で、あの魔女にベタ惚れのやつがいるんだけど…これ聞いたらヘコむだろうな」
ナップがボソリとつぶやく。
「おっと、この事を周りに言いふらしたり、ましてや本人に確かめたりするんじゃないよ。そんな事した日にゃあんたは八つ裂き確定だからね」
アリッサが真顔で警告をすると、ナップは首を縦に何度も振った。
「ところでナップ、何か話があってきたのかい?」
ブランが尋ねると、いつものいたずらっ子の表情に戻ったナップがふところから酒瓶を取り出した。
「いや、お前がここにいるって宿のおかみから聞いたからさ、騎士団の連中が寝静まったら酒盛りでもしようかと思って」
「いや、明日出発早いんだろ?無理しない方がー」
ナップと、そしてなにより自分の体調を気づかい止めようとしたブランだったが…
「気がきくじゃないか。ちょうど飲みたいなと思ってたとこなんだよ」
思わぬところから上がった賛同の声に、ブランは悲鳴をあげる。
「アリッサさん!!いい年して深夜に深酒なんて体に悪すぎますよ!!担当介護士として、そんなのを認めるわけにいきません!!」
「黙らっしゃい!!こわっぱがあたしの酒にケチつけるんじゃない!!」
ブランの数倍の迫力でアリッサが一喝したため、あっけなく勝敗が決まってしまった。結局、この鶴の一声により、ブランは明け方近くまで飲まされるはめになったのだった。