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ブラン達にとって不運な事にシルドナ村唯一の宿屋は、護民騎士団によって貸し切りとなっていた。親切な宿のおかみさんによると、村長の家や集会所など、主な大きな建物も、すべて騎士たちの宿泊用にあてがわれてしまったようだ。おかみさんは、アリッサが一緒なこともありひどく気の毒がってくれ、宿の物置小屋の一角を空け、格安の料金で泊まらせてくれる事になった。
「うわっ、ほこりがすごいな」
おかみが荷物をよけてくれた一角に敷き布を広げようとした所、激しくほこりが舞い上がった。
「今夜はベッドに寝られると思ったんだけどなあ」
「贅沢言うんじゃないよ。あたしが現役時代なんざ、何週間も野宿続きってこともザラだったさ」
敷き布に腰をおろしながらピシャリとアリッサが釘をさす。
「うわっ!!やっぱ冒険者って体力勝負なんですね」
「まあな、そもそもあたしが冒険者になったのはー」
薄暗い物置小屋の中、アリッサは、かつて自分がしてきた様々な冒険について、ブランに語り聞かせてくれた。初めて魔法を使った日…アクの強い仲間達…神秘の森で出会った妖精の一族…困難だった竜退治…途中、宿のおかみさんが持って来てくれた温かい夕食をつまみながら、語り部も、聞き手も、はるかな世界に心を羽ばたかせていた。
「さてと、そろそろ寝るとするかね」
すでに日付が変わろうとしていた。
「そうですね、これ以上の夜更かしは体によくないですし」
そうブランが言った時であった。
コンコンコン
何者かが小屋の扉をノックした。