Lv.1
ふと意識が浮上した。
・・・あれ、俺いつ寝たっけか?
思い出そうにも、記憶に霞がかって何も浮かんではこなかった。
そして、目に移り込む物に首を傾げ・・・ようとして、出来なかった。
はて?
視界に映るのは、俺より背の高い草と、空だけ。
視線を動かしても、草と空だけ。
え、俺寝転んでんの?
でも、身体は一向に動かせない、というより感覚がなかった。え、どうなってんの?
当たり前だけど、匂いも感じない。鼻機能してんのか?
ここはどこだ?
俺は一体どんな状態なんだ?
すると、俺の意識にステータス?のようなモノが認識される。
そこからこんなことが読み取れた。
―――
ずた袋(Lv.1)
スキル:惰眠
―――
うん、わかった。
俺人間じゃなかったわ。
袋生を楽しく謳歌・・・・・・なんて出来るかー!
なんだ袋って。
なんだずた袋って!
せめて綺麗な袋にしてくれよ!
しかもLv.1!2にあがったら綺麗になんのか?
んで惰眠って何。
スキルなんて項目で期待させといて惰眠とか。
色々出来ることを探した結果、惰眠を貪ることしか出来ないことがわかった。
マジなんも出来ない。
知的生命体に拾って貰わないとどうしようもない。
出来れば可愛い女の子に拾って頂けると嬉しい。
では寝よう。世界の皆様おやすみなさい。
あれから、どれくらい経ったのか、目が覚めると視界が上下に揺れている。どうやら何かに運ばれているようだ。
視線?を上に向けると少女と呼ぶに相応しい女の子が、俺をしっかり握りしめて歩いていた。薄汚れているものの、可愛らしい顔をしていた。
きっと俺の願いが届いたに違いない。
神様ありがとう!
草原を抜け、木々が疎らに生えている場所を通り過ぎ、一軒の家・・・家?小屋?に辿り着く。
そして、あろうことか俺は水の中に放り込まれた。ついで全身を揉まれる。
もうお嫁に行けない・・・(涙)
そして、思い切り絞られた。うん、体に穴が開くかと思った。もっと丁寧に扱って!お願い!(必死)
それが終わったら、紐にぶら下げられた。
おうふっ
女の子は、俺を見て満足そうな顔をして小屋に入って行った。
風に靡く俺。
お願いします。お家に入れてください・・・
当然入れてもらえることはなく、そのまま朝を迎えた。
袋に優しくない世界のようである。
さて、俺と女の子との日常なんぞ語っても楽しくはないだろう。
大体、草原やら林やらに赴いては食料を採取し、それを俺に入れてお家に帰るだけである。そして時々水浴び(不本意)をする。それだけである。
ねぇ、レベルいつあがるの?
どうやったらあがるの?誰か教えて!
いつまで俺はずた袋なんだーっ
そして、そんな楽しい(当社比)日常は唐突に終わりを迎えた。
なんと、夜明け前に突風で紐から吹き飛ばされたのだ。
俺はとうとう鳥になったんだ・・・!(現実逃避)
え、どうすんのこれ?
どうしようもないよね?
すまん、少女よ。強く生きてくれ!
空高く舞いながら(何でこんなに舞い上がってるのか不明だが)どこに落ちるのかだけが気がかりだった。
是非とも人里へ・・・!
神様、お願いしますよー!