第7話 圧倒的な強者
本日二話目!
はい、続きをどうぞ〜。
新しい魔法、『呪痕』を覚えたので試してもらうことに。
「この魔法は、様々な状態異常を付加させられるわ。5回しか使えないと聞いていますが、パーティの役に立てますわ」
「聞いている?」
「あ、言っていませんでしたね。私のエージェント家は『呪怨魔法』を使う家系なのです。母上も『呪怨魔法』を使って、昔は冒険者として名を上げておりましたの」
ふむ、母親が『呪怨魔法』を使って冒険者をしていたが、大変だったので娘にはその道を進ませてあげたくないとか?
冒険者になる為の試練を出したのは、カレルのためだったかもしれないが、カレル本人は冒険者をやりたいようだ。その気持ちがわかるから、無理難題な試練ではなくボブゴブリン討伐を指定した辺りから娘の気持ちを優先させているようにも見える。
「そうだったのか。状態異常か、『呪痕』はどんな状態異常を付加出来るのか?」
「毒、麻痺、石化、睡眠、魔封のどれかになりますね」
「魔封って、魔力を使えなくするとか?」
「そうですよ。魔法を使うメイジ系の魔物に当たれば良いですけど、ランダムだからね」
状態異常も常識なことだが、カレルは嫌な顔をしないで説明してくれる。おそらく、小さな島育ちだから知らないのは仕方がないかと思っているかもしれない。
「ランダムかぁ。あ、聞いておくが『呪痕』もレベルに差があったら効きにくかったりするか?」
「そうですね。『呪死』と同じですよ。回数は5回と多く使えますが」
強者相手には使えないようで、今までと同じようにゴブリンを倒してレベル上げをするのがいいだろう。そう考えていたがーーーー
「あれ、ゴブリンが見つからないな?」
「え、本当だ。さっきまでは5分もしない内に遭遇していましたのに」
森の中を歩き回って、探すがゴブリンの姿が見えない。それに、他の魔物や動物の姿が見えなかった。
「なんか、嫌な予感がするな……」
「ま、また、バクみたいな魔物が……?」
バクみたいな魔物が現れた時も、逃走中に他の魔物と出会わなかった。それに似ていたが、見つけた魔物は違っていた。哲也は見つけた瞬間に、木の後ろへ慌てて隠れていた。
「な、なんだ!? 高貴なオーラがあるぞ!?」
「あ、アレは……なんでここに!? に、逃げましょうよ!!」
向こうをゆったりと歩いている鹿の魔物。だが、その鹿は毛皮が白くて高貴なオーラが発されているように感じられた。立派な角があり、霜みたいのが見えた。それを見て、哲也は高貴なオーラだと思っていた物は、冷気だと理解した。
「に、逃げましょうよ!? アレは『氷麗の鹿』と呼ばれているフェゴバルトです! いつも向こうの奥にある山にいるのに、何故ここにいるかわかりませんが、私達じゃ相手になりません!!」
「確かに、俺もそう思うわ……」
哲也もあんなのと戦いたくはないので、逃げるのは賛成だ。それに、あの化け物がいることをギルドに伝えなければならない。好都合に、向こうはこっちに気付いてはいないようで、そろりとこの場から離れようとする。
ガサッ
と、近くの茂みから魔物が現れた。この前に出会ったバクみたいな魔物だった。
「なーー、こんな時にッ!!」
「あわわ、挟み撃ちだよぉぉぉ」
位置的には挟み撃ちになっている。しかも、バクみたいな魔物はやる気満々でこっちへ威嚇している。おそらく、この前と同じ魔物で逃げられたことに根を持っているかもしれない。この状況では危険かもしれないが、バクみたいな魔物と戦うしかない。逃げるには距離が近いし、能力が未知であるフェゴバルトとやるよりはマシだ。
「『呪痕』を!!」
「あわわ、う、裏切りのユダから与えられしのーーーー『呪痕』!」
見た目ではわからないが、バクみたいな魔物が苦し始めたことから、毒の状態異常になったのがわかる。
「オラァッ!!」
手加減もなしの一撃、裏庭でやったように上から分銅を落として、背中を陥没させるぐらいの気持ちでやった。だが、バクみたいな魔物はその攻撃を察知して、横へ跳んで避けた。だが、少しかすっていて切り傷が出来ていた。
「ブルゴァ!!」
「まだだッ!」
哲也は分銅を外されても慌てない。次の攻撃へ繋げる。鎖を細かく動かして、脚に鎖を巻きつけて引っ張った。バランスを崩して、横へ倒れたバクみたいな魔物にカレルは『呪死』を使っていた。
「ブルッ!? グルゥゥゥーー」
「効いているが、すぐに死なないか!?」
驚いたことに、『呪死』が発動されたのにまだ生にしがみついていた。おそらく、魔法に対する抵抗力が高いからこのようになっているかもしれない。死ぬまで待つ哲也ではなく、すぐ巻きついていた鎖を戻して、分銅を頭に向けて投げつけた。
死に必死で抵抗していたため、分銅を避けられずに受けていた。
「ブル! ブルグゥゥゥーー…………」
頭からダラダラと血を流して、力が抜けたように鳴き声が小さくなってーーーー死んだ。
「か、勝った……?」
「あぁ、すぐにこの場からーー『オミゴトダ』ッ!?」
哲也の言葉を遮って、頭に響くように別の場所から声が聞こえてきた。カレルも聞こえたようで、顔を青くしていた。
フェゴバルトがいる場所へ視線を寄越すと、眼が合った。距離は先程のと変わらないが、その声は良く通った。
「この声はまさか?」
『ソウダ、キコエテイルヨウダナ。モウイチドイウ。オミゴトダーー』
「話せたのか?」
『ハナストハ、チガウナ。アタマノナカニカタリカケテイルダケダ』
会話が出来ていることから、知能は高いようだ。更に闘志や殺気が感じられないことから、フェゴバルトには戦う気はないようだ。それがわかっただけでも、哲也は力を抜けた。
『オモシロイ、ブキヲツカウモノヨ、イヨウナショクギョウヲオモチダナ』
「ッ、ステータスも見れるのかよ」
『アァ、オモシロイモノヲミセテモラッタレイダ』
フェゴバルトの眼から微細な魔力を感じた時は既に遅かった。哲也の掌に小さな衝撃を何回も受けていた。
ピロリィ♪
「ッ!? いつの間に……」
『ジャアナ』
ヘェゴバルトはそう残すと、哲也達がいる反対側へ向かって走り去ったのだった。
圧倒的な強者と出会って、生きているのは運が良かった。カレルはフェゴバルトが去ってから腰を抜かして座り込んでいた。
「た、助かった…………、テツヤさんは大丈夫……?」
「あぁ、なんのつもりか、俺に1つのスキルを教えたんだか」
掌に衝撃を何回も受けて、カードから新たなスキルが登録されていた。そのスキルは『衝撃の魔眼』だった。スキルポイントは3で、6ポイントあれば使えるようになる。
「む、レベルが6になっているな。スキルポイントは……7ポイント? 何故、6も増えてんだ?」
さっきまでは1つずつしか増えてなかったのに、レベルが2つしか上がってないのに、6ポイントも増えるなんておかしい。
考えられるのは、格上であったバクみたいな魔物に勝ってボーナスが付いた。レベル5になったから、5ポイント貰えた。可能性が低いが、フェゴバルトが何かした。
それとも、別の要因かわからないが、とにかく『衝撃の魔眼』を覚えられるようだ。スキル欄から『衝撃の魔眼』を選択して、取得するとーーーー
「ん、なんか右眼が痒いな?」
「わぁっ! 黒から蒼くなっているわ!」
「蒼く? フェゴバルトみたいな眼になったってことか」
「うん! 綺麗だと思いますわ!」
鏡がないからわからないが、『衝撃の魔眼』を手に入れたせいで右眼が蒼く変わったようだ。
今回は唐突な出会いがあったが、結果的には生き残って新しいスキルを手に入れた。精神的に疲れた哲也達だったが、これでボブゴブリンを倒すための準備は出来たのだったーーーー
どうですか?
誤字を見つけたら教えて頂けるとありがたいです。