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何でも屋は女神に頼まれました  作者: 神代零
1章 始まりの街にて
4/24

第3話 募集

夜中の内に一話書けたので、特別に載せました!

どうぞ〜。

 


 街の中に入ったら、さっきまでの視線が消えた。何だったのかと思いつつ、カレルと一緒にギルドへ入る。


「クエスト品だ。これでいいよな?」

「はい。確かに受け取りました。カードを出してください。あ、カレル様も一緒でしたのね。クエストは終わりましたか?」

「う、うぅん。まだ……」


 クエストを達成した記録がカードに保存され、これで仕事は終わった。カレルもクエストを受けていたようだが、まだ達成していないようだ。


「やっぱり、あのクエストは初心者の冒険者が1人でやるなんて無理があるわよ?」

「うぅっ……」

「なんだ、クエストをクリアしてなかったのか? その内容を俺が聞いても大丈夫か?」


 カレルが眼を大きく見開いて、期待するように上目遣いで哲也を見上げる。


「もしかして、手伝ってくれるの? パーティは帰るまでと……」

「内容によるがな。仲間にしたことがある人が次の日に亡くなっていましたとなれば、夢見が悪くなるからな」

「ありがとう!!」

「お、おいこら!? 内容を聞いてからと言っただろ!」


 嬉しさで子供のように抱き着くカレルに哲也は口が悪いといえ、無理に引き剥がそうとしていなかった。

 その姿を微笑ましく見るメル。周りは殺気だっていたが、一部だけは哲也のことを変な人を見るような視線だった。

 そんなことを知らずに、哲也はカレルが受けたクエスト内容を聞き出す。


「ゴブリンより上の魔物、ボブゴブリンを1体なんだけど、ゴブリンが邪魔で……」

「あー、成る程…………2人でも無理じゃね?」

「そうだよねぇ……」


 5体のゴブリンに追われた記憶は新しい。メルの話によると、ボブゴブリンは常に5体以上のゴブリンを引き連れており、1体だけになることは少ないらしい。2人では勝てないのはわかりきっているのでーーーー


「パーティを募集しよう」


 哲也がそう言うと、カレルは表情を暗くしてズーンと周りが重くなったように感じられた。なんで、暗くなるのか理解してなくて、ハテナを浮かべる哲也。


「なんで、暗くなるんだよ?」

「だ、だって…、私がいるのよ?」

「なんだ、パーティ解消されたことを気にしているのか? まさか、全く集まらないとかないだろ。冒険者はこんなにいるんだぞ」


 募集するのは明日だし、明日になればカレルはそんなに嫌われてないと思い知るだろう。そう気楽に考えていた。明日になるまではーーーー










 昼間、日が高く上がっている頃。哲也達はメンバー募集のため、ギルドの中にある1つのテーブルで待っていたのだがーーーー




「な、なんで、昼まで待っても…………1人も来ないんだよ!?」


 結果は、募集したが1人も来ず、哲也が思い知ることになっただけだった。まさか、昼まで待っていても、誰1人も寄り付かないとは思わなかった。こっちを見る人はいても、目が合うとすぐに逸らされてしまう。


「アイツ! こっちを見た癖に、目が合うと逸らしやがった!! カレル、アイツに『呪死』を掛けてやれ!!」

「ちょっ!? 誤解を与えて、嫌な噂を増やさないで下さいますか!? 『呪怨魔法』は人間に効果発揮出来ないのですから!」

「…………はぁ、それはわかっているんだがなぁ。目が合ったのに逸らす奴は裸体になって、弾けて死ねばいいのに」

「なに、変態チックな死に方を望んでいるんですか……」


 カレルは疲れた様に、テーブルへダレて頼んだジュースをストローで飲んでいた時、1つのことを思い出した。


「そういえば、パーティ募集には何と書いたんですか?」

「見てなかったのか? ほらよ」


 パーティ募集の紙はクエストを依頼する掲示板とは違う場所にある掲示板に貼られている。哲也達以外も募集しており、求める人物のことを書いてある。その紙は夜の内に書いて、メルに貼ってもらうように申請しておいたから、その前に別れていたカレルはまだパーティ募集の内容を知らないでいた。

 同じ内容が書かれている紙をポケットから出して、カレルに渡してやった。


「ええと……」



 ================


 パーティ募集の件


 私達が望んでいるのは、前衛型で守備的な存在。男女は問わず、私達と仲良く出来るお方ですーーーーーーーー






 ここまではカレルもこの募集なら誰か来てもおかしくはないと思う。だが、最後の文にはーーーー



 ただし、お互いが命を預かり、預けられる方のみに限定します。


 ================



「なんで!? 募集に来ないのは、このせいではありませんの!?」

「は? 変な事は書いてないだろ。パーティを組みたいなら、お互いが信頼出来るような存在ではなければならない。ほら、間違ってないだろ?」

「間違ってはいませんが! これは極端過ぎませんのこと!? 一体、長年も一緒にいるつもりなんですか!? そもそも、今回はボブゴブリンを倒すためのパーティメンバー探しではありませんでした……?」

「質問が多い奴だな。短期といえ、信頼してない人と連携したいとは思わん。うっかり、危ない奴を仲間にして、背中から刺されたらどうするんだ?」

「それはネガティブな考えですわ…………あれ、私は?」


 カレルは気付いた。カレルは哲也からパーティ仲間であることを認めているのだ。哲也はやれやれと、疑問に答えるのだった。


「お前は信頼出来るからだ」

「え! そ、そんな……。えぇと、なんで……?」


 何でと言いつつも、カレルの顔は顔を赤くして嬉しそうだった。哲也はそれに笑顔で正直に答えたーーーー




「そりゃ、単純で馬鹿っぽいし。そんな人が企みとかはしなそうで、安心出来るんだよな」

「そこでけなすとは、予想出来ませんでしたよ!? 安心出来るとか褒められても、嬉しくはありませんわぁぁぁぁぁ!!」


 涙目でテーブルをバンバンと叩くカレル。その姿に哲也は怒らせたのか……? 褒めたつもりなんだが、何処の言葉が気に入らなかったんだ? と疑問を浮かべていた。

 さっきまで大声で話していたせいで、後ろからギルドの従業員が肩を叩いていた。


「すいませんが、少し声を落としてくれませんか? こちらは仕事中なので、迷惑です」

「「すいませんでした」」


 すぐ謝って、ギルドを出ていた。昼まで待っても、誰も来なかったから募集を止めにしても良かった。だが、募集を止めて出るタイミングがわからなかったので、この渡り船は助かったと思う。


「どうしますの……」


 カレルは違うようだ。なんか、クエストをどうしてもクリアしたいように見える。深入りするつもりはなかったが、必死さがあるので気になった。


「昼まで待ったが、誰も来なかった。なら、俺達だけでやるしかないな」

「厳しくありませんか?」


 確かに、厳しいがやりようにはある。ただ、時間はかかるが。


「その前に、聞きたいんだが。なんで、クリアに必死なんだ? 無理なら、クエストを解約して、身に合ったクエストを受ければいいじゃないか?」


 クエストを解約すると解約金が出てしまうが、命と比べたら安いもんだ。


「だ、駄目ですよ! このクエストをクリアしないと…………、冒険者になれないの」

「は? ギルドにそんな試練はあったか?」

「いえ、私の家で……」


 カレルは言いにくそうに口を潜める。それだけで、哲也はわかった。定番の奴だなーと思った。


「あー、詳しく言わなくてもいいぞ」

「い、いえ! 信頼していると言ってくれたし、仲間に誘ってくれたーーーー」

「あ、いや。言いたいことは大体わかったから言わなくてもいいって意味だからな」

「ーーーーえ?」


 哲也の推測では、カレルは何処かの貴族で冒険者になりたい。だが、親は冒険者にしたくはないので、条件を出した…………そんなところだろう。

 というか、『冒険者になれない』や『私の家』とカレルの金髪ロールを見れば推測なんて、誰にも出来るだろう。


「……始めはなんちゃって貴族だと思っていたが、まさかの本物の貴族だとな……」

「も、もしかして、エージェント男爵家を知っていましたの!?」

「たった今、自分から貴族だと口でバラしているじゃん。やっぱり、カレルは安心出来る奴で良かったよ」

「むむぅぅ!! テツヤさんは褒めているかもしれませんが、貶しているようにしか聞こえませんよ!?」


 カレルが貴族だったことに少し驚いたが、どうして冒険者として生きていきたいのか?

 会ったばかりでそこまで聞く程に、哲也は無神経ではない。


「まぁ、いいや。クエストの期限はあと5日は残っているよな?」

「昨日に受理したばかりですからね」

「なら、3日ぐらいはレベル上げをすっか。カレルの『呪怨魔法』が強化されたら良いんだがな」

「レベル上げですか……、私のレベルはまだ8で低いのですが、テツヤさんは?」

「確認してなかったな。えっと……」


 昨日、ゴブリンを殺したのだから、レベルは上がっている筈だ。カードを取り出して、確認したら『レベル2』になっていて、スキルポイントは1だけ増えていた。


「まだレベル2だな」

「えっ!? もしかして、魔物と戦ったのは昨日が初めてでしたの……?」

「そうだな。そういえば、殺しも初めてだったな」


 魔物といえ、ゴブリンは人型で殺したことに少しは罪悪感を感じると思ったが、昨日を思い出してみるが、全く感じてなかったことに気付く。


 あれ、俺って非情な男だっけ? いや、あの女神が何かした可能性が高いな……


 よく考えれば、女神が自分以外の人を平和な地球からこの世界へ召喚させているなら、魔物と戦えなくては意味がない。なら、女神が戦いや死に恐怖や嫌悪感を浮かばないようにした可能性がある。


 まぁ、そこはこっちに損はないし、気にしなくていいか。今はスキルポイントが増えたことを喜ぼう。スキル欄には1つしかないがな!?


「『百里眼』は……8!? まさか、16もないと取得出来ないとか、鬼畜すぎんだろ……」

「え、『百里眼』? 職業はハンターなんですの?」

「いや、俺は何でも屋と言う職業だ。ハンターか、それっぽいスキルだな」

「何でも屋……? 初めて聞きましたわ」


 一般的な職業はカレルも知っているが、哲也の何でも屋は初めて聞いたらしい。今のままでは、スキルを取得出来ないのでレベルを上げなければならない。


「立ち尽くしてないで、行くぞーー」






 哲也達は今、街からそんなに離れてない草原に着いた。街の近くにしたのは、いつでも逃げ切れるようにするためだ。お互いの脚とスタミナなら、街まで全力で走れるとの考えだ。

 逃げ足が速いとも言えるがなッ!


「そうだ、カレルはここで良く出てくる魔物はわかるか?」

「確か、はぐれになったウルフを良く見ると聞いていますわ。群れは森の中なので、草原には早々と現れることはないと思いますわ。他に、粘体魔物のよぷよぷがいますね」

「よぷよぷ? 可愛らしい名前だな……」


 哲也が思い付くのは、落ちてくるアレだ。アレなら楽勝に勝てそうな気がするんだがーーーー


「あ、よぷよぷですわ」


 カレルがよぷよぷと言う魔物を見つけ、指を指していた。そこに眼を向けてみると…………


 想像していたのと違って、丸くない。というか、身体が溶けていて頭から触覚が伸びている。口みたいな所から不揃いの牙が並んでいる。




「キモッ!? なんで、あれによぷよぷと可愛らしい名前が付いたんだッ!?」


 見た目はホラーに出ていそうな化け物だった。想像のアレと同義にしたくないぐらいに、キモかった。

 見た目は嫌だが、その動きはノロノロとしていて身体も膝に届かないぐらいの大きさだったので、勝てないとは思えなかった。


「おい、アレの身体に触ったら溶けるとかはないよな?」

「いえ、身体に付いているネバは無害です。ただ、口から吐き出される酸は火傷程度の傷を負いますので、気を付けてください」


 カレルの中であの魔物は、哲也がやることに決まっているようだ。レベルが低いことを知ったから、譲ってあげようと考えているのが見え見えだ。

 だが、レベルを上げたい哲也はその敵は貰うことにする。足音に気を付け、まだこっちに気付いてないよぷよぷへ近付いていく。ショートソードが届く距離まで行き、ショートソードを振り上げる。


「俺の経験値となれ」


 そのまま、中心にあった核ごと斬り伏せた。核が真っ二つになったよぷよぷは哲也に気付かないまま、身体を崩して溶けていった。




「あっさりだな……」




 魔物を倒したが、あっさり過ぎて気が抜ける思いだった。







次は21時に載せます!

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